シャムロック3

シャムロック3 〜夕闇のイリュージョニスト ですぅ〜〜

著者・沢上水也先生。挿絵・西脇ゆぅり先生による、GA文庫創刊時に刊行された作品の1つです。沢上先生は他作品として徳間デュアル文庫から「舞−乙HiME列伝」などの作品を出されていますね。挿絵の西脇先生はPCゲームの「きると」が代表作です。
・登場人物
美少年だが常識知らずのマッドサイエンティスト久我原桂一。そんな桂一に心酔してついて行く、天然の性格をした元茶道部部長現世界征服研究会未来警察同好会有限会社シャムロック・カウンシル社長という肩書きが色々と変わる通称”白メイド”の漣恋歌。十六夜学院生徒会の生徒会長の正義を追求する少し単純な突撃少女、通称”赤メイド”中瀬古舞。同生徒会副会長の舞に心酔し彼女をサポートする事に全力を傾ける長刀術などの武芸を修めたお嬢様の通称”青メイド”こと藤堂乱菊。コスプレオタク美少女の通称”黒メイド”東雲クリス。第1巻の事件に巻き込まれた結果、シャムロックに協力する立場になった図書館司書の氷取沢香澄。第2巻から登場の洗脳説得メガホンという道具を使い相手の精神に訴えかける話術を得意とするシャムロックの対外交渉人(ネゴシエーター)の、”偽シスター”こと簗瀬理佳。そしてその弟で熱血ヒーローやロボット好きが高じてシャムロックに入った”下っ端”こと簗瀬浩樹。そして敵か味方か。巨大企業ハリントンの戦略研究室”ヘッドクウォーター”の謎の女、ロウヒ。
サブキャラクターにはシャムロックと同じPP−民間警察−の、チキンポリス所属の楓四姉妹などが登場します。
・シナリオ
十六夜学院祭」までいよいよあと一週間!シャムロックのメンバーも準備に余念がない。…はずなのだが、孤高のマッド・サイエンティスト久我原桂一は、今日も「世界征服」という崇高な目標に向けて独自の研究開発(奇行?)に没頭中。いつものことに呆れ果てる舞、乱菊、クリスだったが、そんな中突然モニターに宿敵ハリントンの少女ロウヒの姿が…。
十六夜学院祭中にサイバーテロを実施されていただきます」
不敵な予告を前に戸惑うメンバーをよそに桂一は敢然と応える。
「その挑戦、受けて立とう!警察同好会の学院祭展示は、君のサイバーテロから学院を守ることだ!」。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は文化祭を舞台に、様々な勢力―――シャムロック、ロウヒ、御堂家傍流といった勢力たちが、それぞれの覇を競うような形で騒動が起きる巻ですね。前回の事件のリベンジに、ロウヒがシャムロックに突き付けてきた十六夜学園の学園祭で起こすというサイバーテロ予告。その阻止の為にシャムロックが動くことになるが、同時に学院際の出し物としてしまうことを桂一は生徒会に告げる。それと同時期、作品の舞台である新相武市を自治する御堂家の中で内乱が起きる。その標的は十六夜学園。かくしてシャムロック、ロウヒ、そして御堂家傍流という3つ巴の争いが起きる―――。と、この巻はこんな感じです。この巻は、そんな騒動の中でシャムロックの面々がそれぞれ自分の居場所を再確認しながら騒動に当たっていく、といった形で進んでいきますね。
シャムロック設立前、それぞれがいた居場所で文化祭の準備をし、また文化祭でも元の居場所で行動するが、しかしどうにもしっくりこない。そうするうちに、自分の本当の居場所は―――と、皆が考え始める、と。そんな登場人物たちの『自分探し』が繰り広げられていましたね。
それと、この巻では文化祭が舞台ということで”遊び”も多く見られていました。
マッドサイエンティスト汚名挽回?の桂一によるキラー衛星誤射から始まり、桂一と乱菊のコスプレ、演劇に出演する舞と乱菊の百合百合しい描写、今後定着するロウヒのキャラクター決め、理佳の説得洗脳の手腕が見られたり、クリスがヲタクぶりを全開したり、浩樹に与えられるPADもどきの形状など、笑いの要素は多かったです。
ですがそれと比例するように、シリアスな部分も多々。文化祭中に仕掛けられてくるサイバーテロや御堂家傍流の仕掛けに対し、機器の誤作動や放火、御堂家傍流のさらに上の存在に対して桂一の指揮の元で恋歌が仕掛ける無自覚な情報戦。爆弾の捜索、シヴァ戦車の暴走など、PADなどのメイド・イン・久我原の装備が無ければどれも一介の学生がする民間警察の手に負える事態でないことばかりでした。
そんな、喜劇と真剣が入り混じった中でテンポ良い会話で話が進んでいくのが、このシャムロックシリーズの魅力なのでしょうね。最後のオチもシャムロックらしい力技のオチで、「なんじゃそりゃぁ!?」的な発想がシャムロックの作風に合っていて秀逸でした。