アリアンロッド・リプレイ・ルージュ+1

アリアンロッド・リプレイ・ルージュ+1 ノエルと白馬の王子

著者はナイトウィザードシリーズなどでお馴染みの菊地たけし先生とF.E.A.R.。挿絵は佐々木あかね先生をメインに、安達洋介先生、林啓太先生らといったところで。
・登場人物
主人公としてメインを張るPC1にウォーリア/ダンサーの正統派天然ヒロインとなっているノエル=グリーンフィールド/力丸乃りこ、アコライト/ウォーリアの戦う神官戦士にクリス=ファーディナント/かわたな、第2巻でクラスチェンジしているけどいまだに武器は銃器のシーフ/レンジャーなクラスだけどガンマンなエイプリル=スプリングス/たのあきら、リタイアしたトラン=セプターから新キャラクターで再参加のメイジ/サモナーのレント=セプター/クレバー矢野。以上4名がPCです―――が、今巻ではPCとして出番があるのはノエルとレントになる前の話と言う事でトラン。この2人だけですね。代わってこのセッション限りのキャラということで、シーフ/ニンジャのフィルボルという暗殺者キャラクターのヴァルが登場します。
ノエルの話とは別に収録されているセッション「魔を貫くもの」の登場人物は入れ替わり立ち代りが激しい為割愛しますが、かなりの登場人物が出てきます。懐かしのあの人から新顔まで幅広く、です。プレイヤー名だけ列挙すると菊地たけし先生、クレバー矢野王子、久保田悠羅先生、藤村まどか女史、大畑顕氏、田中信二氏、リプレイ初登場の関幸雄氏などなど豪華です。
敵役はノエルの話ではゴンザレス=ゴールドマンという成金バカっぽいが実力と金はあるという敵役としてはおいしいキャラクター。「魔を貫くもの」では魔族が出てきますね。
・シナリオ
ラインの街の祭りの最中、トランとノエルはダイナストカバルの資金繰りのため、ヤキソバの出店を開いていた。店は大繁盛するも、一息ついた二人の前に謎の男・ゴンザレスが現れる。彼はノエルの両親の借金を盾に、結婚を迫ってきたのだ。もちろん彼女が持つ薔薇の武具も込みでの結婚だ。“結婚”“両親への融資”を賭け、両者は出店を使って勝負することになるが…。悲劇の直前の幸せなひと時を描いた短編リプレイが大幅加筆でここに復活。さらに久保田悠羅GMによる死亡上等なランダムダンジョンでの死闘を描いた『魔を貫くもの』も掲載。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は『アリアンロッド・リプレイ・ルージュ』シリーズとして銘を打たれていますが、実質は表題作であるルージュの番外編の話「ノエルと白馬の王子」を含み、またゲーマーズフィールド誌で連載された『ノエルと四つのコマ』を収録し、ランダムダンジョン作成システムを使ったプレイヤーキャラクター(以下PC)死亡上等!なガチンコダンジョン・アドベンチャーである「魔を貫くもの」も収録していると言う、TRPGシステム『アリアンロッド』で作成されたリプレイなどの作品でまだ文庫化などされていないもの、或いは単体では出しにくいものをルージュの名前の元に一纏めにして出したもの、と言った感じですね。
しかし作品そのものはどれもプレイヤーの錬度が高くて面白いです。
「ノエルと白馬の王子」は、プレイヤーが限定されておりクリス、エイプリルのファンとしては物足りないところもあるでしょうが、ノエル=力丸のりこさんの、限界一杯一杯っぽいけど一生懸命さが伝わってきて楽しげなプレイは変わらず堪能できますし、クレバー矢野王子の第3巻で死亡してしまうキャラクター、トラン=セプターの姿がもう一度見られるのも魅力でしょう。新キャラクターのヴァルは、その背景はシリアスでありながらも元々の味の濃いノエルやトランと対比していると、まるで真人間のようで逆に目立っていました。そしてそんな彼らの相手をするのはもはや笑いなくしては見られないゴンザレス=ゴールドマンとその配下たち。競技形式のジャッジ・対決の連続でその演出や勝敗もまた、笑いなくして見られない流石の展開炸裂でしたね。
「魔を貫くもの」では、PC死亡上等!という超緊張感がありながらも、運命を託すランダム要素次第ではあっさりパーティー全滅も有りというまさに玄人たちの為のシステムを取り扱った緊迫感のあるアリアンロッドのセッションが見られます。開始早々にとんでもない強敵や敵の大軍を相手にする事になったり、回復がなかなか出来なかったりと苦労の連続。さらにPC死亡上等!の通り様々な要因で次々倒れては入れ替わるパーティーメンバー。ある時は敵との戦いで、ある時は敵からの逃亡を助ける為に。その混沌具合と刻一刻と変わる状況は、一定の期間同じプレイヤーによる同じキャラクターが話を続けるキャンペーンセッションなどを見慣れていた私などにはかなりの衝撃でした。ラストまで生き残ったはまさかあのキャラだけとは…凄まじい激戦です。
最後は「ノエルと四つのコマ」と、恒例のアペンディクス。「ノエルと四つのコマ」では、4コマも本筋に沿った形で話が進んでいくのがわかり、また出番の無かった、或いは挿絵の無かったサブキャラクターも大きく取り上げられているコマがあったりで、スポットが当たっていなかったキャラクターを取り上げたりしていてキャラの補完的な意味でも楽しめましたね。
総じてこの作品はルージュ・シリーズではありますがあくまで番外編と言う事で、メインの4キャラ―――ノエル、クリス、エイプリル、トラン或いはレントの活躍を期待すると、その半分くらいしか満たされません。しかしそれ以外の部分―――「魔を貫くもの」や「ノエルと四つのコマ」などでアリアンロッドを十分楽しめますので、新しい形でのアリアンロッドの楽しみ方を見つけたりできるのではないかと思いますね。