嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん4

嘘つきみーくんと壊れたま―ちゃん4 絆の支柱は欲望

著者・入間人間先生。挿絵・左先生による「第13回電撃小説大賞最終選考会で物議を醸した問題作」のシリーズ第4作目です。
・登場人物
今巻ではレギュラー登場人物は主人公である『みーくん』と、その友人でありアマチュア無線部部長である伏見柚々。それから冒頭のみヒロインである御園マユと、サブキャラクターの元・精神科医、坂下恋日。
この巻で登場のキャラクターについては、大江家父、大江耕造。母、大江景子。長兄、大江貴弘。長女、大江湯女。次女、大江茜。三女、大江桃花。使用人1、坂菜種。使用人2、坂潔。この大江一家でしょうか。
・シナリオ
三月三十一日。マユが破綻した。四月一日。僕は単身、かつて誘拐犯が住んでいた邸宅に足を運んでいた。つまり元我が家だ。今では、そこは『大江家』の所有物となっていた。元自宅で待ち受けていたのは、以前の姿を一片も感じさせない増改築。窓には鉄格子がはめ込まれた、歪な洋館的風貌。屋内では、家人による鳥肌な歓迎と忌まわしき過去との再会。僕はすべてを受け入れ、屋敷を探索する。求めるものは、マユがまーちゃんに戻るための何か。しかし事態は混迷を極め始める。切られた電話線、水没する携帯電話、大江一家と共に閉じ込められる僕ら…ら?そうだ伏見、なんでついてきたんだよ。クローズド・サークルって、全滅が華なんだぞ。…さて僕は。みーくんを取り戻し、まーちゃんを救うことができるのだろうか。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は上下巻構成の上巻で、所謂『事件編』ですね。人殺しが起き、それにみーくんと伏見が巻き込まれる形で関わると言う話です。そしてこの巻は『みーくん』の話であり、ほぼ全編に渡って重要な部分ではまーちゃんが関わってこないと言う、前3巻と比べてみると異色な作品になってますね。ヒロインの立ち位置にサブヒロインの伏見柚々がいてその立ち位置を埋めていますが、まーちゃんと違い完全な、破綻の無い常識人ですのでその会話の印章深さがやはり違います。そこがこの作品が『みーくんとま―ちゃんの話』であった前3巻と比べても別の、『みーくん』一人に焦点を絞った話―――そう感じますね。
ストーリーそのものは館物、とでもいうのでしょうか。所謂クローズド・サークルという閉鎖された館の中で人が殺され、生き残り逃走する為にみーくんや伏見を加えた大江家の一同が脱出法方を探る。その間にも殺人は起き、果たしてみーくんたちは生還できるのか―――そんな仕立てになっています。
見所としては、閉じ込められているという状況の中で個々の性格が顕著に出る行動や言動が面白く、また各自の発想からくる右往左往の様子を嘘を交えて比喩するみーくんの言動、といったところでしょうか。
そして前述した通り上巻の事件編ということで、この巻では物語が盛り上がったところで続き、決着は次巻に持ち越しです。その決着がどういう形で着くのか気になるところですね。