ラブ☆ゆう5

ラブ★ゆう〈5〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ラブ★ゆう〈5〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ラブ☆ゆう5

著者・七月隆文先生。挿絵・みけおう先生による主人公の少年が異世界の少女を召喚して巻き起こるスラップスティック・ラブコメディ・シリーズ作品の第5段ですね。
・登場人物
平凡な高校生だが唯一の特徴として「空想ができない」少年だったがその為に空想を現実の物とする『空想召喚』ができた主人公の神田俊、作中ゲームであるRPG「ドラゴンブレス? エテルナの姫勇者」から俊が空想召喚で呼び出したヒロインの姫勇者ロザリー、他に前巻で敵側の空想召喚で登場し、敵を倒した事で消滅しかかったところを俊が再召喚で復活した、俊を「お兄ちゃん」と慕う「エターナルファンタジア?」のヒロインの召喚士・ナギサ、富豪の娘で何かと俊に突っかかるが実は俊のことが好きなツンデレ娘の冷泉院撫子、俊の従姉で隣に住み、何かと俊の面倒を見よううとする小鳩みこと、俊のクラスメイト件生徒会長で、世界のバランスを取る世界管理協会・巡検士という謎の一面も持つ白金碧空。
メインはこんなところで、今巻では俊と同じ『空想召喚』の力を持つ謎の集団『無窮の財産享受者』たちから『朧』と呼ばれる少女がスポットを浴びたりして話が進んでいきますね。
・シナリオ
自分がゲームのキャラクターだと知ったロザリーは、パニックになり俊の前から逃走してしまう。必死に探した俊がロザリーを見つけた場所は、2人が初めてデートした展望台だった…。今回は、シリーズ初の短編集。最近ちょっぴり影の薄いお姉ちゃんの逆襲とは!?文化祭の準備に悩む生徒会長・碧空のとった秘策とは!?大好評、スラップスティック・ラブコメディ第5弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻は基本的に大筋のストーリーは進まない、ロザリーたちがダイエットに挑戦したりサブヒロインであるみこと姉に焦点を絞ったり文化祭で白金碧空のある一面を瞬が知ったり『無窮の財産享受者』の一員、朧の過去が語られたりする短編集ですね。とは言え最初の一話だけ、
この巻は短編集―――というより、冒頭で前巻のラストに入っているべきなのでしょうが尺の都合か何で入らなかったのだろうな、と思える一話と登場キャラクターを使った一話限りのお祭り騒ぎが2話と、碧空、朧の2人のサブキャラクターの内面描写がちょっとシリアスに行われる話が2つとで、計5話で一冊と言う、同時に収録されている話ながらまったく別々の印象を受ける話が詰め込まれている感じがしました。
冒頭は自分の正体を知ったロザリーに対して俊が説得したりする前の続きで少し真面目なシリアスパートの話ですが、その後の2話は出番の無かったみことお姉ちゃんがここぞとばかりに活躍するお祭り騒ぎで、完全にギャグ・コメディパートです。そして最後はまた碧空と朧と言うキャラクターのシリアスな内面描写で、話が変わるごとに浮き沈みの激しい巻でしたね。
ギャグ・コメディパートではみことお姉ちゃんが俊の事を気にかけすぎるあまり暴走する展開と、ロザリーやナギサたちを巻き込んでの微妙にエロスな展開がテンポよく繰り広げられていきます。
シリアス・パートでは白金碧空が普通の女の子に見えても普通の子なら経験しているような事をしていなかったりする、やはりどこか歪な少女である事を俊が再確認したり、無窮の財産享受者たちの一員、『朧』の過去―――何故彼女が無窮の財産享受者たちと共にいるのかを書いていたりします。この朧の過去は、七月隆文ではなく今田隆文時代の先生の作風に近いものがありますね。
総じて今巻は、碧空や朧と言ったサブキャラクターの話をして魅力を掘り下げたり、出番の無かったみことお姉ちゃんがギャグパート限定とは言え大活躍したりと話を纏める為の前段階の、説明やキャラクターの立場確認の巻、大きな戦いの前段階―――嵐の前の巻、といった感じがしました。