鋼殻のレギオス8

鋼殻のレギオス8 ミキシング・ノート

著者・雨木シュウスケ先生。挿絵・深遊先生。
・登場人物
主人公は、かつて武芸が盛んな槍殻都市グレンダンで『天剣授受者』と呼ばれる12人の最上級の武芸者の1人にまでなったが、武芸者の誇りを汚す行為で都市を放逐されて学園都市ツェルニで1からの再スタートを志すレイフォン・アルセイフ。ヒロイン1、レイフォンに目をつけて自分の小隊にスカウトした、都市を守りたいという強い意志と信念を持つ普通の武芸者の女生徒、ニーナ・アントーク。ヒロイン2、ニーナの小隊に所属する天才的才能を持つ念威操者だがやる気の無い少女フェリ・ロス。ヒロイン3、入学式で起きた暴動でレイフォンに助けてもらい彼に思慕の念を抱くようになる新入生、引っ込み思案で気が弱いが料理が好きなメイシェン・トリンデン。
サブキャラクターは、フェリの実の兄でレイフォンたちが住む学園都市ツェルニの生徒会長、カリアン・ロス。メイシェンの幼馴染で記者志望の元気娘なミィフィ・ロッテン。メイシェン、ミィフィの2人と揃って3人で交通都市ヨルテムから来た、第17小隊メンバー入りした正義感の強い姉御肌のナルキ・ゲルニ。ニーナが小隊長を務める第17小隊の隊員で軽い性格の狙撃手、武芸者のシャーニッド・エリプトン。元・第10小隊でシャーニッドとの確執はまだあっても武芸者としての矜持などから第17小隊に参加したダルシェナ・シェ・マテルナ。ニーナの幼馴染で武芸者が使う<錬金鋼>のメンテナンスをするハーレイ・サットン。レイフォンの幼馴染、リーリン・マーフェス。リーリンの友人シノーラ・アレイスラ。レイフォンの武芸の師、デルク・サイハーデン。グレンダンの女王アルシェラ・アルモニス。サリンバン教導傭兵団出身でサイハーデン流刀技を使うハイア・サリンバン・ライア。女王を除けばグレンダン最強の12人である天剣授受者の1人、サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンス、リンテンス・サーヴォレイド・ハーデン。
この巻での新登場キャラはとある喫茶店の店長ジェイミスと、ニーナの住む寮での同居人セリナ・ビーンとレウ、そしてグレンダン三王家のひとつユートノール家のミンス・ユートノールくらいでしょうか。
・シナリオ
ついに『彼女』はやって来た。超鈍感王レイフォンの幼なじみにして、『本妻』と噂される、リーリン・マーフェス。二人きりで過ごすのは本当に久しぶりで、リーリンにとっては何よりも待ち望んでいたことのはずだった。だけど、レイフォンの口から語られる様々な『彼女』たちの存在に、リーリンは内心穏やかではなくて…?さらに、レイフォンが天剣授受者になったことから端を発する、『グレンダン女王暗殺計画』が今、語られる!ドラゴンマガジンに掲載された、レイフォンを巡る三つの『彼女』たちの物語に加え、大ボリューム書き下ろしによる衝撃の『レイフォン過去編』を収録。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第8巻は本編とちょっと離れた話―――短編集です。
収録作品は全部で4話。それらの話の前と後にプロローグやインタールード、エピローグなどが挿入されています。各話のタイトルはそれぞれ「クール・イン・ザ・カッフェ」「ダイアモンド・パッション」「イノセンス・ワンダー」「なにごともないその日」。それぞれタイトルで大体、何の話かわかる―――或いは読み終えてみるとタイトルの意味がわかる、そんな形式になっています。
「クール・イン・ザ・カッフェ」。これはタイトルも直訳でOKの単純明快な話。タイトルそのままのフェリ(クール)が、喫茶店(カッフェ)でアルバイトをする話です。番外編的短編集の作品という事で、普段の本編では見られないフェリの給仕姿が見られます。しかしキャラ壊しとかをしている、という訳ではなく空くまで本編の性格のフェリが給仕の姿をしてウェイトレスをしている―――そういうものです。そんな場所にレイフォンがやってきたりして、仕掛け人のシャーニッドに対して怒りを感じたりしながらもウェイトレスをしているフェリの姿が書かれています。勿論、起承転結―――物語としての動きはあり、何事も無いままウェイトレスをして終わる、という形にはなりませんが。
「ダイアモンド・パッション」。こちらもタイトルから連想されるあの人の話。そう、ダイアモンド(金剛)のパッション(情熱)、ということで金剛剄を使うニーナが主役の話です。ニーナがレイフォンから絶対防御の剄技―――金剛剄を教わった時の、本編では省かれたちょっとした騒動とその顛末を書いている作品ですね。無敵のレイフォンが錯乱したニーナに押されている姿が番外編らしく、緊張感の無い戦いとして楽しめました。
イノセンス・ワンダー」。これはメイシェンが主役の話。しかしタイトルからはちょっと連想しづらいですかね。イノセンス(純真な)・ワンダー(驚き)…で、良いんでしょうかね、意訳は?まぁさて置き、これはメイシェンが『天剣授受者』という言葉―――レイフォンに纏わる噂を耳にし、その意味を調べようとしてミィフィに勧められるまま、知っていそうな人たちに、小隊間試合のインタビューのどさくさにまぎれて色々聞き込んでいく、その時の各小隊での受け答えなどを連ねていった作品です。『天剣授受者』―――その言葉の意味を調べていく上で、メイシェンがその言葉の持つ意味、レイフォンに関わる重大事だと深く認識していく話ですね。
「なにごとのないその日」。これは過去の話で、レイフォンが天剣授受者に選ばれた直後くらいの話で要はグレンダンでの女王アルモニスを狙った謀叛騒動の話と、それらが浮き彫りにした天剣授受者たちも一枚岩ではなかった、ということが語られる話ですね。逆に言うとこの出来事で天剣授受者たちの問題点、不満点が明確にされ、グレンダンにおける天剣授受者たちと女王アルモニスの信頼関係が少し深まる話、でもありますか。現代編と違い少し過去の話ですので、以前の巻で見られたような天剣授受者たちによる超人戦闘が見られたり、過去の天剣を持った状態のレイフォンの活躍などが見られたりします。
総じてこの第8巻は、ヒロイン達にスポットを当てた短編集+過去のグレンダンでのちょっとした出来事が読める、完全番外編仕様の巻、ですね。