姫宮さんの中の人

姫宮さんの中の人 (MF文庫J)

姫宮さんの中の人 (MF文庫J)

姫宮さんの中の人

著者・月見草平先生。挿絵・Ein先生。月見先生は他著作に同レーベルから1回MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞を受賞した『魔法鍵師カルナ』シリーズや『桜乃きらほ』シリーズなどがあります。Ein先生はPCゲーム『ガジェットトライアル』キャラクターデザイン、HJ文庫の『超鋼女セーラ』シリーズの挿絵などロボ娘をよく描かれていますね。
・登場人物
ヒロインである姫宮ちとせの外出時姿である『外の人スーツ』着用状態の時の、生徒会長で全校生徒の憧れ姫宮ちとせ(外)。『外の人スーツ』を脱いでいる時の、見た目小学生という外見の姫宮ちとせ(中)。姫宮ちとせの秘密を知ったことから彼女と関わっていく巻き込まれ型の主人公、星野純人。純人の幼馴染で中学は別の学校で、高校からまた同じ学校で交友が再開された神楽結衣。ちとせの姉、『外の人スーツ』の設計者で過激に妹を心配する姫宮ちなつ。ちとせの愛犬、ジーグ。他、名前も無い研究員やクラスメートなどがチラホラ、といった所でしょうか。
・シナリオ
私立クレマチス高校に通う星野純は、最近ちょっとだれていた。運動はできないし、成績も鳴かず飛ばず。陸上部で輝かしい青春をおくっている幼馴染みの神楽結衣がなんだか眩しいくらいだ。これじゃあ、憧れの生徒会長、姫宮ちとせとお近づきになれる日なんて永遠にこない……ハズだった。そんな星野に一世一代のチャンス到来! 落し物をした姫宮を追って生徒会室を訪れた星野が、これを機に彼女と話せる、と思ったら! え、姫宮さん、今なんか、カラダ、フタ開きました?「『中の人』など、いない!」「……ってぇぇぇ!」――星野とワケあり美少女姫宮ちとせのコンプレックス・ラブ・コメディ、始まります! (7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品はヒロインの秘密を知ってしまった主人公が、ヒロインと秘密を共有しながら時にその秘密を守る為にバタバタと奔走し、時に秘密を巡ってヒロインの姉と対立したりと、ヒロインの秘密を知ったその時から少し普通でない学校生活を送っていく様子を書いている作品ですね。
作品としての基本は「ヒロインの秘密がバレないようにする」であり、作中では前半はその点を純人が奔走して守り、後半はその延長上ということでちとせの秘密を守りながらちとせの姉・ちなつを相手取って丁々発止―――とまではいきませんが、純人が普通の高校生らしくサイボーグを相手に必死になりながらも活躍します。
そして作品全体のテーマは、ヒロインが人外―――半ロボ娘であることからある意味推測できるでしょうか、『主人公が恋をしている相手はどちらか?』という点です。『外の人』である生徒会長で長身、標準的な体型の高校生である外見の気の強い姫宮ちとせ(外)か、『中の人』である、背の低い小学生の様な外見で気の小さくすぐ泣いてしまう姫宮ちとせ(中)なのか。そんな同一人物でも別人にしか見えないヒロインに、純人が悩む姿が印象的ですね。一応の結論は出しますが、個人的にはまだまだ思い悩む余地の多い命題です。
『外の人』姫宮ちとせと『中の人』姫宮ちとせとのギャップ、ちとせの秘密を守る為にドタバタと奔走する純人、そしてちなつの陰謀と、見れるところは多いですね。また、ちとせには『外の人スーツ』以外にも秘密があるようですがそれがこの巻では明かされず、そのままにして続刊への引きを残しておくなど、先を見越した作品構成になっていてそれらが最終的にどう生きてくるのか、そういった辺りも期待したりと色々と楽しめるところの多い作品でした。