神曲奏界ポリフォニカ黒4 トライアングル・ブラック

神曲奏界ポリフォニカ トライアングル・ブラック

巨漢の精霊警官マナガと、神曲楽士警官マティアの2人組みが主人公になるポリフォニカシリーズ「黒ポリ」の、第4段作品。
毎回事件ないし事故が起き、それに巻き込まれたり警官として事件担当したりしてストーリーが進んでいく形式の黒ポリ。今巻では、前述の「事件」によるストーリーの進み様でした。
かつて著名だったが現在は引退し、細々と暮らしていた神曲楽士が何者かに殺害される。第一発見者の目撃情報から、被害者のかつての契約精霊である上級精霊、「レオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダン」が重要参考人として上げられ、彼を調べた結果、マティアとマナガはレオンに会い話を聞こうとする。
その頃レオンはひとり、活動していた。ある時は警察署に搬送された被害者の下へ、ある時は被害者の葬列の場へ。その意図は…?そして、彼が本当に犯人なのか…?
レオンと会ったマティアとマナガ。そのマティアに、突然の申し出をするレオン。その真意は。そして事件の真相は…?といったところで。

この巻は、新キャラクター、レオンのお披露目、といった感じがありますね。
神曲と言うものに対するスポットは今回は薄く、ブルース・ハープやマナガ自身が精霊として活躍するところはラストの大詰めくらいしかありませんでしたが、その分、「精霊」というものにスポットライトが当たり、その掘り下げがとても強調されていると感じられました。
神曲楽士と精霊との間で交わされる契約。レオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダン上級精霊はそんな契約に対してどこまでも実直で、例え契約を切ろうとも一度交わった運命の糸を決して蔑ろにはしない。それは彼の優しさの証。伊達男に見え、軽薄に見え、精霊らしくない精霊に見える、レオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダン
だがその実、彼ほど楽士を愛し、神曲楽士を、契約者を大切にしている精霊はそうはいない…そんな、不器用だが溢れ返らんばかりの純粋な愛情を、レオンという精霊からは感じられました。
上級精霊であり、生きてきた年月が途方も無いレオンにはかつての契約者は多いが、その全てを今でも愛し、その全てを記憶しているレオンというキャラクターは、現代の軽薄さが目立つ風潮に真正面から吹く逆風のようですが、そのキャラクター性と相まってとても魅力的に感じられました。
そして最後の結末で、マティアやマナガに今後協力する立場、と言うことで落ち着いたレオン。今後の刊行でも彼と言うキャラクターの活躍に期待が寄せられます。『熱い漢』として、またマナガとマティアのベストコンビの間に使われる、活性剤として…。