文学少女と餓え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

文学少女と餓え渇く幽霊

文学少女〜シリーズの第2段。
今巻は終始オカルトな雰囲気の漂うミステリーというか、謎になっていて見えない部分が幽霊の仕業として表現されていたり、暗号が登場していたりして、読者に謎解きの楽しみがありますね。
ストーリーは過去から現代にまで続く、愛憎渦巻く葛藤劇。ヒロインの拒食症少女、天宮蛍と、"文学少女"の義弟の櫻井流人、蛍の後見人の黒崎保、そして故人である蛍の母親の九條夏夜乃たちの人間関係が、複雑に絡み合って繰り広げられていきます。
また、心葉や遠子先輩などにもちょっとした見所もあります。
心葉は過去の、美少女天才作家としてもてはやされていた頃に起きたまだ作中では語られていない事件らしきものの一端を垣間見えますし、遠子先輩は"文学少女"の弱点が露見します。ちょっとしたことですがこういった所からキャラクターの魅力が掘り下げられている感じですね。さりげなく、心葉とクラスメートの女生徒、琴吹ななせとの関係にも動きがありましたし。琴吹は心葉の過去を知っているようですけど、現状の作品を書かない心葉を不満なのかいつも怒っていますが、その実はかなり気にしているようですしね。すごいツンデレです。(笑
総評して、この話は昼メロとか並にドロドロとした感情が渦巻いていて、それを起因に人を刺したり一種虐待にしか見えない偏愛とかが出てきたりすることもありますので、前巻よりはとっつきにくくなっているんですかね。でも、キャラクターに魅力があるためかストーリーにぐいぐいと引き込まれる力があると思えますので、変わらずにお勧めできる一品だと思います。さらに、今回の話は2度楽しめますね。読者が話中で明かされる暗号を読めるようになる前と、後とで。暗号自体は極最初に出てきますので、その意味がわかっているのといないのとではそれぞれの情景で感じる事も変わるかと。