EX!3

EX!  3 (GA文庫)

EX! 3 (GA文庫)

EX!3 〜怪人サソリ女!?〜

著者・織田兄弟先生。挿絵・うき先生。変身ヒーロー者の逆転立場小説、といった所ですか。敵として扱われる『怪人』たちの養成校で、新米変身ヒーローが様々な経験を積みながら、圧政を敷くばかりになりつつある他の『ヒーロー』たちを相手に戦ったり、養成校所属の女性怪人たちと仲良くなったりする作品ですね。
・登場人物
主人公で彼が所属する怪人養成所では敵方となる変身ヒーロー『エクスター』を父に、怪人養成所の前身であった悪の組織で大幹部だった母を持つサラブレッドな血統を持つ大和一哉。蜘蛛型の女怪人で一哉と最初に仲良くなった諜報・偵察に長けた能力を持つ多奈内由良。学園の三巨頭<ポイズン・スリー>の1人で百足型の女怪人、千路美尋。そんな美尋が心を砕く友人で彼女の主人でもある<ポイズン・スリー>の1人で蠍型の女怪人の周防比夜。<ポイズン・スリー>の一角で一哉の戦闘訓練の面倒を見ている師匠の様な立ち位置にいる蜂型の女怪人の峰音十季子。第2巻から登場した蝙蝠型の女怪人で古強者でもあるが見かけは幼い古森羽月。謎の能力を持つがそれを隠し、学園では最下層の立場で何か色々企んでいる様子の涼原太一。養護教諭で一哉や由良たちの身体検査と体調管理を受け持つ瀬似亜サラ。ざっとこんなところですかね。
この巻では敵役としては過去の組織の理念を受け継ぐような形で未だに色々と暗躍していて比夜や美尋を使い何某か企んだりしている男、蔵方というのが出てきます。
・シナリオ
「この学園を去れ、大和一哉」
生徒会長補佐・千路美尋は冷淡に言い放った――。
聖クレス学園に通う一哉は、同級生たちとのにぎやかな日常を過ごす一方で、学園トップクラスの実力者たちに訓練を受けるといった、充実した日々を過ごしていた。
だが、学園に通うすべての生徒が、無条件に一哉を受け入れているとはかぎらない。千路美尋の言葉は、それを再び思い出させることになる。
生徒会長・周防比夜に付き従っているだけだった美尋が、突然行動した理由は? 山中の戦いで見た、金色に輝くエクステンド状態の比夜と関係があるのか? 一哉を中心に、さまざまな思惑が動き始める!!(裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻は前巻で登場したが説明がされていなかった、比夜が変身した『金色のエクステンド』に関わる比夜と美尋の秘密が明かされると共に、一哉が最初の壁に当たりながらも必殺技を編み出す―――そんな話になっていますね。
比夜と美尋の関係の深さを語る過去の話や、自分の得意技―――必殺技を手にするべく峰音十季子や古森羽月と一哉が特訓、強力な敵の出現といった王道な展開から、美尋が敵になるなどの意外な展開もありでバトル要素の強く、話自体も起伏に飛んだ展開でしたね。
このシリーズは、これまでは大和一哉を中心にした星クレス学園の面々と何かしらの敵―――第1巻では2世エクスター、第2巻では暴走した怪人と、『個人』の敵を相手にしていた感じでしたがこの巻での全体的な印象は敵味方入り混じってのバトル、といった感じでしょうか。一哉たち『星クレス学園』側から羽月が所属していた『イージス』。蔵方が所属する『ARES』、それら全てを相手に敵対している形の所謂『善』側代表ともいえる『エクスター』たち(劣化レプリカみたいなものみたいでしたが)。そんな感じで、今回は『陣営』ごとにバラバラでそれぞれに目的があって―――みたいでしたね。
そんな中で、今巻の主役の1人でもある千路美尋の比夜の為に尽くそうとして健気ながらどこか間違ってしまっている姿は悲哀を感じ印象深かったです。比夜の為に尽くそうとしているが、比夜は美尋より一哉を意識している―――事実はどうあれ美尋にはそうとしか見えず、擦れ違った心が2人の仲良しだった少女達を引き裂き、拳を向け合う事になる―――そこに至る展開とその先に待つ結末は買った人のお楽しみと言う事にしておきますが、この2人も方向性を誤った前組織『HERA』が残した遺産に苦しめられているのだな、と思いましたね。
そんな美尋と比夜の話が中心になって進んでいきますが、主人公である一哉もきっちりヒーローしてました。特にそれが顕著だったのは、強力な敵に一度破れてからの再戦で必殺技を土壇場で編み出してしまう、という王道的ヒーロー展開があったところでしょう。強力な蹴り技。それは仮面ライダー555の555キックのようなイメージで、スタイリッシュながら力強い描写が決戦の終止符を討つに相応しい燃え上がり方を見せてくれていましたね。