アリアンロッド・リプレイ・サガ・ブレイク１

アリアンロッド・サガ・リプレイ・ブレイク(1) ファントムレイダーズ (富士見ドラゴン・ブック)

アリアンロッド・リプレイ・サガ・ブレイク１　ファントムレイダーズ

著者・鈴吹太郎先生。挿絵・メインは四季童子先生。サブとして佐々木あかね先生。植田亮先生。安達洋介先生。いろは楓先生など。鈴吹先生は日本におけるＴＲＰＧゲームの大手で有名なＦ．Ｅ．Ａ．Ｒ．社の代表取締役―――つまり社長にしてやり手のゲーマーで、これまでにもいくつかのリプレイでプレイヤーとして登場されていましたね。意思のある車とか非人間系キャラでのプレイが多い方でした。四季童子先生はＦ．Ｅ．Ａ．Ｒ．社が出す雑誌『ゲーマーズ・フィールド』でよく表紙を描かれており、また有名な所では『フルメタル・パニック！』シリーズ（富士見ファンタジア文庫）の挿絵を描かれていますね。
・登場人物
主要面子は４人で、まずはエクスプローラー／ダンサーのヒューリンでギルドマスターでもあり、『ナイトウィザード』では緋室灯、アンゼロット役で有名な小暮英麻女史が扮するナーシア・アガルタ。『アリアンロッド』シリーズの生みの親、「尻で水道管を破壊する男」としても有名な菊池たけし先生が扮するはパラディン／ウォーリアのヒューリンで伝家の宝刀ならぬ伝家の宝槌、マンソン家の騎士を象徴するハンマーを振るう貴族の坊ちゃんという設定のアンソン・マンソン。『アリアンロッド・リプレイ・ハートフル』の著者でゲームデザイナーでもある久保田悠羅氏が扮するは、エルダナーンでガンスリンガー経験もあるソーサラー／サモナーで銃で味方を支援する、『ブレイク』シリーズの数年前の話という『アクロス』シリーズではＮＰＣとして登場し、今シリーズではＰＣとなったカテナ・アウレア。『神曲奏界ポリフォニカＲＰＧ』のゲームデザイナーである長田崇氏が扮するはネヴァーフのナイト／テイマーでパーティを大いに庇って庇って庇う、パーティの肉の壁にして記憶を失っているが『愛』のために戦う『愛の戦士』、ゼパ・フリンジコルト。この４人がギルド『ファントムレイダーズ』として活動します。
サブキャラクターにはグラスウェルズ王国の軍師オスウィン・ゴーダ伯。ナーシアたちと同じ幻竜騎士団の団員で変装の名人、クレセント。大陸最強の幻竜騎士団の団長、リシャール。ナーシアの弟のロッシュ。グラスウェルズ少年王のフィリップ。ルコーンの街娘のミネア。謎のジジイ、エリカなど。
敵役としてはファリストル城の守備隊隊員たちと、守備隊隊長のダンカン。キー・アイテムである赤の指輪を持つフレッド、青の指輪を持つブルースなど。
・シナリオ
戦乱渦巻くアルディオン大陸。東の雄、白竜王国グラスウェルズは、大陸全土に覇を唱えんと勢力を広げていた。だが、その覇道を阻む城砦があった。二〇〇年間その堅固さで侵攻を妨げ、不落の伝説を誇る鋼の城—。今、この城砦を陥落させようと、不可能作戦に挑む者たちの姿があった。—だが、その数、わずか四人！率いるは、ただひとり残された弟のため、陰の仕事に手を染めた少女、ナーシア。ＴＲＰＧ界の重鎮・鈴吹太郎が満を持して贈る、歴史の裏の真実を描く“クールでハードでシビアな”リプレイ。（７＆ＹＨＰより抜粋。）
・感想
アリアンロッド世界のある戦乱の時代を多角的に見て、数多くの視点で語る『アリアンロッド・サガ』シリーズの新シリーズで新しい視点での物語であり、他の作品と違い『影』となる部分に重点を置いて綴られる、他の作品の裏側―――歴史の裏の真実を暴くリプレイ・シリーズです。
内容としては、特殊部隊的なものに所属するＰＣたちが上司からの命令を受けてアルディオン大陸の随所に派遣され、その行く先で待つミッションをこなしていくうちに何か大きなものに関わっていく―――そんな流れのようですね。
収録作は第１話「国境の城砦」第２話「聖なる樹」の２話。
第１話「国境の城砦」では、ハイレベルからのスタートということでパーティの結成を足早にこなした後は早々に厳しい条件…たった４人のＰＣで『国境を守る堅固な城砦「ファリストル城」を落とせ』というミッション・インポッシブルのスタートとなります。オーソドックスな展開―――酒場などでの情報収集の後、攻略するべき国境の城砦―――ファリストル城―――に挑むという基本的な第１話の流れではありますが、高レベルスタートということでたいていの状況をカバーする能力がパーティに備わっており、裏表紙に書かれている「“クールでハードでシビアな”リプレイ」という演出に一役買っていました。そして第１話ながらも小さく纏まって終わらせたりせず、演出するＧＭやＰＣのノリもあって、最後は大掛かりな攻城戦的な姿になっていました。まさかドラクエ５な姿を国境の城砦が見せるとは…そんなミッションクリア方法に、度肝を抜かれましたね。
第２話「聖なる樹」は、ナーシアの生まれに関係して何かしらの伏線が張られながら再びミッション・インポッシブルに挑む、というものです。この話でのミッションはＰＣたち４人で敵国の象徴である巨大な聖樹を切り倒してくる、というもの。枯れかけているとはいえ、国家の象徴として王宮の奥で厳重に管理されている大樹を相手にＰＣたちは潜入作戦を開始するが、果たしてこのミッションはクリアできるのか？といった流れです。この話では潜入ミッションというイメージが第１話よりも色濃く出ていて、如何に敵に見つからずに王宮の奥深くに潜るか―――ダンジョン・アタックではそこに焦点が置かれていました。別シリーズである『ハートフル』でも使われた潜入しているＰＣたちがどれだけ敵に察知されているかどうかを示す『アラームポイント』システムが再度採用され、ＰＣたちの行動の如何によってアラームポイントが溜まるという緊張感あるシナリオでしたね。姿を変える『七影珠』というアイテムも出てきて変装しての演技というか騙しをＰＣたちがプレイングしたりと、バトル面以外で見所の多い話でした。
総じてこの話は、他のアリアンロッド・サガ・シリーズとは一線を画すというか。他の作品群が歴史の表舞台での出来事を記して後世に伝記のようなもので残ってもおかしくない活躍をする話が多いとしたら、この作品はそんな華々しい歴史の陰に隠れて進められた影の物語、という印象でした。ハイレベル・ＰＣたちによる潜入ミッションなどの人に大声では語れない物語。それだけに難易度は高く、過酷なミッションが繰り返される様子を、この作品では堪能できると思います。