キャラふる♪

キャラふる♪ (ファミ通文庫)

キャラふる♪ (ファミ通文庫)

キャラふる♪

著者・葛西伸哉先生。挿絵・ゆきうさぎ先生。葛西先生は同レーベルからは「エシィール黄金記」シリーズ、「アニレオン!」シリーズ、「だめあね☆」シリーズの他、単発作品で「パメラパムラの不思議な一座」などを書かれています。他レーベルではMF文庫Jで「不思議使い」シリーズなどがありますね。
・登場人物
主人公には漫画家に憧れがあるが具体的には何もした事が無い、地方都市在住のオタク高校生、久里島聡史。その幼馴染でいとこの女の子で、スポーツ少女の矢代春香。ヒロイン1に聡史がかつて<創作>した美少女のタカムラ秀奈。ヒロイン2には天才美少女探偵を目指す真珠山光子。
他、サブキャラクターには喋る犬のフンボルト氏、悪の女幹部風のシルリィ、神豪寺あかね、あおい、きいろの「美少女電撃隊シグナルスリー」の面々、などが登場します。
・シナリオ
ひそかに漫画家に憧れる隠れオタクの高校生・聡史はある日、幼なじみの春香をかばって事故に遭い—なんと“キャラの故郷”なる異世界で目が覚めた!?“現実界”の作者とシンクロして作品へ降臨する—様々なキャラたちが暮らす世界。そこで聡史は、喋る犬・フンボルト氏、天才美少女探偵を目指す光子、そして自分がこっそり創作した美少女・秀奈と出会い、“記憶喪失キャラ”として暮らすことになるが…。キャラパワー満開ぱられるコメディ登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は、所謂古今東西の様々な作品の登場人物たちが「キャラクター」として確立するのは何故か?ということをファンタジーな解釈―――それはどこかの世界にそのキャラクターの”元”になる存在が居るからだ―――ということにして、そんな『作品の元ネタ世界』でまだまだ現実に甘えている主人公の聡史が色々な体験をする、という作品ですね。
しかしながらこの作品、パロディネタが多かったです。明確な名前は出ていませんがアニメから特撮、マイナーネタからメジャーネタ、古典から新作からとあちこちから引用を引っ張ってきたり引き合いに出したりと、全てのネタがわかる人は相当な年か相当なマニアかだな、と苦笑を出してしまいそうなほどでした。ちなみに私は8割くらいわかりましたが、どうにもわからないネタもあり、というところで。
この巻では主人公である聡史が作品の元ネタ世界、キャラクターの故郷―――キャラふる―――に初めてやってくることになる話と、その世界が聡史が来た事でちょっとした変化が起きるのを、ヒロイン2である光子とのコンビで話を進ませる事で見せています。ヒロイン1ではないのは今後の布石というか、続刊展開の為に置いておいたのでしょうか。
現実の世界へ行くため毎日色々な行動を取る『キャラ』たち。彼ら彼女らの有り様に自分が強い意思を持って行動を起こしていなかったことを聡史が感じる所などは、この作品らしく某アニメの主人公の言葉を借りるなら「自分から動かなければ何も変わらない、変わりはしない!」という事を感じさせてくれるシーンでもありましたね。
総じてこの作品は、パロディネタやらの多い色物系ですがその中身は意外と「漠然とした夢はあるけどそれを形に出来ない学生」などには重い話ではないでしょうか。基本はアクションというかラブコメというかの明るいのですが、随所に見られる聡史の内面での葛藤は結構重みのある話でしたね。