シャムロック2

シャムロック2 〜狂乱のロボットバトル ですぅ〜〜

著者・沢上水也先生。挿絵・西脇ゆぅり先生による、GA文庫創刊時に刊行された作品の1つです。沢上先生は他作品として徳間デュアル文庫から「舞−乙HiME列伝」などの作品を出されていますね。挿絵の西脇先生はPCゲームの「きると」が代表作です。
・登場人物
美少年だが常識知らずのマッドサイエンティスト久我原桂一。そんな桂一に心酔してついて行く、天然の性格をした元茶道部部長現世界征服研究会未来警察同好会有限会社シャムロック・カウンシル社長という肩書きが色々と変わる通称”白メイド”の漣恋歌。十六夜学院生徒会の生徒会長の正義を追求する少し単純な突撃少女、通称”赤メイド”中瀬古舞。同生徒会副会長の舞に心酔し彼女をサポートする事に全力を傾ける長刀術などの武芸を修めたお嬢様の通称”青メイド”こと藤堂乱菊。コスプレオタク美少女の通称”黒メイド”東雲クリス。前巻の事件に巻き込まれた結果、シャムロックに協力する立場になった図書館司書の氷取沢香澄。
サブキャラクターにはシャムロックと同じPP−民間警察−の、チキンポリス所属の楓四姉妹などが登場します。
そしてこの巻から新メンバーとして、簗瀬浩樹とその姉の簗瀬理佳が登場しますね。敵としては敵側組織の戦略研究家みたいな立場のロウヒが出てきますね。
・シナリオ
海水浴客でごったがえす高浜海岸に突如出現した謎のロボット、マッドベイビー。その暴走を止めることができなかったシャムロックはマスコミから厳しい非難を浴び、その存続が危ぶまれるほどの窮地に追い込まれる。
しかしそのロボットテロの背後にはまたもや宿敵ハリントンの影が…!熱血ロボットオタク少年の浩樹、その双子の姉である理佳も巻き込んで、いつしか事態はとんでもない方向に動き始める…!さてシャムロックの運命やいかに!
アクションもギャグもお色気も、ますます増量でおとどけする大好評シリーズ第2弾遂に登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は特撮風に言えば、戦隊モノでメンバーが大体出揃い、応じて敵が巨大メカを出してくる。そして戦隊側も巨大ロボットを登場させる〜そんな流れの巻です。
民間警察として海水浴客が多く集まった浜辺での警備の仕事をしていたシャムロック・カウンシル。しかしそこに来ていた客の中にいた政治家を狙い巨大ロボットが出現する。そして起きる大惨事。死者、重傷者を多数出す事態になり世間の非難を浴びるシャムロック。このくだりは、上手く軌道に乗り始めたシャムロック最初の難事として見れますね。公明正大をモットーに自分が信じる正義を貫こうとする舞が被害を食い止められず泣いたり、PADを装着したシャムロック・メンバーでもどうにもならないことがあるという明確な示し。それらがシャムロックといえどロボット相手には普通の立ち向かい方では駄目なのだ、と思わされ、後に出てくる巨大ロボ作成への布石になっていましたね。
そして今巻でも裏で見える巨大企業・ハリントンの黒い思惑。人質をとってのシャムロック解散要求に、シャムロック新メンバー、簗瀬理佳こと”偽シスター”が説得メガホンを手に登場します。PADを装着しない彼女の体当たりでの理詰めの洗脳…もとい、説得術は見事な演出でした。筋道立てた納得できる話で、普通に受け入れている自分がいましたね。
そして最後の大詰め、ハリントンが所有する巨大ロボット『マッドベイビー』とシャムロックが繰り出す民間人製と言う別な意味で凄いロボット『ストレンジラブ』の戦い。普通に軍も所有する最新鋭の2足歩行型ロボットのマッドベイビーに対し、マッドサイエンティストが作った中華鍋やアルミホイルで出来ているにも関わらず、マッドベイビーよりもスムーズな2足歩行が可能で能力的には互角どころか多少有利というストレンジラブ。まさに常識的最新鋭ロボット 対 天才製作民間人製ロボットという異色かつ大胆な対比の戦いがラストを飾っていてのめり込みましたね。操縦性最悪、見た目にも微妙、と、何だか情けない描写が多いけど性能的には凄くて、妙に魅力があるストレンジラブが大活躍でした。
また、この巻から敵組織のボスっぽい存在として『ロウヒ』が登場します。通信機越しに指示を飛ばす存在。その正体は不明、と、所謂『敵の組織』らしい演出でした。
巨大企業所有のPPという隠れ蓑を相手に、法に触れずにハリントンの悪事を暴かなければならない―――そんな状態での行動や、人質を取られるなどの危機的状況での対処、同時多発的にそれぞれの場所で起きている出来事に、各自別の場所の仲間を信じて連携で解決していくのはチーム物の醍醐味、と言った感じでしたね〜。それでもオチはコメディで締めていて、まさに『萌えて燃える』作品として、キッチリ締めてくれていて読了感も爽快でした。