で・こ・つ・ん☆

で・こ・つ・ん★ (GA文庫)

で・こ・つ・ん★ (GA文庫)

で・こ・つ・ん☆

著者・野島けんじ先生。挿絵・しゅがーピコラ先生。野島先生はMF文庫Jレーベルで「きゅーきゅーキュート!」シリーズを出されていますね。
・登場人物
主人公は、妹魂を持つ妹大好きな超シスコンだがそれを表にはあまり出さない、だが周りにはバレバレなアマチュア高校生ボクシングで優勝の経験を持つ心愛の兄で紅愛の弟、その妹魂と状況から心愛に内緒で心愛のパートナーだった神衣人・リップに扮して正体を隠して心愛と泉命女学園に編入することになる氷汐真心。ヒロインは『神触人』という女神を呼び出す異能の才能があり、その為の全寮制の学校「泉命女学園」に物語冒頭で編入することになる女神<カノン>を呼び出せる氷汐心愛。心愛と真心の姉で、『神触人』で女神<クレイモア>を呼び出せる才能があったため、心愛より一足先に命泉女学園に編入して現在は寮長をしながら次期生徒会長を目指している真心を溺愛している氷汐紅愛。
サブキャラクターとしては、紅愛のパートナーで真心、レディこと百道希。紅愛を敵視する寮のNo.2、須磨二美。真心と冒頭でボクシングの試合をするが完敗する、典型的な不良でかませ犬の柳澤。
・シナリオ
「て、転校するの、寂しいですぅ」
 ふにゃっと顔を歪めた心愛が、ぽろぽろと涙を流し始めた。
 神触人としての才能を認められ、全寮制の『泉命女学園』へ編入が許された真心の妹・心愛。
 泣き虫だが、「でこつん」すると最高の笑顔を見せてくれるかわいい妹を守るため、真心は神触人のパートナー・神衣人になりすまし、心愛に内緒で女学園へ潜入することにした……のだが!
「ごめんなさい。ここは神触人専用のお風呂だから。残念だと思うけど、コレを見て我慢してちょうだい」
 寮には真心を愛する姉の紅愛もいて、眩しい裸体をさらしてきたり!?
 野島けんじが贈る、女神召喚“でこつん”ラブコメディ!(HP:『GA Graphic』紹介ページより抜粋。)
・感想
この作品は女子校潜入系の異能バトルモノですね。
ぶっちゃけて言うと、異能力者である女子ばかりが通う学校の、妹のパートナーとして正体を隠して潜入する主人公がそこで一部の自分の正体を知っている存在とだけ本音を語りながら生活し、その中で起きた出来事が綴られていく―――そういう流れです。
特徴としては主人公、ヒロインともにシスコン、ブラコンだ、ということでしょうか。
心の向きとしては姉から見ると姉>妹>>弟という流れで、弟から見ると弟>姉>>>妹、妹から見ると妹>姉>>兄、という所でしょうか。兄弟姉妹とも仲が良いのですがその一部が過剰愛になっていて、さらに被っていないのが面白いところですね。
設定の『神触人』『神衣人』『女神』という存在は三身一体で、『神触人』が『女神』を召喚し、『女神』が『神衣人』に力を与え、『神衣人』が『神触人』を守る、というサイクルを形成しています。この巻ではこの流れに澱みがあり、『女神』→『神衣人』が滞り力を得られない、というのが重要なファクターとなっていましたね。そして同時に、それが解決された時のカタルシスの引き金にもなっていました。その問題解決までのプロセスは一部典型的なピンチの後にチャンス有り、或いはピンチの中で決意するというお約束展開でしたが、それまでの『精神的問題点が原因』という問題提起がスマートであったので無理無く、話が半ばでダレることなく読めましたので話の持っていきかたは流石、というものでした。
総じてこの作品は、異能力が物語の中心となるバトルもの+シスコンの潜入捜査によるコメディ+ちょっと歪んだブラコン姉とピュアな妹で構成されているバトル&エロコメディというものでとても少年漫画的な構成でした。それだけにハマれば結構な人気が出るのではないでしょうか。ただ、やはり異能力物はその設定や世界観の説明に割かれる紙面が少なくないので、そこを受け入れられるかどうかが今後の鍵になるのではないか、と思いました。