ぼくと魔女式アポカリプス2

ぼくと魔女式アポカリプス〈2〉Cradle Elves Type (電撃文庫)

ぼくと魔女式アポカリプス〈2〉Cradle Elves Type (電撃文庫)

ぼくと魔女式アポカリプス2

約1年ぶりの新刊になる、水瀬葉月先生のシリーズ第2段。
『滅亡した種族』の為に『一度死んだ人間』である主人公やヒロインを蘇らせ、『代替魔術師<ポステリオルマギス>』として戦わせる『導き手<ナビゲータ>』たち。
この作品は、基本そういったスタンスから始まります。要は代理戦争ですね。
主人公は宵本澪。『翼人』の代替魔術師で、『顕化』という変身をすると、翼のある女性という姿になり『祝福魔術』という自身の運と引き換えに物質のを強化したりできる魔術が使えるようになります。
ヒロインは砧川冥子。『魔女』の代替魔術師で、顕化すると鍔広の帽子を被り黒い特徴的な魔女装束を見に纏った姿となり、自分に傷をつけた分だけ威力を発揮する『代償魔術』が使えるようになります。
第1作目では、この澪と冥子が互いに敵同士から同名を組むまでと、第3の代替魔術師である『ドルイド』を倒すまでが描かれており、今巻である第2作目では、そのすぐ後からの話となります。
今巻の敵は『正義の味方』。全ての存在を『正義』か『劣悪』かで分断し、『劣悪』を徹底的に抹殺しようとする代替魔術師が相手です。
『正義』とは何か。深く突き詰めてみればその行為は『正義』なのか。『劣悪』とはどこまでが『劣悪』なのか。『劣悪』に対して『正義』の意味とは…と、単純ながら深く考えさせられるものがテーマだと感じましたね。
そんな『正義の味方』の能力に、冥子が無力化されてしまい澪が1人で立ち回ることになり、澪は前回の代理戦争での生き残りで、今は現在の代替魔術師たちに、導き手たちが知らせていない可能性を示唆するという事をしている『エルフ』の代替魔術師、レンテンシア・イズラデリと協力して『正義の味方』に挑む事になります。
前回の代理戦争から経過した長い時間に、体の維持が限界になっていたレンテンシア。そんな彼女と協力しての戦い。可能性の示唆を『導き手』たちに知られないように伝える、と言う、導き手たちと一心同体の代替魔術師を相手に為すには難関なこれを、前回の代理戦争時からずっと続けてきた彼女は、この巻での戦いで遂に最後を迎えます。
最後の戦いに挑む者は、クローズアップされる。
そんなお約束を踏襲している、とでもいいましょうか。その為、この巻ではレンテンシアがかなり出番が多いです。戦い、日常の両面でレンテンシアと澪の会話が随所に挿入されたり、レンテンシアの使う『刻印魔術』が戦闘において重要な要素を担ったりと、今巻ではレンテンシア無くては始まらない所も多かったかと。
総じて今巻は、澪の第1巻での決意との改めての対峙と、<エルフ>レンテンシアの最後の戦い、となります。
正義の味方の『正義』と『劣悪』の狂った定義と、私たちの価値観との相違は、一種ジレンマとなって読む間にもやきもきとさせてくれました。
ライトノベルながら文が長い事が多いのと、ルビ振りによる強調が多かったのがやや目に付きましたが、読むと深いものを感じさせてくれる作品ではないでしょうかね。