BITTER×SWEET BLOOD

BITTER×SWEET BLOOD (電撃文庫)

BITTER×SWEET BLOOD (電撃文庫)

BITTER×SWEET BLOOD

著者・周防ツカサ先生。挿絵・Chiyoko先生による学園ゴシックテイストの吸血鬼と人間の話ですね。
・登場人物
主人公で、ハルに妙に気に入られた森坂玲子。吸血鬼、唯我独尊気味な性格の高圧的な態度の片倉ハル。吸血鬼の存在を知る人間で玲子の友人、木本奈津美。吸血鬼の事などは知らないが玲子、奈津美と友人の柊香澄。ハルとよくつるむ同級生の小桜真琴。木本奈津美同様に吸血鬼の存在を知る人間、青木直人。ハルの上位存在の吸血鬼、とでも言うべき吸血鬼のアニス・ラドクリフ。元人間で今は吸血鬼だが、一部、人間から吸血鬼化する際に上手く行かず精神的な部分がおかしくなってしまっている吸血鬼、サウラ。
この巻ではさらに森坂玲子の姉、森坂美幸が事件に巻き込まれる―――吸血鬼などの存在と関わる立場として登場します。
・シナリオ
私は、闇夜で首筋を噛まれた。プツッという音が響き、朱い玉が肌を伝った。それが、彼との関係の始まり。彼は、私の心を激しくかき乱す。彼に会うたびに、言葉を交わすたびに、見つめられるたびに、ドキドキとゾクゾクがやってくる。彼の身体の一部に触れただけで立っていられないのだ。…そう、彼は、私にとって『特別』な存在。―私の血を吸った“ひと”。『闇の眷属』たちが現代を舞台に妖しく踊る…。血の契約を結んだ少年と少女の現代ヴァンパイア・ストーリー。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は学園ゴシックというだけあって、ミステリアスな雰囲気と言動が目立つ作品でした。全てを語らず思わせぶりな態度をする―――そんなハルの言動と、それを受けて玲子が慌てながらゆっくり近寄っていく、というような秘密を持つ男とそれに惹かれる女の姿というミステリアスさと純な少女の姿とがあり、それらが玲子の純粋さを浮き彫りにして魅力を押し出していて、良かったです。
また、ハルやアニスたち吸血鬼によるヨーロッパの貴族の様なシーン―――当然のように人を使う、シャワーシーンにおいてハルに対するアニスの歪んだ愛情が吐露されたり、など―――があったりと、全体的に栄華に溢れながらもどこか退廃的な印象を覚えるシーンが多いですね。吸血鬼であるハルによる玲子への吸血シーンなども、自身が消失するような快美観に玲子が半ば溺れているような描写があったり、吸血を行うハルも我を忘れて玲子に縋りつくような姿が書かれていたりとで、どこか官能的でした。
そんな歪んだ退廃的世界観と見せて、話の中で起きる事件では電撃文庫らしいというか、普通の超常者たちによる能力バトル的なものでした。事件の起きる原因となるものも一般的に世界に溢れていることが原因であり、吸血鬼たちによるゴシックな雰囲気漂う世界が、一転して生臭いありふれた日常に引き戻されるような感じでしたね。しかしながら、事件そのものは最終的にハルが圧倒的な力を発揮して全て強引に治める、となっていて一気に日常に引き戻されながらも締めはまた不可思議なる存在による干渉、という印象でそのギャップ/対比が読んでいて飽きませんでしたね。