レンタルマギカ3

レンタルマギカ 魔法使い、集う! (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ 魔法使い、集う! (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ3 〜魔法使い、集う!

著者・三田誠先生、挿絵・pako先生による異種魔法格闘戦ノベル、ですかね。三田先生は他にスニーカー文庫「精獣戦争」シリーズなどを書かれていて、pako先生はPS2ゲーム「シャイニング・フォース イクサ」などの原画を描かれていますね。
・登場人物
主人公の魔眼持ちで社長の伊庭いつき。ヒロインに新入社員でケルト魔術使いの穂波・高瀬・アンブラー。サブキャラクターに陰陽道でオカルト雑誌や占い誌でライター業を営む猫屋敷蓮、8歳の小学生だが巫女でもある神道の葛城みかん。騒霊現象<ポルターガイスト>を起こせる文字通りアストラル幽霊社員の黒羽まなみ。以上が魔法使い派遣会社「アストラル」陣営という形で。
純正魔法使い集団「ゲーティア」陣営として、穂波同様ヒロイン格ということでソロモン王の魔術使いアディリシア・レン・メイザース
この巻では他に、協会の『魔法使いを罰する魔法使い』影崎、思い入れのある呪物の回収をアストラルに依頼する呪物調達会社『トリスメギストス』取締役社長ディアナ、アストラルがディアナから受けた依頼の呪物を奪い合うことになる道士、李青鳳。アストラルに依頼を持ち込む神社の神主の御凪鎬、など雑多に出てきます。
・シナリオ
審神者を貸して欲しい。魔法使い派遣会社「アストラル」に舞い込んだ依頼はある神社から。その神社では十年前、審神者の儀式に失敗し術者は未だ意識不明だという。そこで今度は「アストラル」の巫女、葛城みかんの力を借りにきたのだ。失敗すれば命の保証はない上に境内は「鳥居」に守られた絶対結界。穂波のケルト魔術も黒羽の念動力も一切通じない。会社と巫女の意地をかけ、みかんは危険な儀式へ向かう。異種魔術格闘戦第3弾。(裏表紙より抜粋)
・感想
シナリオで紹介した裏表紙では1話のストーリーのようですが、実際は4話収録された短編集です。
前の1巻と2巻で、挿絵などで見られていた黒髪の少女―――アストラル幽霊社員・黒羽まなみ。彼女の登場からアストラル入社までの経緯が書かれた1話「魔法使い、貸します!」。先代社長伊庭司と取引のあった呪物調達会社「トリスメギストス」から依頼される形で、人の死体に咲く特殊な花の呪物「冬虫花草」を回収に向かい、そこでの出来事で騒霊現象を黒羽が起こせるようになる、黒羽の成長の話でもある2話「魔法使いと花泥棒」、裏表紙に書かれている内容であり、葛城みかんが中心となる審神者を目覚めさせるためにみかんが奮闘する第3話「魔法使いと夏祭り」、所有者が次々自殺する呪物の真贋の鑑定という協会の提示する仕事の入札に参加したアストラルが、肖像画のある屋敷に猫屋敷を派遣して同行していたいつき、同じように入札していたゲーティアのアディリシアを巻き込んで死を誘う肖像画に相対する第4話「魔法使いと肖像画」。
この巻、上記4つそれぞれに主役としてサブ・キャラクターが割り振られていて、それぞれの話になるようになってますね。1、2話で黒羽まなみ。3話が葛城みかんで、4話が猫屋敷蓮&アディリシア、と。それぞれのキャラクターを掘り下げる話であると同時に、サブキャスト―――時折出てきて依頼などをアストラルに持ち込む所謂『関係者』製造の話でもあるかな、と。
1話は黒羽まなみの登場回でもあり、ようやく第2巻で突然出てきて「誰だこれ?」的な印象だった黒羽のことがわかるかと。
2話では第2巻で既に黒羽まなみが使っていた騒霊現象を何故、第1話の時に使わなかったのかが理解できる展開があり、黒羽まなみがアストラル社員としてようやくスタートラインに立つまでが書かれていて、ようやくこれで第2巻の設定に追いつく、といった所ですね。
第3話はみかんの活躍の回であり、同時に今後のみかん関係の伏線も張られている回でした。彼女が抱える暗部というか心の傷、的なものが書かれ、それに立ち向かおうとするみかんが描かれていましたね。
第4話は猫屋敷蓮とアディリシアの回。猫が大好きという以外は正体不明で実力不明な彼の活躍を、謎の肖像画を鑑定するという協会の仕事を通して書かれていました。陰陽道の面目躍如というか、猫屋敷の実力の一端を見せつける回というかで。また、この第4話は表の主役が猫屋敷とすれば影の主役はやはりアディリシアでしょうね。猫屋敷メインっぽく見せながらも実のところはソロモン魔術の行使の方が陰陽道よりも多かったですし。さり気なく自然にいつきと約束を交わすために協会の仕事に入札してくるくだり、プライドの高さが見えながらもアディリシアの少女としての一面が見られてオチが面白かったです。
ですが第4話は、『死』を題材にしているだけに深い印象が強かったですね。死を呼ぶ呪物が生み出された理由…それに思いを馳せる時、死を呼ぶ悪意の呪物のはずが、実は悲しい時代に救いを求めたが故の非業の結晶のように見えてくるから不思議な物です…。


などなど、今巻は第1巻と第2巻の間を紡ぐ話が中心でした。様々な話で様々なこれまでまだスポットが当たっていなかったキャラに焦点を当てた短編集でしたね。