クインテット!1

クインテット! 1 (GA文庫)

クインテット! 1 (GA文庫)

クインテット!①

著者・越後屋鉄舟先生。挿絵・せんむ先生による新シリーズのようで。私は読んでいないのですが、著者の越後屋鉄舟先生は過去にGA文庫で昨年8月頃に発売された「花守」という作品を書かれていたようです。
いわゆるボーイ・ミーツ・ガール的に始まる物語というには色々と種類があって、幼馴染の誰それと突然同棲同然に同居する事になったとか、突然親が決めた許婚が遠方から来たとか、小さい頃に仲の良かった子と再開して始まる物語とか、ある日親の再婚で出来た血の繋がらない妹と一緒に暮らす事になったとか、有名なアイドルと同居生活をする事になったとか、バリエーションは色々あると思うんですが。この「クインテット!」はそれらを全部纏めてぶち込んだ、みたいな感じですね。(笑
構成としては、主人公である椿敬介を中心にドンドン女の子が集まってきて、敬介を巡ってドタバタとやらかす―――まぁそんな感じでしょうか?
単身赴任で国外に出る両親についていくわけには行かず、お隣さんだった椿家へ半年間の居候をさせてもらうことになっていた涼原ひだり。そんなひだりがやってくるその当日に明かされた敬介の父、椿楽太郎の再婚で出来た新しい家族、新しい母親の椿(旧姓:早乙女)余韻と余韻を母に持つ娘の椿(旧姓:早乙女)小唄。さらに翌日、京都のそっち系の組の跡取りで敬介の許婚として昔にうっかり楽太郎が決めていた『京都玄龍会』三代目遠野左膳の娘、遠野操。世界的商社赤嶺グループの本社、レッドピーク社の社長令嬢であり幼い頃に敬介と親交があり、今もまだ敬介を慕って家を飛び出してきた赤嶺遊恋子。そしてそんな形で4人が揃った後で突然楽太郎が連れて帰ってきた、現役アイドルで何故か『変身アイドル』の陣内ツバメ。この5人が敬介の周囲に集まってきてようやく話がスタート、といった感じです。文字通りの五重奏<クインテット>ということですね。
話の流としては先も書いたこの5人のヒロインが集結するまでと、ヒロインの1人の小唄が何故敬介と家族になることを承諾しただけで無く敬介にベタ惚れなのかの話と、敬介が試験勉強を逃れる為に合法的に試験問題を取得することができる学校側の試みに挑みそれに付き合ってヒロインたちも大変な目に会うという話の、3部構成かと。
この作品は、主人公の椿敬介がこういったハーレムものでは珍しい、自己が強く主張も激しく見た目にも印象をつけているキャラクターですね。喧嘩っぱやくて粗雑。でも優しさを持っているといういわゆる「好漢」というタイプで、ハーレムものの主人公にありがちな自己主張の弱く周囲に流されやすい「優柔不断系」でないところが新鮮でした。
ただ登場人物の多さ=書き込み、表現の不足 にもなりがちになりやすい例に洩れず、この作品もキャラクターひとりひとりが他作品ではヒロイン級の特徴持ちばかりでありその為この第1巻では「義理の妹」である椿小唄と「変身アイドル」の陣内ツバメくらいしかその特徴をクローズアップされていない感じですね。ツバメでも「変身アイドル」というあまり無いその特徴のインパクトで印象が強いくらいで。
総評して、まだはじまったばかりということで話が進んでいない感じが強いです。特にメインストーリーみたいなものは無く椿一家と周囲の人たちによるドタバタコメディ劇、といった感じで。これからのキャラクターの魅力の掘り下げに期待、といったところでしょうかね。