デモンパラサイト・リプレイ 剣神5 

デモンパラサイト・リプレイ 剣神5 創世者

著者・力造先生。挿絵・今野隼史先生によるプレイヤーキャラクター(以下PC)たちが「悪魔寄生体」と呼ばれるモノに憑かれる事によって「悪魔憑き」と呼ばれる超常能力者となって遊ぶTRPGシステム、デモンパラサイトのリプレイシンシリーズですね。著者の力造先生はデモンパラサイトの別リプレイ「悪魔憑きの放課後」などの「悪魔憑きの〜」のシリーズもやっており、挿絵の今野隼史先生は「七人の武器屋」シリーズの挿絵などを描かれていましたね。
・登場人物
天然で面白い台詞を放つ主役級として扱われている明坂聡美 女史扮する、近接戦担当で第3巻までのストーリーでスサノオの力を継ぐ『剣神』となった御剣家の三男・御剣凪。きくたけリプレイなどで有名でバランス良いぶっ壊れPCをプレイすることでは右の出る者の無いベテランゲーマー・田中天 氏が扮する、射撃戦担当で竜に変化するようにロールプレイしたりした上に、『御剣忍法』まで編み出してしまった期待の長兄・御剣嵐。「新ソード・ワールドRPGリプレイNEXT」シリーズでGMを務める藤沢さなえ 女史扮する次女、第4巻で『勾玉神』となった天使の羽を持つ悪魔憑きでパーティの回復役兼ガード役のヒーラー&ガーディアンの御剣楓。「ローズトゥロード」「無限のファンタジア」というリプレイで活躍している河村有木生 氏扮する御剣家次男、サポート役で数多くのPCの危機を『磁力壁』などのサポートカバー能力で救い、第2巻では正義のヒーローとして愛するヒロインと戦うという最強に格好良いロールプレイを演じた、蟲の姿を持つ刑事で通称『有蟲刑事』の、御剣颪。この4人のPCでプレイされています。
他に登場するNPCは、御剣一家の長姉だが悪魔憑きではない御剣つむじ。御剣一家の末っ子、凪クンの幼馴染でやはり悪魔憑きの月島沙織。元・敵だったが今は御剣一家と共に戦う悪魔憑きで、かえでと良い仲っぽいがアフロな頭髪を嫌われている通称ポッキーこと山本流生。以前の巻で敵として戦い御剣一家の次男、御剣颪と悲しい別れを経た悪魔憑き、前口真耶。嵐の傭兵時代の同僚、エレナ・チェルネンコ。第4巻で登場した凪やかえでの幼馴染、珠生明日香。他、公安の人間など最終巻らしくこれまでの登場人物が色々と登場します。
そして敵として今回登場するのは、意外なあの人。まさかの人が最終ボスとして抜擢&登場。作中でも語られていますが、そのための伏線が第1巻から延々と張られていた、というのには驚きです…。
・シナリオ
嵐兄ちゃんによる小豆相場の失敗が原因で、超極貧生活に突入した御剣一家。そんな彼らの耳に、「三種の神器」の最後の一つ「八咫鏡」を狙う者がいるという情報が入る。調査を進める御剣一家の前に現れたその人物は、彼らにとってこれ以上ない強敵だった!?過去の人気キャラクターも総出演し、すべての謎が明かされる、伝奇アクションリプレイ・シリーズ最終章!悪魔憑き一家・御剣姉弟の、これが最後の大暴れ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
TRPGデモンパラサイト・『剣神』シリーズの、最終巻です。
第3巻までで『剣神』に纏わる話を進め、第4巻では番外編というか劇場版的なビッグ・スケールで『勾玉神』に関する話を進めたこの『剣神』シリーズ。日本神話をベースにして三大神器を絡めて物語を進めてきただけに、最終巻では『天群雲』、『八尺瓊勾玉』に続く最後の神器、『八咫鏡』を巡り前巻以上のビッグ・スケールにハイパワー・バトル、スキル・コンボの嵐が見られました。
この最終巻では敵がまさかのあの人であり、その人というのが誰なのかを言うと色々台無しなネタバレになってしまうのでこの場では語りませんが、しかしやはり意外さは拭えませんでした。まさかこの人が…!と、PCたちに混じって読者も絶句、です。しかしだからこその敵側の陣営には納得で、今になってまさかこの人たちが中ボスとして出てくるとは、と良い意味で意表を突かれましたね。
収録作品は第9話「剣の創世者」。そして最終話となる「剣神」。この2話です。
第9話「剣の創世者」では、これまでの登場人物たちと再会したりして情報収集を進める傍らで日常のシーンを演出し、最終バトル前の最後の日常風景をPCたちが堪能する―――そんな感じになっています。そして後半は『八咫鏡』に纏わる話に進んでいき、バトルではまさかの相手を敵にして第4巻同様、数々のスキルの応酬により、1ターンで全快状態から瀕死状態になるストイックかつ最初からクライマックスな戦いが繰り広げられます。前作同様にサプリメントである『デモンパラサイト異聞・鬼御魂』を用いており、日本神話をベースにしたこの作品らしい相手と戦っていました―――。
そしてついに最終話となる「剣神」。
三種の神器を巡る戦いもついに大詰め。数百万の敵を相手に、御剣家は古代の共生武装『八岐大蛇』『天磐船』を繰り、最終決戦の地へと向かいます。文字通りの最終決戦ということで、PCもGMも遠慮無く好き勝手な演出をしていましたね。特に『八岐大蛇』と『天磐船』のスパロボちっくな超絶ドッキングシーンの演出などは、GMもPCも「格好良い」演出が何かをわかっているな!と爆笑でした。中ボスとの対決もお約束の敵が相手であり燃える展開が続き、最終ボスまでそのままの流れでなだれ込むのはラストバトルらしい展開でした。
ラストバトルについては、第4巻で私が危惧していたダメージのインフレに関して、予想通りの方策―――特殊能力によるダメージの制限などがついていて若干「やっぱりこうなったか」的な印象もありましたが、全体的にはラストバトルに相応しい、高ダメージの応酬とスキルの乱舞、そしてギリギリの戦いになる絶妙なバランス調整がされた敵のパラメータなど、十分に楽しめる流れでしたね。
敢えて難点を上げるとするなら、オリジナル特殊能力が多用されていたのが目に付くでしょうか。それはそれで面白いですが、最終ボスが持つオリジナル特殊能力は数が多過ぎであったと思います。それから格好良さ優先の為か、チラホラと小説のように状況が描写されていたのも、これは読む人それぞれの好き嫌いかと思いますが目に付きましたね。せっかくのリプレイですから、そういった描写もPCによる掛け合いで表現してくれていれば―――そう思うところもありました。
総じてこの巻は最終巻ということで何処もかしこも過剰演出が目に付きましたが、そういった大風呂敷を広げながらもキッチリと纏めて見せていてGM・力造先生の底力が見られました。
最後の意外な敵を相手に戦う御剣一家の最後のバトル。「お約束な燃える展開」「スーパーロボットやスーパーヒーローが好きな大きなお友達」諸氏に、是非とも第1〜5巻を続けて読んで欲しいと思う。この『剣神』シリーズは、そういう作品でした。
何はともあれ御剣一家の戦いはこれにて終幕。GM・力造先生、お疲れ様でした!