S=Fリプレイ フォーチューンの海砦・上

セブン=フォートレス リプレイ フォーチューンの海砦・上巻

菊地たけし先生のTRPGシステム、『セブン=フォートレス』シリーズの通称『砦リプレイ』のシリーズの第2段。ですが、刊行は既に「アルセイルの氷砦」「フォーラの森砦」「フレイスの炎砦」「リーンの闇砦」にこの「フォーチューンの海砦」を加えて第5段までが順不同で出ていて、この5月末には最新の第6段もファミ通文庫から「ラ・アルメイアの幻砦」も上下巻で出ます。
この第2巻にあたるフォーチューンの海砦、かつては『セブン=フォートレス』が現在最新版の『セブン=フォートレスV3』の遥か以前。まだV3の前段階である『Advanced』のさらに前の『クラシック』のまだ前。セブン=フォートレスVer.3.30や3.31くらいの頃に今は無きTRPG雑誌『RPGマガジン』にて連載され、ソースブックに収録されたのを最後にその存在は知られていてもソースブックが廃刊状態で読むことが出来ない、という数年前程度からリプレイの存在を知った者にとっては幻のリプレイだったわけですが。今回の発刊でとうとう新参者にも目にできる存在となったわけです。
さておき内容については。
今回も『世界滅亡の危機』を主人公パーティーが解決するという、菊地たけし先生のリプレイとしてはお決まりなパターンなのですが、上巻の作品あとがきで書かれていたのですがこのパターン、この『海砦』から既知のものとなったそうで。そういう意味で、きくたけ世界の始まりとも言えるという事で現きくたけワールドのスタート・ラインといった感じの作品でもあるそうですね。
ストーリー展開は魔法使いと神官と戦士と盗賊紛いの軽戦士のパーティーを第1パーティとして、アルセイルの氷砦で猛威を振るい世界に蔓延った「闇の宗教」の残党との戦いから入り、その戦い終了後にプレイヤーの関係で新PT結成。転職して召喚士なった魔法使いと、前回と同じ神官に、新しいメンバーの格闘士を加えた3人PTに半NPCの+αで残りを進めていく、という形ですね。
当時の状況と事情が鑑みられるというか、長いリプレイ掲載期間のためにかプレイヤーの都合がつかなくなるという、とても驚きの理由でパーティーメンバー交代となっているのはこの時期、TRPG黎明の時代と呼ばれる氷河期が影響なんでしょうね。その辺りを思わされてホロリと涙ですよ。(笑
使用システムも未完成のTRPGを作りながら使っているという感じで、既にある魔法を選んで習得するのではなく読者投稿から選んでみたりステータスを吟味しながら新作成したりとしていて、手作り感があります。が、そのためにLvに見合わぬ威力だけ凄い魔法が使えたり都合の良い魔法があったり、この時に使われていたパーティーメンバーくらいしか使い道の無い魔法が出ていたりとハチャメチャ感が強いので、好みはかなり強く別れてしまいそうですね。
この巻は上巻ということで、第1パーティーでのリプレイが中心ですがそういった手探り感が凄く強いので、シナリオとしてはあまり奇抜なところは無いですね。所謂普通の冒険物みたいになっているというか。遺跡に財宝探し→それを狙って出てくる盗賊→財宝を持ち帰ったら盗賊ボスが「財宝よこせ!」とやってくる、みたいなありがちな流れです。
そこから財宝を巡って下巻でいよいよ本格的な『世界滅亡の危機』と戦うとなっていくのですが、その辺りはまた下巻の感想で〜
総評して、この巻は「やりたい放題し放題リプレイ」といった感じで。
プレイヤーが作った魔法をGMが認めれば作品内で使用可、としていたり、名前が当時を思わせる古いインスピレーションから得ていたりしていて、手作り感&懐かしさとがありますが、そのぶん読む人を選ぶ作りにもなっているとも思えますね。その辺りは歳若い人にはキビしい作りになっているかと…