EX!2

EX!2 (GA文庫)

EX!2 (GA文庫)

EX!2

著者・織田兄弟先生。挿絵・うき先生。著者のペンネームは2人一組の作家名だそうですから、書くなら「織田兄弟先生方」のが正しいのですかね?(´・ω・`)?
「EX!」シリーズは変身学園バトルアクションもの、というジャンルどころでしょうか。
いわゆる特撮ヒーロー的な姿の主人公で、変身できるようになったばかりの弱い主人公が少しづつ強くなったり、仲間と協力して強敵に勝つと言う王道的な設定と展開がミソですかね。
ただし、このEX!シリーズは視点が正悪逆転しています。
主人公こと大和一哉が所属するのは元・悪の組織の改造人間たちが経営、運営する学校施設。そこに通うのは悪の組織に所属していた怪人たちの2世―――子供世代ばかりで、世間に「改造人間」そのものは悪ではないと認知してもらうべく、日夜ボランティアしたりして努力している。そういった学園です。主人公はそこに、ヒーローと悪の大幹部との間に生まれた子供として所属し、改造人間としての姿「エクステンド」ではなく、ヒーローである父親から受け継いだヒーローとしての姿「エクスター」として存在する、という「悪人たちの中にいる正義の味方」的な見た目での苦労とか対立と和解を、このシリーズは書いていっていますね。
今巻は「コウモリ女」こと甘いもの好きな改造人間、小森羽月の登場で。前巻が「蜘蛛女」の登場でしたから、改造人間の登場パターンとしては正に王道の順序ですね(笑
とあることを秘密にする為、学園から離れて活動していた羽月。だが学園に来た羽月は、自分たち改造人間の敵、エクスターである一哉がいることで一哉に対して突っかかっていく。対立する一哉と羽月。そんな折、大雨での土砂崩れなどに対する復旧作業のために学園生が郊外へと出て行くことになる事態が起きる。だがそれは、羽月が秘密にしようとしていたことが原因で起きた土砂災害だった。羽月が隠そうとしていた事とは。土射災害の原因は。一哉は羽月を救えるか―――と、いったところで。
今巻では親子愛が強く描かれていましたね。羽月の深い愛情からきた災害。かつての悪の組織の被害者である羽月の親を、いかにして一哉や羽月たちが救うか。「救う」という意味の持つ重さ―――そういったものが最後にもう一度考えられる物になるかと。
また、主人公としての一哉も一段階も二段階もパワーアップしていて。
前巻では未熟すぎた戦闘方法を実力者であり蜂型改造人間である峰音十季子に指示して修練し、そして自身の性能的に間違った使い方をしていた「変身」のシステムを、その間違いを羽月に指摘されて改善してさらに力量アップ。基本能力と技術。この二つをパワーアップしていて着実に主人公として強くなっていってますね。
システム的というか、そういったところも色々と手が込んでいるのもこのシリーズの魅力でしょうか。往年の特撮番組の如く決め台詞や変身ポーズなどがありながらも、それにもまた意味があるとして読んでいる方に納得させ、その上でそのシステムを妨害する必殺技を持っていたりする事で改造人間に特色を出したり、変身後の「強さ」に差が出来たりと。なかなか上手い具合に手が込んでいます。
総評して。この巻は「親子愛と悲しい技術の産んだ被害者の巻」といった感じでしょうか。
どうにかして救おうとする羽月。救えない現実。それの元となった非人道的とも言える悪魔の発明。過去から現在にまで続く悪夢。それら全てを、一哉と現在の改造人間たちは打ち破り悪夢を晴らせるか―――
過去と現在の対決。その結末は決して全てが幸せではないけれども、だからこそわかることもある。と感じられて、深いものがありますね―――