撲殺天使ドクロちゃん10

撲殺天使ドクロちゃん〈10〉 (電撃文庫)

撲殺天使ドクロちゃん〈10〉 (電撃文庫)

撲殺天使ドクロちゃん10

著者・おかゆまさき先生。挿絵・とりしも先生による撲殺ギャグ☆小説ってところでしょうか。おかゆまさき先生は月刊コミック電撃大王で2008/2月現在連載中の『森口織人の帝王学』というコミックの原作をされていますね。
・登場人物
主人公の草壁桜くん。三塚井ドクロこと天使のドクロちゃんドクロちゃんの妹のザクロちゃん。バベル議長。議長の娘のサバトちゃん。今巻の新キャラ、箸の魔法アイテムを持つ天使ゼブルちゃん。姿を消す魔法アイテムを持つ天使ダチュラちゃん。そして桜に修行をつける天使のビスクちゃん。他には水上静希ちゃん、クラスメートの宮本君、田辺さん、南さんなどがサブキャラクターとして登場していますか。しかし今回は人間組は殆ど出番はありませんでしたね。
・シナリオ
桜くん、大好き。でも、もう逢えないんだね
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜
ある日、未来の世界から新しい天使がやってきました。『ルルティエ』の指令を携えた彼女たちの名前は、ゼブルちゃんとダチュラちゃん。……なんですが、二人の容姿は個性がありすぎて目のやり場に困ってしまいます……!
そんな彼女たちの目的は、ドクロちゃんを未来の世界へ連れて帰ること!? 冷徹に言い放つ天使二人を前に、桜くんはただただ呆然とするばかり。
「ねえ、本当にさよならなの? ドクロちゃん」(7&YHPより抜粋。)
・感想
不条理痛快ギャグ小説の代表作の1つでしたが、今巻を持って最終巻ということです。
最終回と言う事で、これまでの様な『数話で一冊』と言う形式ではない、『全編を通して1話』という形です。これまでの作品が「ドラえもん」でいうところのTVシリーズのようなものだとしたら、今巻は劇場版大長編、というところですね。
最終巻にきての新しいキャラクター、ゼブルちゃんとダチュラちゃん。しかしぽっと出のキャラではなく、非常に重い過去を背負ったメインストーリーに絡む重要なキャラでした。言うならば『裏ドクロちゃん』とでも言うゼブルちゃんと、そんなゼブルちゃんを友達として助けたいと思い協力しているダチュラちゃんのふたりは、最終巻での話に相応しいキャラでした。それでいてこれまでのお笑いギャグ小説の面でも活躍できるなど、著者であるおかゆまさき先生の筆力には驚かされますね。これだけシリアスとギャグを混在させても違和感の無い―――むしろ面白い作品にできるのは、やはり才能と努力によるバランスの取り方が見事だ、と思いました。
そして今巻ではドクロちゃんを助ける為に桜くんが大奮闘。その姿もまたシリアスでもありギャグでもありで、全編通して飽きることなく軽快に読み進められました。天使しかいけない場所に行くため、一時的に天使になる修行をするなど、話としては熱血主人公みたいなのですが、修行中の様子やその結果身につけた魔法の力が『魔法の指サック』とかで、その言動が一貫してギャグになっていて、燃えながら笑える、或いは熱血しながらはちゃめちゃしている、とでも言うのでしょうか。最終場面での決闘も、それだけ見れば熱血バトルものなのに、その決着のつけ方が笑える形で、登場人物全員が大真面目に馬鹿な事をしている、という形になっていて兎も角最後まで笑いが絶えませんでしたね。
それでいて最後にはしんみりしながら爽やかに。それでいてハッピーエンドに。まさに「ドラえもん」の劇場版大長編の如く、起承転結がはっきりしていて読んでいて小気味の良い作品でした。最終巻といわず、まだまだ続けて欲しいくらいに読んでいて楽しい作品でした。