パーフェクト・ブラッド1

パーフェクト・ブラッド1 彼女が持ってるボクの心臓

著者・赤井紅介先生。挿絵・椋本夏夜先生。赤井紅介先生は同社レーベルから「ゼロ・イクステンド」という作品を出されていて、椋本夏夜先生は電撃文庫レーベルで「レジンミャストミルク」シリーズの挿絵などを描かれていましたね。
・登場人物
主人公で、瀕死の重傷を負いヒロインの透香と命を繋げて一命を取り留めることになる裕樹。ヒロインで”魔法士”と呼ばれる存在で、一見お嬢様だが実はメイドという2つの顔を使い分ける女、透華。天才少女で10歳の現在既に天宮財閥を掌握して自身で運営しているお嬢様、雪子。裕樹のクラスの臨時担任で中学生以下にしか見えない身体の持ち主、菫。賞金稼ぎ集団”アミュレット”のメンバーで、雪子にご執心の大男、石丸。高位の”魔法士”で犯罪結社の幹部でもあるリエル。
・シナリオ
高校生の裕樹は、銀行強盗に巻き込まれ、見知らぬ少女をかばい致命傷を負ってしまう。裕樹は保安組織の女魔法士・透華の力で命を救われるが、生命維持の魔法により、彼と透華はずっと一緒にいるハメに!お風呂もベッドも彼女と一緒!?助けた少女・天宮財閥の雪子をめぐって世界的犯罪結社と対立する中で、裕樹自身の抱える秘密も明らかに…。魔法で繋がれた二人の恋と激闘。(7&YHPより抜粋。)
・感想
所謂典型的な、主人公巻き込まれ型で話が始まる作品です。”魔法”が”魔導書”という形で存在し、それを使う”魔法士”たちがいる世界。そういったファンタジーな現代世界で、理由があって”魔法”も”魔法士”も嫌いな少年、裕樹を主人公にして話が進められていきます。彼がたまたま銀行強盗に巻き込まれた時、そこにやってきた雪子を庇って瀕死の重傷を負う―――そういった、咄嗟に主人公が取る英雄的行動が物語の始まりとなるのは一種王道パターン化しているとも言えますが、それだけに導入として納得できる今後の行動の規範となり、後の魔法嫌いの主人公が魔法に関わっていく行動に説得力を持たせられていますね。
この作品、展開や設定もさることながらやはり会話のテンポが良いですね。裕樹、透華、雪子の3人の会話はおどける裕樹、それにツッコむ透華、2人の姿に慌てる雪子、と役割分担がハッキリしていて何気ない普通の会話も面白くなっているのが見事です。
後半では雪子に仕えるメイドの立場ながら傭兵集団アミュレットのメンバーでもある透華と、一時的に透華と離れられない身体になった裕樹が、攫われた雪子を救うために敵組織のアジトに潜入し中でアミュレットの仲間や他の第三者も加えてドンパチするなど、全体的なイメージとしては能力バトルもの+スパイアクション、みたいな印象です。しかしスパイアクションのような印象、と言ってもそこはやはり学生向けライトノベル。最終的には能力者同士で対決したり、主人公に見せ場がやってきたりで派手に進んでいきますね。
また、挿絵と作風がマッチしているのでしょうか。随所で描かれている椋本先生の挿絵は華やかにして美麗で、私個人的にも好きな絵柄で、作品の盛り上げに大きく貢献していると思えましたね。