ラブ☆ゆう3

ラブ★ゆう〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ラブ★ゆう〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ラブ☆ゆう3

著者は七月隆文先生。挿絵はみけおう先生です。著者の七月隆文先生は他に電撃文庫で「白人萌乃と世界の危機」なるシリーズや、別名でシリアス系の作品を書いたりしていたりします。
平凡な高校生だが唯一の特徴として「空想ができない」少年だった主人公の神田俊が、ある時作中ゲームであるRPG「ドラゴンブレス? エテルナの姫勇者」をプレイしている時に初めてした空想「ロザリーが本当に居たらいいのに」が現実になり、ゲームの中から女勇者である「姫勇者・ロザリー」を空想召喚したことから始まる姫勇者と平凡な少年の生活と恋模様&ちょっとした陰謀劇を書いたスラップスティック・ラブコメディです。
しかして今巻から、俊やロザリーの周囲にはラブコメディだけをしていられる状況ではないようになっていってました。陰謀部分…「敵」の存在が描写され始めていたのです。
今巻では、謎の集団が俊の持つ空想召喚の能力を認識していて、その中の1人が俊同様の様な能力を使い作中ゲーム「エターナル・ファンタジア ?」のヒロインである「召喚士・ナギサ」を現実化して俊とロザリーに向けてけしかけてきます。ですがナギサは性根は優しい為、俊を無理矢理撃破し捕らえたりするのが嫌で、自身の召喚者に俊を自分の召還獣として契約する事で事態の収束を図る事を提案。期限付きで承諾されます。そして始まるナギサとロザリーによる俊を巡った騒動。ロザリーもそれに対して自分も俊と同じように学校に行く事にしたりと色々と行動を始める。ロザリーの編入試験のためのテスト勉強をする話や、ナギサと俊がデートをする話、ロザリーの学校生活の話、そして期日になり、戦う事になるロザリーとナギサ。俊への想いの変化に戸惑うロザリーは、満足に戦えず、ついには呪文も必殺技も使えない状態でナギサの最強の召還獣と戦う事になる。果たしてその結末はどのように?といったところです。
今巻は明確なライバルの登場により、ロザリーが俊への気持ちを少しだけ認識する巻ですね。ナギサにくっつかれて照れる俊に対して無自覚に我慢しているロザリーがいじましかったです。
所謂精神的な攻めでのロザリーの葛藤と自己納得、行為、行動は、高みから見ている視点としては「そろそろ気がつけ!」と言わんばかりの俊の鈍感さでした。
総評して、「幼すぎたロザリーの精神性の成長の巻」ですかね。
ロザリーが心惹かれる相手(=俊)に直接ぶつかる事で気を惹こうとする相手(=ナギサ)が登場した事により、ロザリーが純粋で子供のように「みんな好きだからみんな幸せがいい」という判断から、また一歩新しい精神性「でも譲れないものもある」を得るまでを書いているというか。
ゲームその存在として現実化し、非常識極まりない行動ばかり取っていたロザリーが、また一歩現実の存在としての精神性を獲得していく様は、娘/息子を見ている気分になりますねー。