アリアンロッド・リプレイ・レジェンド1

アリアンロッド・リプレイ・レジェンド1 貧乏姉妹の挑戦

著者・丹藤武敏先生。監修・菊池たけし先生&F.E.A.R.。挿絵・ヤトアキラ先生。安達洋介先生。いろは楓先生。ツジヤスノリ先生。
・登場人物
GMは著者にしてF.E.A.R社所属で普段はシナリオライターをしている丹藤武敏先生。
PC1はウォーリア/グラディエーターで防具は軽装ながらスキルで硬いと言う二律背反を両立させている元・お嬢様の天然アタッカー、フレア・コロローナ。扮するは富士見書房の編集者で「かりん」おたくの娘さん」などの漫画の編集をされていた妹尾絵美女史。女史の活躍は漫画「おたくの娘さん」の巻末オマケ漫画などで見られます。
PC2はアコライト/サモナーの後衛サポート兼魔法攻撃もできますよ、で、PC1ことフレアの双子の妹というセレネ・コロローナ。扮するは「DX2nd」のリプレイで薬王寺祐希をされていた藤井忍女史。ちなみにこのセレネ、クラスに関して誤植がありちょっと混乱しました。本文P32では「メイジ/サモナー」と自己紹介していますが、実際はイラストなどではアコライト/サモナーと表記され本文中で使用するスキルはプロテクションなどのアコライトスキルなので「アコライト/サモナー」が正しいかと思いますが。
PC3はメイジ/ニンジャで魔法攻撃担当ながらバッド・ステータスを与える効果などで戦線をかく乱するドル・ジャマダル。扮するはメカなキャラなどの色物系をやることが多いベテランゲーマーでもあるF.E.A.R.社代表取締役、「アリアンロッド・サガ・リプレイ」シリーズでは美形軍師ナヴァールも演じている鈴吹太郎社長。
PC4はシーフ/バードで、対象を再行動させるスキルや達成値を上げるスキルなどでパーティを援護するサポート系キャラクターのユーノス・ローリングスター。扮するは「かわたな」の相性でみなさま御存知、「首の後ろに押すと格好良いセリフを吐くボタンがある」などとも言われるほどPC1として歴代のリプレイなどで活躍してきた田中信二氏。
NPCとしては他のアリアンロッド・リプレイシリーズでも登場していた大神官のマティアスや、商人のサントス。敵役のギルド:ゴージャス・サンズやギルド:デッドマンズの面々。PCたちのスポンサーとなるディアス・ブラックスミスの鍛冶屋のリックとその父親など。
・シナリオ
クラン=ベルの町で名をなし、“風雲児”と呼ばれる英雄コロローナ。だが、多くの投資を受けた冒険が失敗、コロローナは行方不明となってしまった。100万Gもの借金を返済し、家屋敷&ペットのモンスターたちを守るべく、二人の娘が立ち上がる!父に戦いの手ほどきをうけていた彼女たちは、「できることはこれしか…」と果敢に闘技場に向かう!コロローナの親友であり、冒険仲間であったドワーフのドル、彼女たちを将来の英雄と見込んで、そのサーガを書くとうそぶくユーノスを加え、若き姉妹の冒険が今始まる。 (Amazon商品紹介ページより抜粋。)
・感想
この作品は現行シリーズ化されている「アリアンロッド・サガ」シリーズのアルディオン大陸を舞台にした物語とは違い、サガ・シリーズより以前の作品で舞台とされていたエリンディル大陸を舞台として、さらにその中の一都市であり過去のリプレイ・シリーズでも登場した『“水の都”クラン=ベル』の中だけで今のところ進められる、スケールとしてはサガ・シリーズよりもずっと小さな物語ですね。
大富豪であった父が事業に失敗し、一夜にしてお嬢様なセレブから借金だらけの身に落ちたコロローナ姉妹。彼女たちが父の借金を返し、家屋敷を取り戻すために闘技場で金を稼ぎまくる姿が描かれる、というのがこの作品です。
収録されているのは第1話「はじめてのコロシアム」第2話「はじめてのスポンサー」の計2話。どちらも名は体を現すの如く、タイトルが内容を示している話です。
第1話「はじめてのコロシアム」。こちらはPC1とPC2であるフレア・コロローナとセレネ・コロローナのコロローナ姉妹がセレブから没落し、商会に属していたPC3であるドルとたまさか知り合ったPC4であるユーノスに助けられながら、ギルド:コロローナ商会 を名乗り借金返済のためにコロシアムで闘うようになるまで、という話の流れです。このリプレイの基本設定ともいえる「目標の返済額が提示され、その返済のためにどうするか」という物語の流れが説明されるのと同時に、各キャラクターの紹介なども兼ねた話でした。
第2話「はじめてのスポンサー」。これは 普通に闘技場で闘う→勝って借金返済 だけではマンネリ化するだろう展開に対して、早くもテコ入れがなされる、といったところでしょうか。ただ闘技場で勝つだけでは返しきれない借金返済額が提示され、返済のためにどう金を稼ぐか、と言うことでPCたちが右往左往します。試合中に特定のアイテムの使用と宣伝を約束することで契約金を得たり、特殊ルールでのコロシアムでのバトルで獲得賞金を増額することにしたりと、「コロシアムの試合で勝利して借金返済」という単純なシナリオの大筋に、GMは用意した色々な彩りをつけていました。
エネミーもただコロシアムの登場するモンスター・タイプだけでなく、コロローナ商会と賞金を争うライバルギルドとしてパーティを組んだNPCが登場し、その個性溢れる姿で物語の盛り上げに一役買っていました。
総じてこの作品は、初心者向けリプレイの側面もあって戦闘における判定の方法や立ち回りなどの説明もかなり丁寧に記されていて、初めてアリアンロッドのリプレイを読む人向け、初心に立ち返っての基本スキルによるバトルなどが楽しみたい人向けかな、と思いました。それは逆に言えば、低レベルキャラクターによるそれなりのレベルのエネミーとの戦いが主になっているため、サガ・リプレイシリーズなどのいきなりハイ・レベルからスタートした場合の多彩なスキルによる派手な展開などのアリアンロッドを期待していると、せせこましい印象を読む人によっては受けてしまうかもしれません。その辺りは読む人の心の事前準備次第、というところでしょうか。なんにせよ、単純なシナリオ、単純なバトルなどの中にPCたちによる『ロール・プレイ』が面白い作品、という感想ですね。