七人の武器屋2

七人の武器屋2 結婚式をプロデュース!

七人の武器屋シリーズ第2作目。著者・大楽絢太先生。挿絵・今野隼史先生です。
この巻は前作の約3ヵ月後、エクス・ガリバーが開店3ヵ月を迎えた頃の話になります。
前巻で少し触れられていた、エクス・ガリバーのオーナー・メンバーのひとり、七人の良心ことノン。彼女の結婚式に纏わる話がメインで。恋人との結婚式を控え、もうじきエクスを辞めることになっていたノン。しかし、突然結婚式場として想定していたフランの名所『サンク・マリカ大聖堂』から結婚式を延期してくださいと言うお達しが。どうやらどこかのお偉いさんが関わってきていて、そのせいで大聖堂が使えなくなった為に結婚式自体が延期と言う話になった模様。しかも、大聖堂を結婚式場として使うこと自体をそのお偉いさんがしばらく禁止し、さらにサンク・マリカ大聖堂に住み着いたから話はややこしく。サンク・マリカを個人的に所有する為に20億ドルクを貯金しようとしているオーナー・メンバーのひとりイッコが激怒し、お偉いさんのところへ乗り込もうとしたり、ノンがお偉いさんのところへ交渉に行ったらそのままなかなか帰ってこないとなったりと、問題が次々と。果たしてノンは、恋人のデクと結婚式を挙げられるのか?サンク・マリカに住み着いたお偉いさんはいったいフランに何をしに来たのか…? といった感じで。
お偉いさんは何をしに来たのか、と書きましたが正体は13歳の子供で名は『ホリィ・ライブウインドウ』。実家である大商店・ライブウインドウ家のしきたりでひとりでライブウインドウ系列に入る契約店を100店加盟させないといけないというものに挑戦中で、そのためにフランに来たとなるのですが。もうこれが凄い親バカによる世間知らずのボンボン馬鹿。そう言う演出というかキャラクター作りは作者先生お見事だと思います。言動からなんだかむかついてくるし、ノンの母性的優しさを感じればそこに付けあがって来るし、エクス・ガリバーがライブウインドウ系列への参加を拒否すれば交渉では金で何とかしようとするし、駄目だったらまた金の力にあかせた物量作戦でエクス・ガリバーを閉店させようとするしで、全て金で解決できると思っている典型的な金持ち馬鹿の姿がそこにあります。
ですがその分、この話の盛り上がりどころであるクライマックスがカタルシスを強く感じられましたね。
ノンをやはり我侭で帰そうとせず、あまつさえそのまま攫うように2人で南の島へ旅行に行こうとしたりするのですが、そこにエクスのメンバーが突入。それぞれのマイ・ウェポンなどを駆使しながら金をかけて用意したA級ドラゴン並と言われるガーディアンの特注マジック・ドールやらを撃破して行く様は、ホリィに対するむかつきをスカっとさせてくれましたね。
そういったストーリー的な盛り上がりが、徐々に溜めていった鬱屈を一気に晴らすようで壮快でした。
またエクス・ガリバーのオーナーメンバーたち…いわゆる主人公たちも、前巻同様のノリと勢いで進んでいってる感じでそれぞれのキャラクター性がよく出ていましたし、前回で少し影の薄かった看板娘・ミニィも3ヵ月の間に修行してきた事になっていて高速の武闘家として岩を砕く拳と残像を残す動きを身につけたりしていて、キャラ立てが派手になっているのも印象的でしたね。前巻の分で目立たなかったメンバーにてこ入れ…それを忠実にこなして『七人の武器屋』というのをより強調していたりと。
総評して、この巻は「ノンの結婚式を成功させるまでの話」です。
困難による問題提起と、それを壮快に解決してハッピーエンドなラストを迎える…そんな、ストーリーの作りとしてはありがちなものにノリと勢いで真正面から挑む。そして成功する。奇抜なトリックや読んでいて驚かされる展開などはありませんが、その分、正統派ストーリーとでも言う物を楽しめる。そんな一冊だったと思いましたね。