リリアとトレイズ6

リリアとトレイズ6 私の王子様<下>

人気シリーズ「アリソン」の続刊シリーズとして刊行された「リリアとトレイズ」シリーズの最終巻かと。
王族であると言う自分の出自を隠している主人公の1人であるトレイズと、「アリソン」シリーズの主人公ヴィルとヒロインアリソンとの間に生まれた子供であるもう1人の主人公リリアとの交流を書いたこのシリーズも、ついに最終巻の様子です。
毎回事件、事故に巻き込まれながら手を尽くして解決に至るという体裁のこのシリーズ。今巻は前巻の続きものです。
前巻、旅行に出たアリソンとリリアの母子は、列車を使っての旅行中、お忍びで旅行中だったマティルダ王女と知り合いその案内役として引っ張り出されていたトレイズや「アリソンの恋人」たるトラヴァス少佐とも合流する。だが、やがてそこで起きる列車内殺人。安全を考慮したマティルダ王女の護衛として同行していたトラヴァス少佐は、リリアやトレイズを初めとする他の客も含めた全員と別行動とする事にする。だが犯人は、その様を見ていてこう言うのだった。「全て予定通り―――」。果たして、犯人は誰なのか。そして狙いは…? と、言った所で。
シリーズ最終巻ということで、とうとうトレイズがリリアに自分の出自に関して告げるシーンがあったり、トレイズのフルネームが明かされたり、トラヴァス少佐が最前線を引いてアリソンとの今後に関して考慮し始めたり、これまであまり出番の無かったアリソンが飛行機に乗って活躍したり、と、纏めというか、これまで振りまかれてきた「やきもき」の種が採取されていっている感が強かったですね。
ストーリー的には列車で起きた事件の続きということで、引き続いて走行する列車をメインステージとして進んでいく形です。止まった列車を包囲するテロリストたち対トラヴァス少佐の隊と隊員たちによる銃撃戦、走行する列車でのトレイズと犯人との立ち回りなど、全ての場面に列車が関係して登場するという状態ですね。とはいえ、走行感というか疾走感と言うか、そういった緊張感的なものは少ないですかね。キャラクター間の会話に意識が引き寄せられることが多いためか、映像的に言うと『引き』で見る疾走感を感じる感覚よりも、クローズアップされてキャラクターを見ている疾走感は二の次という感じが強いと言うか。
でもこのシリーズはキャラクター同士の会話が一番見所の多いシーンです。
列車上でのリリアとトレイズと犯人との会話。マティルダ王女を前にした時のスー・ベー・イル人の態度。トラヴァス少佐と法務大臣との冷徹な駆け引きの会話。など、今回も見所が多いです。また、「アリソン」シリーズも最終巻は列車での事件でしたので、その辺りの意識もあるのかな、と思いました。
総評して、この巻でシリーズ最後と言う事でかなり色々と巻かれていた伏線は回収されています。そういったカタルシス的な感覚が強いです。
しかし、ココからさらに続けられるようにもなっているので、話としてはきっちりと纏めてひとまず終了、と見える形で終わっているのが上手いですね。想像の楽しみが残っていると言うか。
このままリリアとトレイズの子供たちの話〜とかにもなったら祖父母親子と三代続くということで面白いかなぁ、とか思ったりしてしまいますよ。