くじびき勇者さま 2番札

くじびき勇者さま 2番札 誰がお荷物よ!?

著者・清水文化先生。挿絵・牛木義隆先生によるお気楽気味なファンタジー世界でのくじびきで選択された勇者とその従者の珍道中物語、と言った感じでしょうか。清水先生の他著作は、富士見ファンタジア文庫からデビュー作「気象精霊記」シリーズ、「あんてぃ〜く」シリーズなるものを出しているようです。挿絵の牛木義隆先生は徳間デュアル文庫の「とくまでやる」シリーズやJIVE出版の「ゲヘナ リプレイ アザゼル・テンプテーション」シリーズなどの挿絵を描かれていますね。
・登場人物
主人公でヒロインの、料理が宮廷料理人級で様々な文学に長けた博識という以外はただの見習い修道女から、国を上げて行った『救世の勇者の選出』のくじびきによって『勇者の従者』となったメイベル。もう1人の主人公で、普通の、騎士団入りを目指して選抜くじ引きに何度も挑んでは当たりくじを引けずに落選していたが、『救世の勇者を選び出すくじ引き』で見事勇者のくじを引いた剣士ナバル。メインは基本この2人で。他に、メイベルの親友で同じ見習い修道女のパセラ。騎兵隊長でメイベルが好きな貴族の騎士クラウ。西の山の長老ドラゴンのカーム・コップ。メイン。サブはこんな所で、他にはドラゴンを崇め奉る「ドラゴン教団」を纏めるテロ組織の幹部ブルーノなどが敵役、でしょう。
・シナリオ
「くじびき」の神事により、救国の勇者に選ばれた剣士ナバルと、その従者に選ばれた修道女メイベル。脳ミソ筋肉のナバルと、学者顔負けの博識で何でも解説を始めてしまうメイベルの凸凹コンビは、何かとぶつかり合いながらも、それなりに順調な旅を続けていた。だが、そんな2人の前に、対立する異教徒・ドラゴン教徒が立ちはだかる。さらには、強大なドラゴンまで現れて…清水文化が贈る近世風ファンタジー、驚天動地の第2弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は、初期は旅に出たばかりのナバルとメイベルの2人が、メイベルが考える方角とはまったく別の方角へくじびきによって進みながらも楽しくやっている様子、が書かれてましたね。中半はドラゴンの長老カームとの出会いと、そこに至るまでの山道での出来事など。後半は前巻同様に、ドラゴン教徒との町での市街戦―――そんなところです。
この巻からナバルとメイベルの2人旅が始まっています。ので、その辺りの描写がやはり多かったですね。ナバルとメイベルが互いを知り合う話と言うか。しっかりしていそうで意外と抜けているメイベルをナバルがフォローしたり、専門的知識の無いナバルをメイベルが得意の説明好きでフォローしたりといったことが、メイベル視点中心で書かれていました。
中半ではドラゴンが直に登場。ファンタジー色を益々強めると同時に、普通の『ドラゴン=凶暴な怪獣』的なイメージを払拭する「良い人」としてドラゴンが書かれていたのが印象深いですね。理知的で生産的―――そんなドラゴン見たことありませんでした。
そして後半。前巻同様のドラゴン教徒との戦いですが、今回はナバルがメインを張っていました。戦線離脱中のメイベル―――彼女に代わり、ナバルがくじびきで選ばれたとある武器?で、戦います。意外なその活用法と強力さには、身の回りにあるものこそが最大の武器、ということでしょうかと苦笑と共に思ってしまいましたね。
そんな感じで今巻は旅の途中に起きた事、ナバルとメイベルの二人が交流した事などが中心に書かれていました。前巻同様の理知的だけど偶然で進む話、という作風も変わっておらず、前の巻が楽しめたなら引き続いて楽しめると思います。