アスラクライン14

アスラクライン14 The Lost Files

著者・三雲岳斗先生。挿絵・和狸ナオ先生。著者の三雲岳斗先生は角川スニーカー文庫で「ダンタリアンの書架」シリーズなどを出されていますね。
・シナリオ
次元の狭間に迷いこみ、非在化した街を彷徨い続ける智春と操緒。“神”の破片が降り注ぐ世界で出会った謎の少女が、彼らに告げる。お願い、和葉を護って、と―一方そのころ苑宮和葉は、洛高の入学式の日を迎えていた。おなじみの仲間たちの秘密の過去と、それからの未来を描く新たな物語。 (Amazon商品紹介ページより抜粋。)
・感想
感動の最終話を迎えた第13巻。その後日譚を主人公を智春の義理の妹・苑宮和葉の視点で書かれると同時に、智春や操緒がまだ「向こう側」に行く前に起きたちょっとした騒動や事件を描く、というのがこの巻の話になります。つまるところ短編集+あとがたり、といった感じですね。
話の内容は和葉が洛芦和高校の入学をきっかけに、智春の足跡を追うように智春の知人たち―――アニア、朱浬、佐伯兄妹、佐原ひかり、樋口、杏、そして奏に出会い、智春の話を聞いていく―――という流れの合間に、智春と操緒が経験していた過去の出来事を短編形式で綴られていくというもの。その中で和葉は智春を知り、智春と操緒は智春と和葉の「一番初めの出会い」を経験する、という流れになっています。
この巻で色々謎な存在だった苑宮和葉についても説明され、いよいよもってアスラクラインの物語の終焉となる感じがしました。特に、和葉が操緒が見えなくても存在を信じる理由、和葉だけに見える幽霊の咲華。彼女が何者なのかということが説明されていて、物語に関わらずアスラクラインの話の外にいる、という感じで居ても居なくても変わらないと感じられた和葉も、実は大事なアスラクラインという物語に深みを出すファクターだった、ということが納得できましたね。
智春と操緒の話としては、智春と佐伯玲子が旧校舎で猫探しをしていてある騒動に巻き込まれる話と、生活資金を稼ぐために参加したフリーマーケットで呪いの人形に付きまとわれて大変な目に会う話、事故で操緒と奏の意識が入れ替わっている時に奏の祖母が来てその対応でてんやわんやする話、そして『デウス』との戦いに赴き世界を越えた智春と操緒がそこで咲華と会い、過去で和葉と出会い彼女を守る―――そんなタイム・リープ的な話の4つです。特に最後の和葉との出会いとなる話は、咲華という存在が何だったのかが語られたりするもので、読み応えがありました。
そういうわけでこの巻にてあとがたりも終わり、アスラクラインの物語は完全に終焉した、という感じでした。和葉を主人公にしてのアスラクラインの物語、というのも不可能ではなさそうですが、あとがきにおいて著者である三雲岳斗先生自身も「「アスラクライン」シリーズはこの巻で一応の区切り」「この後の予定は完全に白紙」と書かれていますし。
アニメ化もされた「アスラクライン」シリーズ、これにて終幕です。