超鋼女セーラ3

超鋼女セーラ3 センパイと僕の黄金週間 前編 (HJ文庫 て 1-1-3)

超鋼女セーラ3 センパイと僕の黄金週間 前編 (HJ文庫 て 1-1-3)

超鋼女セーラ3 センパイと僕の黄金週間「前編」

著者・寺田とものり先生。挿絵・Ein先生。知る人ぞ知る懐かしいTRPG『番長学園!!』世界の世界観を引き継いでいる、『現実と似ているけど異なる現代世界』を舞台にして送られる物語ですね。
・登場人物
メインキャラは、ヒロインで文武両道に優れ生徒会長を務めるが、題名通りのロボット=超鋼女であり、主人公の茸味の彼女となった来栖セーラ。主人公で機械も人も等しく愛せる稀有な資質を持つ、ヒロインの来栖セーラとお付き合いを始めたセーラの彼氏、人間の瀬戸茸味(せと たけみ)。茸味に暴漢に絡まれているところを助けられて以来、茸味の事を意識している茸味のクラスメートの御浜千美絵。セーラと同じ超鋼女で、別の学校に通うセーラの姉妹機、泉秋院ラヴィニア。貧乏教会の一人娘、千美絵の親友で超鋼女・ベッキーのマスターの春日井絢乃。春日井家=教会に居候しているセーラ、ラヴィニアと同じ超鋼女の姉妹機のベッキー。セーラに挑んだが打ち倒されて保護され、修理を受けているサァラ。
サブキャラクターには茸味の母親、瀬戸徳子。クラスメートの馬頭修、鹿山健介、セーラの養父、来栖ラルフ、ラルフと同業者の折神折枝、などが登場します。
そしてこの巻では新しい敵役で色々な思惑を持って動いているらしい超鋼女、『若草の四姉妹』のうちジョオとエイミー、マーガレットが新登場します。
・シナリオ
「茸味のはじめては、わたしがひとりじめしたいの」な〜んて感じで、人目もはばからずラヴオーラ全開中のセーラ先輩と瀬戸茸味。ロボ娘と平凡男子高校生という壁を乗り越え、絆を深めた二人が迎える初めての黄金週間。そんな中、超鋼機武闘会がいよいよ開幕し、のんびりデートなんかしてる場合じゃない!?シリーズ初!怒濤の前後編。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻と次巻は続きもの、上下巻構成になっていますね。
大型連休となる『黄金週間』と呼ばれる時期に入り同時に超鋼機武闘会が開始され、連休の中でセーラと茸味が皆と遊んだり、2人で過ごそうとしたり、初めてのケンカを経験したり、超鋼機武闘会での初戦を戦ったりと、あくまでセーラと茸味が中心ですが色々な出来事が起きるのを書いています。初戦、ドラゴネット・クェレプレと名付けられた超鋼機を相手に危なげなく戦うセーラというアクション性の高い場面などは、エンターテインメント的、というのでしょうか。戦いのシーンながら必要最小限の緊張感で、アトラクションを見ているような気持ちで読める所謂「軽い」バトルシーンとなっていて、純粋にセーラと茸味がどうやって勝つのか、というところに注目できました。
勿論2人の活躍だけでなく、ラヴィニアの初戦の様子が書かれたり、サァラがよくわかっていないが故の爆弾発言や大胆行動を取ったり、千美絵がイメチェンして茸味に対してちょっとモーションをかけたりなど、メインだけでなくサブキャラクターたちにも多くの見せ所のある巻でした。特にサァラは前巻まで敵として登場していましたから、味方陣営として超鋼女4姉妹がそろった今は特にその挙動に注目しますね。
しかしそういった日常風景、或いはセーラや茸味、千美絵を交えたらぶらぶした話とはうって変わったシリアス展開も多く語られている巻でもありました。新しい敵、超鋼女『若草の四姉妹<マーチ・シスターズ>』の登場とその三女、ジョオと茸味との遭遇など、見逃せない展開も多くありました。
そういった漫画的な読み物としての一面がある一方で、「人とロボットの恋愛は可能か?」というような哲学の様な重いテーマを今回も扱っていて、そのことで真面目に語るラルフが書かれていたりして、作品全体は明るいイメージがある反面この暗く重いテーマがまるでしこりのように忘れず書き出されていて、最終的に著者先生である寺田先生はそこをどう結論付けるのか、結論に至るまでの葛藤なども含めて興味が惹かれますね。