ぜふぁがるど

ぜふぁがるど (電撃文庫)

ぜふぁがるど (電撃文庫)

ぜふぁがるど

著者・柴村仁先生。挿絵・ふゆの春秋先生。柴村先生は第10回電撃小説大賞で”金賞”を受賞した「我が家のお稲荷さま。」の作者で、他著作には「E.a.G」という作品がありますね。
・登場人物
主人公でタイトルでもある、『牙臣ゼファガルド』という変身ヒーローになった菅沼宙。宙を変身ヒーローにした張本人である、翼の生えたトカゲに見えるというマスコット的存在ネ・プルギス・ヤー。そしてヒロインで本人は知らないが実は異世界人で”竜の澪標”という存在で、ネ・プルギス・ヤーが守ろうとしている宙の幼馴染、安芸野鳴。
敵側として鳴を連れて異世界へ返ろうとしている、謎の魔道書を使い怪人/怪生物を生み出す男、イグルド。イグルドと共にいる謎の女、クナ・ラー。怪生物3、集まった髪でできた怪生物ダズ・ハール。怪生物1、2つの目玉でできた怪生物ダズ・オーゲ。怪生物2、スライムの様な鞠球の様な姿で何でも食べてしまう怪生物デア・ムント。
・シナリオ
皆さんどうもこんにちは、菅沼宙です。俺はこれまでの十五年間、胸を張って「いたって普通!」と言い切れるような人生を歩んできたつもりですが、約一ヶ月前から、突如現れたネ・プルギス・ヤーと名乗る謎生命体の陰謀により、「牙臣ゼファガルド」とゆーのに変身できるよーになりました。…うん、何を言っているか分からないと思います。言ってる俺自身も自分が何を言ってるかよく分かりません。でもこれは事実なのです。世の中って、アレだよな、不思議でいっぱいだよな。というわけで、『我が家のお稲荷さま。』の柴村仁が放つ、おとぼけヒーロー噺、開演です。(7&YHPより抜粋。)
・感想
全6話構成で、菅沼宙が『牙臣ゼファガルド』と呼ばれる存在となり幼馴染の鳴を守る為に、正体を隠して影から彼女を守り戦う、という話ですね。いまいち変身ヒーローとしては戸惑うところの多い宙が、ネ・プルギス・ヤーに激励されたり叱咤されたりしながら、鳴を連れ去ろうとするどこかとぼけた感じの敵側の怪生物を相手に戦う、というのが基本スタイルかと。
第1話ではすでに牙臣ゼファガルドになっている宙が、変身ヒーロ―と言う存在の自分に戸惑い或いは忌避感を見せながらしかし鳴は守ろうと怪生物3のダズ・ハールと戦う話が書かれ、第2〜6話が宙が牙臣ゼファガルドとなるまでの一連の出来事―――怪生物1、ダズ・オーゲと戦い―――と、なってからの2回目の戦い―――怪生物2、デア・ムントとの戦い―――についてが書かれ、第6話から第1話に繋がる、という形式ですね。
全体的に緊張感のないヒーローもの、といった感じでしょうか。
鳴を守るために牙臣ゼファガルドとなり、その正体を隠したり戦いの痕跡から鳴が感じる疑問に宙が必死になって言い訳を考えたりと、お約束的な主人公の人知れぬ苦労振りが見られる一方で、牙臣ゼファガルドに変身しながらも怪生物と積極的に戦いをするではなく戸惑ったり現実逃避したりしてネ・プルギス・ヤーに怒られたりと、話の中では二種類の展開が見られますね。お約束を踏襲する展開と、お約束に逆行する展開、といったところでしょうか。
個人的には文体に『( )』による注釈などが入っていて説明的な文が少し気になりましたが、全体で見れば読み易くはありましたね。