くみちょ!2

くみちょ!2 3億円をとりかえせ!

著者・白川晶先生。挿絵・きりがみやび先生による新シリーズ作品第2段ですね。著者は他には「KLAN」シリーズなどを書いていたそうです。
・登場人物
主人公で一般人だったが、親の借金のカタに893に売られてそこの組長のおもり兼ボディーガードみたいなことをすることになったオタク趣味を持つ鏡圭一郎。ヒロインでタイトルでもある小学4年生で極道の組長をする住川あゆみ。他に、圭一郎の幼馴染のコスプレ趣味を持つ笹原恵、極道関係者の樹虎湖堂、清水斑。
新登場キャラは住川会の武闘派部門『緋色組』の跡取り娘で刑務所での慰安的活動を専門とするアイドル<ムショドル>でもある緋色あかね。あかねのマネージャーの堂島菊子。
そして今回の黒幕的立場として金貸しのような事もしている金持ちの老人の鮫島龍二。以上が今巻の主要登場人物ですね。
・シナリオ
住川会での立ち位置を確保し、あゆみや恵と一緒の生活にも慣れてきた圭一郎。そんな折り、圭一郎は組が損失を被った3億円を取り戻すため、株取引という勝負の舞台へ放り込まれる。株の知識などない圭一郎であったが、勝負となれば話は別だった。だがそこに、あゆみたちを裏切るように唆す人物が現れる。果たして圭一郎の下した決断は―?命がけ極道ラブコメディ、第2弾。(裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻は正直なところ、あまりに展開が露骨で逆にいまいち乗り切れない/本にのめり込めませんでしたね。
話としては主人公である圭一郎が借金もあって世話になっている住川会と、その下部組織であったが牙を剥いてきた『緋色組』との株を使ったマネー・ゲームを主体とした血の流れない抗争、といった様相なのですが、その合間合間に繰り広げられる新登場キャラと圭一郎とのやり取りが露骨に『萌え狙い』的過ぎて少々食傷気味を感じたり、展開そのものもキャラクターと言うか登場人物たちの設定と噛み合っていない感じで、前巻に比べてスッキリしない印象でしたね。
話のテンポ自体は早くて手軽に読めるのですが、主人公の圭一郎が取る事になる行動が意味不明だったり突然精神論的な発言が出てきたりで、現実的な株取引を舞台にしたのが今回の話なのに、『運を引き寄せる』とか『感覚を鋭敏にする』とかを圭一郎が手にしようと断食をしたりするのですが、正直横で見ている分―――読者視点として見ている分には何故断食なのか、というのがわからなかったです。極限状態で最良の選択肢が常に選べるなら、株を扱っている人たちはみんな絶食するだろ!みたいな。
また主人公である圭一郎も、前巻と比べて人が変わっているような印象でしたね。名前だけ同じの別人みたいだ、とも。オタク趣味を持つだけの一般人、だったはずが妙にストイックで計算高く、落ち着いていて勘が鋭い。某賭博漫画の主人公のようになっていていつ「アンタ、背中が煤けてるぜ」とか言い出すかというくらいでした。それでも一部で女性陣からのアプローチに赤面したりしている面も残っていたのでそこで前巻の圭一郎との繋がりを感じはしましたが、やはりキャラクターが大きく変わっているような印象でしたね。
総じてこの巻、扱っている勝負の内容―――前巻のカードゲームに比べて今巻は株取引―――というのもあり、前巻に比べてはあまり面白みを感じませんでした。前巻のオタクVSヤクザ、という異色さの面白さが無くなり、ただのヤクザVSヤクザによる株勝負―――そんな印象で、意外性に欠けます。ヒロインであるあゆみが小学4年生であるという設定も無いも同然になっていましたし、主人公のキャラクターが変わったような印象を覚えたのもあり、作品の方向性はどっちを向いているのか私には理解できなくなっていましたね…。