シャムロック1

シャムロック1 「灼熱のメイドポリス ですぅ〜」

著者・沢上水也先生。挿絵・西脇ゆぅり先生による、GA文庫創刊時に刊行された作品の1つです。沢上先生は他作品として徳間デュアル文庫から「舞−乙HiME列伝」などの作品を出されていますね。挿絵の西脇先生はPCゲームの「きると」が代表作です。
・登場人物
美少年だが常識知らずのマッドサイエンティスト久我原桂一。そんな桂一に心酔してついて行く、天然の性格をした元茶道部部長現世界征服研究会未来警察同好会有限会社シャムロック・カウンシル社長という肩書きが色々と変わる漣恋歌。十六夜学院生徒会の生徒会長の正義を追求する少し単純な突撃少女、中瀬古舞。同生徒会副会長の舞に心酔し彼女をサポートする事に全力を傾ける長刀術などの武芸を修めたお嬢様の藤堂乱菊。コスプレオタク美少女の東雲クリス。図書館司書の氷取沢香澄。
・シナリオ
ショタな外見とは裏腹にその頭の中は極上のマッド・サイエンティストである、天才少年・久我原桂一。彼が最終目標である「世界征服」を達成するために選んだ手段は、なぜか民間警察(プライベート・ポリス)「シャムロック・カウンシル」の創設だった!しかも制服はエプロンドレス!?なんで!?
暴走する桂一を止めるはずの十六夜学院生徒会の中瀬古舞と藤堂乱菊の二人まで、いつの間にかシャムロックのメンバーに入れられてしまい、さらにはコスプレオタク美少女のクリスまで参入してしまったからさぁ大変!そんな彼らに降りかかる大事件とは…。(7&YHPより抜粋。)
・感想
GA文庫創刊時の一冊ということで、様々な『萌え』要素と『燃え』要素を詰め込んだ作品でしたね。熱血系の特撮戦隊物の設定で、少女達が活躍する―――そんな話です。
世界征服を指針に、人工島にある十六夜学園の中で『世界征服研究会』と称して学校の部活動の延長で活動していた久我原桂一。その彼が学内で生徒会が発令した『校内安全宣言』により世界征服研究会を廃部して新たに『警察同好会』を名乗り、地域の自治を担う民間警察―――通称PP―――として、民間警察シャムロック・カウンシルを立ち上げた事から物語は始まります。
マッドサイエンティストの桂一が所謂指揮官兼コマンダー兼発明博士。そして彼の発明を身につけて前線に行く戦隊メンバーが少女たち…恋歌、舞、乱菊、クリスの4人です。異色の戦隊モノ、といった感じですね。白がリーダーで、前線での突撃戦闘メンバーの赤、前線サポート役の青、後方支援の黒と白と役割分担されています。そんな戦隊モノ的なお約束として、敵は巨大な組織。ハリントン・ジャパンという傭兵をPPとして使っている何でも屋です。
この巻は文字通り創刊時の一冊ということで、PP―――民間警察シャムロック・カウンシルが創設されるまでの事が書かれています。そして話としては、巨大企業の裏側にある黒い思惑と起業したばかりのシャムロックが激突する。そんな形ですね。
この作品の面白い所は、巨大企業を相手に少人数の会社が立ち回り、マッドサイエンティストの奇矯な発明で既存兵器の延長的な近未来的武装を圧倒していくところ。それから戦隊モノ的な変身アイテムを発明して初めて身につけ、合言葉を決めたりなどの特撮的お約束を踏襲していくところ。その上で格好良いのでは無く、『可愛くて格好良くてちょっと間抜け』な展開をしているところ。でしょうか。
巨大企業の黒い思惑を相手に立ち回る姿は爽快。それぞれの掛け合い―――会話もまたテンポ良く。それでいて設定は緻密で、法律を気にしたり、携帯電話の延長的なIDフォンという設定が上手く使われていたり。かと思えばエプロンドレスが戦闘服代わりになっていたりと、真面目だけど笑える要素もある作品、として十重二十重に緩急があって飽きの来ない楽しさがありましたね。
難点としては緻密な設定は良いですが、土地の設定―――舞台が人工島なので、その設定説明が理解できるまで地理的に理解し辛かったりするかもしれない事でしょうか。科毎に違う場所に作られた学校がいくつかあり、それにより十六夜学園と呼称されたりしている事などは、その別の科で事件があった、となった時に「それって島の地理だとどの辺だっけ?」となり地図を見返したりしてそこでテンポが切れるなど私はありましたので。それとも地理を頭に入れきれていない私の頭が悪いのでしょうかね?(苦笑