ポチのウィニングショット

ポチのウィニングショット

古本屋で買ってきた本の1つでGA文庫。作者先生は他にMF文庫Jなどで「不思議使い」とかファミ通文庫で「だめあね」とかを書いておられます。
この作品は1人の女性の成長の物語。
ストーリーは、世界的に普及し始めているがまだ知名度は低く関連施設もそう多くは無いバーチャル・スポーツである『スフィアボール』を舞台に進んでいきます。
スフィアボールを偶然観戦することになった主人公である「犬塚星子(いぬづか ほしこ)」こと愛称ポチは、その観戦した時のプレイヤーである「黒崎駿吾(くろさき しゅんご)」に一目惚れする。黒崎に近づく為に自分もスフィアボールを始め、黒崎の指導の元で少しづつスフィアボールを知っていくポチだが駿吾は超のつくスフィアボールバカの朴念仁。ポチの気持ちには気がつかず、ただ純粋にポチのコーチを続けポチも現状に満足を覚えつつありそれ以上は踏み込めない。だが、やがて迫る大会の日を前にして黒崎とポチの関係に変化が。試合に専念するため、ポチのコーチを止めて別の練習場に行ってしまう黒崎。自分の気持ちがまったく通じていなかった事にショックを受けたポチは親友、ナナの助言も受け、本気でスフィアボールに挑み始める… と、こんな感じで
この作品には基本的な舞台として「スフィアボール」という架空の競技があります。これの描写がやはりキモだけに多くなるのですが、そこで混乱せずにイメージできるだけの読解力が求められる作品ですね。
巨大な球体の中という仮想空間で、CGで出来た自分や相手とこれまたCG製のボールを取り合い、自分のゴールの真逆にある相手のゴールにボールを入れることを競う競技、スフィアボール。細かな説明は巻頭に漫画入りで書かれていたりして親切設計ですので、あとは作中で読みながらイメージできるかどうかでしょうね。
総評して、この作品はひとりの引っ込み思案だけど負けず嫌いな女の子が、惚れた相手に振り向いてもらう為にひたむきに駆け抜ける作品ですね。
物語自体は読みきり形式というか、最後まで行ってそこで終わってしまうタイプですがそれだけに色々なところが綺麗に纏められています。ポチと黒崎の関係、スフィアボールに対するポチの感情、など。
この作品は読む人がスフィアボールのイメージを的確に掴めるかどうか。それが評価上で分かれそうな予感です。
イメージできない人から見ればただのちょっとした恋愛要素を混ぜたスポ根熱血小説。
イメージできる人から見ればスポ根熱血だけど、その下にはスフィアボールという競技が知略戦でもありその辺りの駆け引きなんかも見れる。そういった作品だと思います。