アリアンロッド・リプレイ・ ハートフル5

アリアンロッド・リプレイ・ハートフル5 約束のアンサンブル

著者・久保田悠羅先生&F.E.A.R.、監修・菊地たけし先生。挿絵・bomi先生、安達洋介先生、いろは楓先生。「ほんわか」「ちょっぴりハートフル」そんなイメージを持つべくプレイされているTRPGシステム『アリアンロッド』のリプレイ小説の、最終巻です。
・登場人物
小島めぐみ女史が扮する一人前の魔法使いを目指すメイジ/メイジからクラスチェンジでメイジ/セージとなって益々賢者っぽくなったファムリシア。菊地たけし先生が扮するモンクを廃業してシーフ/ウォーリアとなっているがやはり類稀なる悲惨なダイス目と『使われる』役どころが多く若干トホホなカッツ、大畑顕氏が扮するウォーリア/ガンスリンガーで必殺シーンスキル“ゲイ・ボルグ”を習得したり実は有名な古代竜の“銀の”ケセドが母親と言う色々特徴的な特徴を持つファムリシアと同級生という役のヴァリアス、小暮絵麻女史が扮するアコライト/ダンサーでさらに実はかつて覇王シャルリシアのパーティのひとりで友人でもあったということが発覚した、最上級生として他の3人を引っ張る役の多いカミュラという4PCがメインで、冒険者養成学院に通う彼らの周囲に居る人物…学院関係者や同級生上級生下級生なんかがサブキャラクター/NPCとして登場します。
最終巻であるこの巻では、前までの話で登場していたNPCがかなり色々と出ます。エルクレスト・カレッジの教師や学園長を初めその関係者など。敵も因縁のある相手から以前登場して中ボスとしてファムたちが戦った相手が再登場など、最終巻らしい大盤振る舞いです。
・シナリオ
“覇王の遺産”探索の旅も佳境に入ったそのとき、エルクレスト・カレッジが何者かに占拠されたという報がもたらされた! 思案の挙句パーティを2つに分け、探索と救援に向かう事にしたファムと仲間たち。新たな秘密が明かされ、シリーズ最強の敵が立ちふさがる!
人気キャラクター総登場、現在・過去・未来全てをつなぐ学園ファンタジー・リプレイ、ついに完結!(裏表紙より抜粋。)
・感想
第2期アリアンロッド・リプレイ・シリーズと言える『ルージュ』シリーズと双璧を為す『ハートフル』シリーズ、その最終巻です。
収録されているのは第9話『記憶と現実のモザイク』と第10話で最終話となる『奇蹟の中で紡ぐ夢』の2話。覇王の遺産を巡り旅に出ている間に占拠されたエルクレスト・カレッジを取り戻すために、ファムたち『ギルド:マジックフェザー』の面々が大活躍する―――大まかに言うとそんな展開ですね。その中で覇王の遺産絡みで登場する紅の鎧のスカディや魔族などが敵として登場します。
この巻ではパーティが2つに分かれて行動するダブルパーティの話と、占拠されたエルクレスト・カレッジを舞台にこれまで通り4人で1パーティとして敵の目を掻い潜りながら反撃作戦を進行させていく話の2つがありますね。
ダブルパーティの話では、ファムとヴァリアス、カッツとカミュラという2つのパーティに分かれて片方が起こしたダンジョンへの影響がもう片方のパーティにも影響を与えると言う、ザッピング形式でのダンジョン・アタックと言う珍しい形のプレイングが見られます。ザッピング式のダンジョンアタックも珍しいですが、パーティが二手に分かれての展開と言うのも冒険ですね。単純に各パーティとも戦力半減ですので全滅の危険がありますし、パーティを分けると、片方のパーティの話を進めている間、もう片方のパーティの面々は行動できないわけで盛り下がってしまいかねないなど色々な危険を含んでいるのですが、久保田GMはそれをザッピング式のダンジョンとダブルパーティを一気に両立させる事で、分けたパーティの行動がそれぞれ影響を与え合うダンジョンという、パーティが分けてありながらも同時にダンジョン・アタックできる舞台を用意するという方法で盛り下がりを払拭し、むしろ盛り上げています。アイデアの勝利というか、マイナス点とマイナス点を掛け合わせてプラスにするという、絶妙な工夫でこれはとてもお見事ですね。パーティが二手に分かれているのも戦闘バランスを絶妙に取っているおかげで、むしろ他のパーティメンバーの大事さを身に染みさせるという形になっていて、馴れ合いや戦闘時の腑抜け防止にも一役買っています。
そして4人で1パーティに戻ってからのエルクレスト・カレッジ反撃作戦では、敵の目を掻い潜りながら有利な状況を作ったり情報を集めたり仲間の安否を探ったりと、潜入作戦!的な展開が面白かったです。見回りのゴーレムから逃げ回ったり、姿を隠している学園関係者の居場所を彼らが残したヒントから推理したり、反撃作戦の為の下準備に魔族弱体化の結界を張り直しにいったりと、スニーキング・ミッションを数多くこなす『ギルド:マジックフェザー』の活躍が見られました。
そして最終決戦。敵が持つ“覇王の遺産”とファムたちが持つ“覇王の遺産”を互いに持ち合っての激闘。趙常的な力を持つ装備をした紅の鎧のスカディを相手に、ファムたちはかなりピンチに陥ったりします。しかしながらまさに全力を尽くす戦い―――数々のサポートスキルの活用、魔法スキルの発動、攻撃スキルの応酬、フェイトや覇王の遺産の使用など、双方全力を尽くす最終決戦に相応しい派手で激しい戦いでした。その結末は―――購入した人だけのお楽しみ、ということで。
第1期の『銀の輪の封印』から始まる無印シリーズの後を次いで始まった『ルージュ』に続いて開始された『ハートフル』シリーズもこれで終了し、第2期アリアンロッド・リプレイ・シリーズも終了とは何とも物悲しいですねぇ。しかし、既に第3期が発売決定しているそうです。あとがきに書かれていましたが、夏から開幕で3シリーズが予定されており、その内訳はきくたけリプレイ、久保田悠羅リプレイ、鈴吹太郎リプレイで、さらにクレバー矢野王子が手がける小説も出るとか。第3期でさらに広がるアリアンロッド・ワールドの今後が、さらに楽しみですね。