神曲奏界ポリフォニカ白3 ミッシング・ホワイト

神曲奏界ポリフォニカ ミッシング・ホワイト

シェアード・ワールド・ノベルス「神曲奏界ポリフォニカ」の、白シリーズで赤や黒の過去の話が繰り広げられるその第3巻。今巻は、前巻の続きと言った感じです。
ストーリーは、精霊たちの力が弱まる日食の時が迫る中、精霊島学院の生徒たちの契約精霊が次々と姿をくらます。それだけでなく、普通の精霊たちの姿も見えなくなりつつあった。そんな折、スノウはミナギ・クロードから聞かされた言葉、「ブランカ異世界から君をこちらに連れてきた」という言葉にブランカへの信頼と疑心とに板挟みになっていた。そんな中で普段と変わらず精霊を連れているスノウは、やがて学生たちから精霊失踪と何か関係があるのかと疑われ、ある時食堂で遂に問い詰められる事態になる。そしてそこで、友人と思え出していた学友、デイジーにまで疑いを掛けられる。ブランカへの疑心に重なりショックを受けたスノウは、ブランカが再度隠し事をしたことに対してついに激怒。ブランカとの契約を解消してしまう。ひとりになったスノウ。そんなスノウにミナギは元の世界へと戻る方法を囁き、スノウを精霊島にある立ち入り禁止の湖へと誘うのだが…果たしてスノウは元の世界へ戻ってしまうのか?ブランカがスノウにしている隠し事は…?と、いった感じで。
この巻はそれぞれの楽士と精霊との信頼を試されている巻ですね。
スノウとブランカ、ジョッシュとリシュリーティンク、ミナギとセイレーシアの3人の信頼が、それぞれ最後に結果となって出てきている、と。
かつての思い出のボウライと今のリシュリーティンクとを繋げられずにいたジョッシュ。自分のことを覚えていてくれていないと思い、しかしジョッシュの傍にいたかったリシュリーティンク。
ジョッシュを助けたいと願い、全てをジョッシュに打ち明けてジョッシュの力になったリシュリーティンク。だがジョッシュの誇りある神曲楽士でありたいという思いから、今回はお互いをきちんと知り合ったという進展のみ。
ブランカを信じようとして、しかし激情から契約を破棄してしまったスノウ。スノウにかつての契約者の姿を追い、未だ過去に縛られていたブランカ
この2人はしかしその深い信頼から最後にはまた、元の鞘に収まり。
ただ自分を必要とする世界を欲したミナギと、孤独に震えていた世界で見た一筋の光明だったミナギを何処までも慕うセイレーシア。
最後には望む世界へと渡ったが、そこは精霊のいない世界ゆえに、セイレーシアを失う事になったミナギ。
精霊との信頼関係が、そのままそれぞれの進展として現れていましたね。
信頼を突き通して歩み寄った、ジョッシュとリシュリー、スノウとブランカ。信頼ではなく、『利用』の関係だったが故にその道が分かたれたミナギとセイレーシア。とても対照的に描かれている主人公側と敵役側だったと思います。
そして着々と進んでいく重要そうな出来事。
赤の聖獣・エリュトロンによる赤の創想楽器の強奪と、怪しい雰囲気で異様な神曲を奏でるも普段はその片鱗も見せることのないプリムローズ。赤の女神としての力をまだ保っていた頃のコーティカルテの再度の登場など。今後の刊行で重要そうな用件が多かったです。
総評して、今巻は前述の通りですが楽士と精霊との「信頼」に重きを置いた話だったかと。その形も様々で、擦れ違いなどが生む摩擦も終わってみればカンフル剤だったりしていて色んな形式があるのだな、と思えましたねー。
あと蛇足ですが。紫の聖獣・メリディアと一緒に出ていた「ラグ」というのはやはり、黒ポリの主人公であるマナガの過去の姿なのですかね?「マナガリアスティノークル・『ラグ』・エデュライケリアス」がマナガの本名でしたから、その繋がりですかねぇ。あまり喋らなかったのは黒ポリのマナガが負っている「罪」をまだこの時には背負っていなかったから?とか…
と、考えたり。こういう考察の楽しみがあるのは、シェアード・ワールド・ノベルスという形態の楽しみのひとつですねぇ(^^