カンピオーネ!2

カンピオーネ!〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-2)

カンピオーネ!〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-2)

カンピオーネ!? 魔王来臨

著者・丈月城先生。挿絵・シコルスキー先生。シコルスキー先生は電撃文庫で『十三番目のアリス』シリーズ、GA文庫で『パラレルまりなーず』などの挿絵を描かれていますね。
・登場人物
主人公の<神殺し>にして神を殺した事で『王<カンピオーネ>』として神の権能を行使できるようになったが、性格は普通の高校生の草薙護堂。秘密結社『赤銅黒十字』の魔術師で護堂の愛人を自称する、自信に溢れた大騎士、エリカ・ブランデッリ。霊視の術に長けた媛巫女で護堂と同じ学校に通う護堂の妹と知り合いの、真面目で道理から外れたことが嫌いな万理谷祐理。サブキャラクターはエリカ付きの世話人、アリアンナ・ハヤマ・アリアルディ。語堂の妹の草薙静花。正史編纂委員会のエージェント、甘粕冬馬。
この巻では敵役としては前巻で名前だけは出ていた、古参の『王<カンピオーネ>』のひとりで、複数の神の権能を行使できるサーシャ・デヤンスタール・ヴォバンが登場します。
また最初はヴォバンの従者として来日し、後は騎士道を重んじる性格から中立の立場として護堂に協力する、エリカと旧知の仲にしてライバルでもある『青銅黒十字』所属の、巫女の資質を持つ魔女にして騎士であるリリアナ・クラニチャールも登場します。
・シナリオ
神殺しVS神殺し
二人の王者は並び立たず。守るため、奪うため…神の権能が激突する!
神を殺し、権能を奪いカンピオーネとなった高校生・草薙護堂。その自称愛人エリカが護堂の高校に留学、護堂との「親密な仲」を公言したことで、媛巫女・祐理や妹・静花も巻き込んで、護堂の平穏な日常は完全に失われてしまった。同じ頃、東欧の魔王・ヴォバンが来日。その目的は祐理!? 神殺しが相撃つ熾烈な戦いの幕が、いま開く!! (スーパーダッシュ文庫OHP紹介文より抜粋。)
・感想
この巻はヒロインのひとり、万理谷祐理を中心に据えて物語が動く話ですね。そして敵は今回は『神』ではなく、護堂と同じ『王』であるサーシャ・デヤンスタール・ヴォバン。新旧の『王』同士の対決、ということになりますか。ヴォバンと護堂との祐理争奪戦、という様相です。
ストーリーとしては、突然来日したヴォバン。その目的はヴォバンも認める類稀なる霊視能力を持つ祐理。彼女を自分のものにする為、ヴォバンは問答無用で祐理を連れて行こうとするが、それを知った護堂がヴォバンの暴挙を阻止する為にその前に立つ。そんな護堂にもう一人のヒロインであるエリカが協力し、途中から騎士道故に護堂にリリアナが協力し、護堂、エリカ、リリアナの共同体制でヴォバンに立ち向かう。だがその力の差は3人が協力しても圧倒的に不利。最古の『王』と呼ばれ、その積み重ねた年月の分だけ複数の神を倒し数多くの権能を簒奪していて、状況に応じて変化する権能を使う護堂と比べても圧倒的な権能数を有するヴォバン。その彼に半ば遊ばれながら、護堂たちは死力を尽くして抗う―――そんな、圧倒的な力に翻弄されながらも死力を尽くして抵抗する護堂たち、というのがこの巻の話になりますね。
前巻が『エリカに関連して神と戦う話』なら、今巻は『祐理に関連して王と戦う話』で、色々と対照的になっていますね。第1巻がエリカに巻き込まれた話なら、この第2巻は祐理を救うために護堂が自分から関わっていく話。第1巻が神を相手に迎撃する話なら、第2巻は王を相手に迎撃する話。そんな感じで色々な場所が対照的になっています。
また、神に関するウンチクが激しく物語に関わってくる、という部分に関しては前巻と同じく重要な部分を占めています。今巻もひとつのキーワードから次々と相手の正体―――今巻ではヴォバンが倒して権能を得た相手―――に関して、物語が広がっていきます。この相手の正体を探る、というのがこの作品の面白いところですね。突然出てくる名称に面食らいながらも、話を追いかけていくうちに有名どころに繋がっていく―――表面的には知っていても、深い部分では知らないことを知っていける、という知識欲を満たせる―――というのが小気味良いです。
また日常シーンでも、護堂の両手に花の生活は「見ている分」には楽しいです。男女間の機微には少しハズれた祐理の発言や自信に溢れたエリカの言動、だんだんモテはじめた護堂を見て色々心配する護堂の妹、静花の行動は、バトルバトルとなる後半の前の、一服の清涼剤でした。
総じてこの巻は、ヒロインの1人、万理谷祐理の巻でした。狙われるのも彼女なら、護堂と絡んで物語の核となり展開の肝となるのも彼女。そしてヴォバンとの戦いで重要な位置を取るウルスラグナの権能『戦士』の扱う『黄金の剣』を生み出すきっかけや方法で関わるのも祐理と、ヒロインの立ち位置という意味ではまさに祐理オンステージ、でした。