いぬかみっ!3

いぬかみっ!

著者・有沢まみず先生。挿絵・若月神無先生。電撃hp紙上にて連載されて始まった作品で、スラップスティック・コメディと銘を打たれていますが個人的にはオゲレツ時々ハートフル・コメディ、と言う方が的確じゃないかなぁ、とか思ったりします。有沢先生は他作品として電撃文庫レーベルよりデビュー作「インフィニティ・ゼロ」シリーズ、2008年3月現在の最新作としては「ラッキーチャンス!」シリーズなどを書かれていますね。
・登場人物
主人公は『犬神使い』で霊能者…だったが、犬神使いとなる為の犬神と契約出来ず家を勘当されて今は1人で生活している、川平啓太。ヒロインは大のやきもち焼きで気まぐれで、「しゅくち」「じゃえん」といった特殊能力を使える、ようこ。
サブキャストとしては霊的な事件を請け負った際に啓太の所に手伝いを依頼に来たりする、内閣特別官房室直属特命霊的捜査官の、仮名史郎。啓太の祖母で川平家の当主である婆さん。宗家の婆さんの犬神である、はけ。それから渡り猫で理由あって仏像を収集している留吉。啓太と同じ犬神使いの川平薫とその犬神であるせんだん、なでしこ、ともはねなどですか。
この巻では変態が大量に出てきます。変態中心の話などもありますので、ドクトルや河原崎など変態の中心人物が多く出てきますね。
・シナリオ
啓太を突然襲った男の尊厳に関わる大ピンチ!ご主人様の未曽有の危機に、ようこは笑いながら、なでしこは嫌がりながら、ともに啓太を救うために頑張るが…。はたして、啓太の運命は!?その他、妖しげな寺からとってもおぞましい依頼を受ける話や、煩悩を具現化してしまう謎のトリの話など、全4編を収録。今回も受難続きの啓太に思わず合掌(?)。カラーコミック、4コマまんが、3ツ折りポスターと企画も盛りだくさん。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は3編におまけのショート・ストーリーを加えての全4編が収録されていますね。それぞれ「犬寺狂詩曲」「許されざる者たちの輪舞曲」「ふさふさ尻尾の小夜曲」「チョコレート追走曲」と銘打たれています。
「犬寺狂詩曲」はぶっちゃけて言ってしまうと変態的話の先駆け、です。シリアスあり笑いありのスラップスティック・ラブコメディの、これは完全にコメディ部分に相当する話。寺に合宿に来ていたスキンヘッドでマッチョなふんどし男たちに取り憑いた犬の霊を相手に、宥めすかして遊んであげて成仏してもらう―――そんな依頼を受け、やけくそになった啓太が絵的に厳しい状況で頑張る話です。最後にはちょっと良い話が入りますが、それまでの過程が厳し過ぎる変態道ですので内容と読後の感想も押して知るべし、です。
許されざる者たちの輪舞曲」もまた変態的話が中心。男性の生理機能を失った?啓太がその復活の為に色々と奔走する―――というものです。なでしこを呼び出してセクハラ手前のやり取りをしてみたり、3人の変態を相手に一応それぞれの指導を受けてみたりと、なんともはやかなりの迷走振りが伺えます。
「ふさふさ尻尾の小夜曲」では闘うオタク、ようこにご執心の河原崎直己が登場し、今後も随所で登場する事になる赤道斉の魔道具の1つ、相手を自在に着せ替えさせる木彫りのニワトリを巡って啓太たちを相手に騒動を起こします。ようこが魔女っ娘のような格好をするなど華やかな一方で、啓太がスクール水着猫耳などのお見苦しい姿になったりと、こちらも微妙に変態的な話です。
総じて今巻はどれも変態要素が強い話ばかりです。唯一、最後の「チョコレート追走曲」はバレンタイン前後にようこが愛情をいっぱいにつめたチョコレートを啓太に送り、ともはね、なでしこなども登場してバレンタイン・デーの雰囲気を堪能できる作品になっていて変態的要素とは真逆の甘い話になっていましたが、それ以外は全て変態が登場或いは変態的事件が発生し、啓太が酷い目に会っています。ですがシリアスありコメディありで繰り返されるいぬかみっ!ですから、たまにはこういうどちらかに偏った作品傾向も面白いは面白いですね。