緋色のルシフェラーゼ1

緋色のルシフェラーゼ〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

緋色のルシフェラーゼ〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

緋色のルシフェラーゼ1

著者・伊藤イツキ先生。挿絵・KeG先生による、恋する女子高校生が”悪魔”の生まれ変わりである自分に覚醒し、他の悪魔との戦いを繰り広げたり幼馴染の年下の子とツンツンデレデレしたりしている姿が書かれる、恋する女の子を主役に据えたデモニア・アクション作品です。
・登場人物
主人公でヒロインにして、聖書にある”七つの大罪”のひとつ、”愛欲”を司る魔王アズモデウスの転生体であるがその実は恋に戸惑う普通の(ちょっと突飛な行動が時々目に付く?)女子高校生の来栖いずも。ヒロインいずもが恋する相手であり3つ年下の幼馴染、何故か秘宝『ソロモンの指輪』を持ち天使からも魔王からも狙われる柱郭紺太。大天使ガブリエルであり今巻の出来事の仕掛け人である御園井シンイチ。聖書にある”七つの大罪”のひとつ、”高慢”を司る魔王ルキフェルの転生体であるがガブリエルに敗北し、今はガブリエルの部下として動いている寺山アンゼリカ。いずもが魔王として覚醒するより先に覚醒して紺太の家で家事手伝いをしていた女性で、しかし今はいずもに攻撃を仕掛けて返り討ちにあい戦闘能力を著しく衰えさせている、聖書にある”七つの大罪”のひとつ、”大食”を司る魔王ベルゼビュートの転生体である氏家繭子。いずものクラスメートで金井兼子。元悪魔で作中で赦免天使となるエウリノーム。
・シナリオ
来栖いずもは高校二年生。成績も運動もまあ普通。見た目も地味目な女の子だ。なんだけど久しぶりに見かけた年下の幼なじみ・柱郭紺太が、ものすっっご〜い美少年に成長していて…。いずもの昔の恋心が甦る!!そしていずもは、紺太と再会してある不思議な夢を見る。自分が“愛欲”の魔王・アズモデウスだというのだ!悪魔の力を取り戻せるという“ソロモンの指輪”を、なぜか紺太が手に入れてたり、いつのまにか“ソロモンの指輪”と紺太を巡る争奪戦に巻き込まれてたり。いずもの周囲は大変な感じで…。もう胸がもきもききゅーっとするっ!恋に闘いに乙女の悩みは尽きない、デモニア・アクション新登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
これは新しい切り口の魔王の解釈の作品ですね。
魔王が女の子、ということはそれなりにありますがそれが聖書などで知られる名のある『魔王そのもの』、というのは珍しいかな、と。言うなれば魔王の擬人化―――萌え化?作品、でしょうか。
話自体は基本的な出来事とかが起こった後から―――いずもが魔王として覚醒したりする場面や、それを受け入れたりする葛藤的行為、何故他の魔王と戦わないといけないのかや、他の魔王であるベルゼビュートの繭子との戦いなどを経た後からこの巻は始まっています。つまり導入部分をすっ飛ばしていずもが魔王としての力をそれなりに扱えるようになり、レベルで言うなら中級の戦いができるようになっているところからの話です。
この作品は基本的に主人公とされているヒロイン、来栖いずもの視点で話が進んでいきます。
いずもよりも年下の幼馴染の男の子―――柱郭紺太はぶっきらぼうで口が悪く、いずものことも馬鹿呼ばわりする。だが紺太はいずもが大好きな相手で、恋する女の子であるいずもはいつも紺太の態度の悪さに腹立たしく思う反面、紺太に対する自分の恋心に板挟みになっていろいろ悩んでしまう。そんな彼女が紺太の言動にヤキモキしながら慌てたり自分の恋心の有り方に戸惑ったりする姿が、初々しくも可愛らしかったですね。
そんな普通の少女の内面が描かれるシーンとは裏腹に、いずもが魔王アズモデウスとして他の魔王を相手に戦わなければならなくなった時は、激しいバトルシーンがそのギャップを楽しませてくれました。”随一の剣士”と呼ばれるアズモデウスはその卓越した剣技と強力な焔の剣を用いて、今巻ではあらゆるものに『主』の御名の元に命令を下せる魔王ルキフェルと彼女が操る赦免天使たちを相手に丁々発止を見せます。かと思えば、ただの悪魔VS天使ではなく、心の弱い所を上手く擽られ、天使に肩入れすることを選んでしまったいずものクラスメートのカネコとの本音のぶつけ合いなど、女子高生心理を書いていたりとそういった点でも色々魅せる仕掛けが多かったですね。
総じるとこの作品は、『萌え魔王の恋の大決戦』とでも言う感じです。しかし萌えには燃えもあり、どちらの意味でも楽しめる作品かな、と思いましたね。