デモンパラサイト2

デモンパラサイト2 雪の女王は、死を欲す。

著者・北沢慶先生。挿絵・植田亮先生によるデーモンバトルアクション小説、その第2段ですね。ちなみに北沢先生は、他作品として『モンスター・コレクション・ノベル』シリーズや『召喚士マリア』シリーズを富士見ファンタジア文庫レーベルから出しておられます。
・登場人物
主人公で『炎の魔神クレイモア』の悪魔寄生体を体内に取り入れて悪魔化する事ができるようになった変身ヒーロー(或いはデビルマン)の日向葵。ヒロインで葵にクレイモアの悪魔寄生体を与えて自分の『守護者』とした『魔獣の母エキドナ』の悪魔寄生体を持つが悪魔化する事は出来ない八頭桜子。
この2人がメインで、他に葵の飼い犬だが実は『魔獣の幻術師ショーテル』の悪魔憑きであるヤマト(人間名:撫子)やクラスメートの成宮浩助、伊織茜、青葉紀子、同級生で『氷壁の騎士ブリガンダイン』の悪魔憑き牧野涼介、「悪魔憑き互助組織<セラフィム>」のメンバーで『光の天使モリオン』の悪魔憑きの叶瑞姫などがサブキャラクターです。
敵役には今巻は桜子のクローン体たる不完全エキドナの悪魔寄生体を持つ九頭竜ユキ、ユキの護衛とも付き人ともとれる態度を取る狼のクロサキ、そしてユキに唆されて悪魔化する笹原保奈美。この3人が主な敵役ですね。
・シナリオ
前巻の事件終了からそう経たずに話は始まります。街に最近悪魔憑きが増え始めていて、悪魔憑きを増やす感染源がいると考えた葵と桜子は、その感染源を探そうと考えてみると感染している者に葵の通う学校の生徒が多い事に気がつく。調査の為もあり、葵の学校に転入してくる桜子。新しい人間関係を築き、桜子の楽しい学校生活が始まるが、その影では家庭に学校環境にと悩みを抱える者もいた。それが笹原保奈美である。イジメを受け、両親と不仲で家でも居場所の無い保奈美。そんな保奈美の前に桜子と瓜二つの容姿を持ち不完全だが桜子同様にエキドナの悪魔寄生体を持つ悪魔憑き、九頭竜ユキが現れ、彼女は魔獣を生み出すエキドナの能力で保奈美を『悪夢の人形使いウォーコイト』の悪魔憑きにする。ウォーコイトの能力として催眠暗示能力を手に入れた保奈美は欲求の赴くままに力を使い続け、激変する環境にユキへの依存を加速度的に深めていく。だが度を越した催眠能力の行使から自分の身体が悪魔化し、その行為が葵たちにばれた保奈美は葵たちの前から逃げ出す。そんな保奈美の前に再度現れたユキは、保奈美の能力に目をつけて彼女を自分の守護者とし、東京全域をその催眠能力で操る企てを実行しようとする。東京全域に電波を発信できる場所―――東京タワー。そこから催眠暗示を広範囲に発信し、東京都民全てを意のままにしようとするユキ。
果たして葵と桜子は、不完全とは言えエキドナの悪魔寄生体を持つ九頭竜ユキの陰謀を止め、保奈美を救う事ができるのか? というところで。
・感想
今回は、終始サブキャラクター兼敵役である笹原保奈美にスポットを当てて話が進む巻でしたね。
一人の少女が心を弱め、その隙を突いて忍び寄る悪魔寄生体の魔手。九頭竜ユキの思惑のままに能力を与えられ、知らずユキの目的の為になることをする保奈美。その姿は、心を弱らせた人間に言葉巧みに近寄り、騙すという詐欺師の様な印象を九頭竜ユキに覚えさせられましたね。
こうとだけ書くと何だかユキが小悪党みたいですが、実際は不完全ながらもエキドナの悪魔寄生体を持つと言う事で桜子の反存在としてストーリーに起伏をもたらす、桜子や葵たちの対極ながら桜子には出来ない悪魔化を行える強力な敵として書かれていて、その影のボス的な存在感は強かったです。
また家庭環境から心の隙を突かれた保奈美も、現代にありがちなイジメられッ子ということで、今回の話は悪魔憑きうんぬんを抜けば何処にでも潜み得る話として一種の社会風刺も兼ねているのかな、とも思いました。
2巻としてはまずまずの運びではないでしょうか。強力且つヒロインのライバル的な存在の登場によって、話の広がりも出てきますでしょうし、メインに据えた保奈美の話は今回で終わっているとは言え、似たような形でまた事件は置き得るという事で今後の葵たちの立ち位置―――人間を守る側、として油断できない緊張感を維持して次巻への引きともできましたので。