魔王さんちの勇者さま2

魔王さんちの勇者さま2 (徳間デュアル文庫)

魔王さんちの勇者さま2 (徳間デュアル文庫)

魔王さんちの勇者さま2

著者・はむばね先生。挿絵・ばっじん先生。この作品は「エッジdeデュアル新人賞」で「特別賞」を受賞した作品の続刊です。はむばね先生は他の著作として「スクエア・エニックス・ノベルス」で「スタンプ・デッド」シリーズ、「太陽で台風」という作品を出されているそうです。
・シナリオ
8年ぶりに魔王の娘、サフラの世話役に復帰した勇者の澄人。しかし、かつての敵だったルビィが後任として世話役になっていた。同じ女性ということもあり、8年ですっかり親密度を増しているサフラとルビィ。また、サフラが成長したことにより、澄人にできる仕事も減ってしまった。自分が世話役をする必要性を感じなくなり、魔王デルファイに世話役を解任してもらいに行く。そのとき、玉座からまばゆい光が。その光の中から現れたのは、澄人の幼なじみの撫子だった―。 (「BOOK」データベースより)
・感想
この巻は、きっちり終わった1巻の続編という形の2巻目なんですが、正直残念な形での刊行かも、と思わざるを得ません。
まず、1巻ヒロインだったサフラ姫が8歳から8年経って16歳の少女となっています。「小さなお姫様とそれに振り回されながら交友を深めていく主人公」という部分が魅力の一端だった1巻と比べると、普通の異世界ファンタジーブコメみたいになっていてなんとも…正直、凡百な設定になってしまっていないか?と考えます。
シナリオに関しては、前巻で伏線はりっぱなしだった部分を回収したり出番があまり無かった人たちに出番を出したりしつつ、8年が経って変わった周囲に澄人が馴染んでいこうとする話がメインです。主にサフラ姫やその侍女になったルビィとの会話なんかが多いですね。それ以外に、新ヒロインとして登場する撫子。彼女を交えた澄人、サフラ、撫子との3人での恋愛模様なんかも少し。主にサフラが幼馴染で気安い澄人と撫子の関係に可愛らしい嫉妬なんかを燃やしたりするシーンが中心ですが。こういった模様も若干新鮮味がないというか、普通のラブコメだなぁ…という感じで。サフラがまだ幼いままだったら澄人と撫子の関係に嫉妬しつつ、自分では年齢が…的な、背伸びする子供の心情とか一風変わった部分で楽しめたのでは、と思うんですが。まぁそれは個人的趣味に走った、穿った意見でもあるとは自覚していますが。
ちなみにこの巻、物語的に決着つきません。悪役らしい悪役、賢者ブイヴィとかが登場して場を引っ掻き回しますが、ある黒幕の手によってピンチ!な所で『続く』となってしまっています。できればこの巻で一応の完結を見せて欲しかった…。成長したサフラや新キャラの撫子の見せ場も少ないまま、続刊というのはスッキリしませんでした。新スタイルの登場人物たちによる話がひとつ終わって、それから今回の巻の話だったら受け入れやすく、盛り上がりもあったのでは、と。
総じてこの巻は内容的な意味で少々展開が早かったのでは、と思います。無論個人的意見なので的外れな意見かもしれませんが、第1巻が綺麗な終わり方をしていただけに若干蛇足な展開というか、もう少しゆっくりとしたストーリー展開でもよかったのでは、と思った次第です。