レンタルマギカ4

レンタルマギカ 竜と魔法使い (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ 竜と魔法使い (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ4 〜竜と魔法使い

著者・三田誠先生、挿絵・pako先生による異種魔法格闘戦ノベル、ですかね。三田先生は他にスニーカー文庫「精獣戦争」シリーズなどを書かれていて、pako先生はPS2ゲーム「シャイニング・フォース イクサ」などの原画を描かれていますね。
・登場人物
主人公の魔眼持ちで社長の伊庭いつき。ヒロインに新入社員でケルト魔術使いの穂波・高瀬・アンブラー。サブキャラクターに陰陽道でオカルト雑誌や占い誌でライター業を営む猫屋敷蓮、8歳の小学生だが巫女でもある神道の葛城みかん。騒霊現象<ポルターガイスト>を起こせる文字通りアストラル幽霊社員の黒羽まなみ。以上が魔法使い派遣会社「アストラル」陣営という形で。
純正魔法使い集団「ゲーティア」陣営ではありますが、アストラル経営権の2割を持つ大株主という立場を持つとして、穂波同様ヒロイン格ということでソロモン王の魔術使いアディリシア・レン・メイザース
この巻ではさらに、いつきと同様に『妖精眼』を持つケルト魔術使いで穂波の知人でもあるフィン・クルーダと、前アストラルのメンバーであり猫屋敷の先輩の臨時契約社員密教両界曼荼羅を扱う魔法使い・隻蓮が登場します。
・シナリオ
全てを視ることができるが故に、視たモノ全てを喚ぶ“妖精眼”。強すぎるいつきのその力に“協会”は禁忌の力という疑いをかけ監視役フィンを派遣する。同門というだけあって穂波の過去を親しげに語るフィンにいつきは親しみと嫉妬の入り混じった奇妙な感情に包まれていた。しかしそんな日常を嘲笑うように地中深くに封印されていた最強の魔法生物が覚醒を始める。まるで“妖精眼”に呼び寄せられるように…。異種魔術格闘戦第4弾。(裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻は穂波が抱えてきたいつきに対する罪悪感とか贖罪したいという気持ちとか、そう言ったものが引き金になって起こる事件を書いてる、って感じですね。
穂波の知人でありケルト魔術の修行にも付き合ってもらったフィンの登場が引き金になり、街で起き始める霧の発生―――<竜>の目覚め。町に眠る<竜>を利用して、アストラルの面々と対峙してでもいつきの目を治そうとする穂波。ヒロインに焦点を当てたストーリー展開は前巻で短編集的にサブキャラクターたちの話を書いているだけに、一冊丸々使った『穂波の話』としての大きく話が動く巻だな、と認識させてくれましたね。
いつきの目を治すという目的の為だけにケルト魔術を修めた穂波の必死の姿と、アストラルを裏切るような立場に立たざるを得ないことに苦悩する姿は、丸々一冊使って書かれているだけあって悲哀を持ちながら凄絶でしたね。そしていつきの答えを知り、自分の行動がエゴであったことに気がついた後の対応は、穂波を『芯の強い女性』として書いてきたが故の説得力がある行動力に溢れていて、見事でした。
そしてその裏で動く思惑。この巻からついに『敵組織』と言って良いであろう魔術結社『螺旋なる蛇』がその存在を匂わせていて、穂波の話と合わせて二重の意味でも大きく話が動く巻でしたね。
フィンの登場―――いつき同様の『妖精眼』を持つ存在として、強力なライバルキャラ的な立場ながら自身の望みではなく『他人の望みを叶える』ことに終始するフィンは、歪な魔法使いながら油断ならない相手として今後にも期待させてくれます。
また新登場の隻蓮は、礼儀正しくもその豪放磊落なありようと、密教使いの前アストラル関係者という立場から皆を導ける力を持った頼りがいのある兄貴分、ということで、新人であるいつきを初めみかんやまなみに色々と教えられる、猫屋敷とは違う道を示せる『もう1人の先導者』として魅力的でした。
街を丸ごと巻き込む形の今回の事件。それだけに、登場人物たちが得られたところは大きい物があるな、と思えますね。