ソードアート・オンライン3

ソードアート・オンライン3 フェアリィ・ダンス

著者・川原礫先生。挿絵・abec先生。川原先生は第15回電撃文庫小説大賞で『大賞』を受賞した「アクセル・ワールド」の著者先生で「ソードアート・オンライン」はネット上で掲載されていて大人気を博した作品、その紙媒体作品です。
・シナリオ
禁断のデスバトルMMO『ソードアート・オンライン』から現実世界に戻ってきたキリト。彼は攻略パートナーであり、想い人でもあるアスナのもとに向かう。しかし、結城明日奈は、あの悪夢のゲームからまだ帰還していなかった。困惑と絶望に包まれるキリト。唯一の手がかりは、鳥篭の中で佇む“妖精姿”のアスナという謎の画像データのみ。どうやら彼女は、高スペックVRMMO“アルヴヘイム・オンライン”というゲーム内に囚われているらしい。キリトはアスナを救うため、飛翔する妖精プレイヤーたちが交錯する“ALO”に飛び込んでいく…!!WEB上でも屈指の人気を誇った『フェアリィ・ダンス』編、スタート。 (AmazonHP商品紹介ページより抜粋。)
・感想
ついに新章開始!となるSAOの第3巻です。文字通りの新章で、番外編短編集という形だった第2巻とは違い、第1巻の後から始まる正統な続編ですね。
脱出<ログアウト>不能、ゲーム内での死亡や強制ログアウトを試みる=現実での脳死という過酷な条件による狂気のデスゲーム、VRMMOソードアート・オンライン(以下SAO)』。SAOに参加していた初期メンバーだが、誰ともパーティを組まずにいつも1人で戦う黒衣の剣士キリトは、ある時、細剣使いの剣士アスナと出会い交友を深める。友人から次第に恋人へとなり、互いに生還のためにSAO攻略の戦いに挑み続けるふたりは、やがて自分たちのすぐそばにいた全ての黒幕、茅場明彦の存在を知り最後の決着に挑む。そしてSAOでは創造主である黒幕・茅場明彦のアバターを打ち破ったことでゲームクリアーとなり、ついにキリトは2年の長い戦いを終えて、想い人の女剣士アスナこと結城明日奈と現実世界へ帰還した―――というところで感動のFin.となっていた第1巻。第3巻はそんなすべてが終わったかに見えた物語には、まだ続きがあった…!という形で始まります。
序盤から怒涛の展開で、目が離せません。SAOを攻略したのに目覚めないアスナ、明日奈の現実での婚約者だという須郷、1月後に迫ってくる明日奈の結婚話、名前だけ登場だったキリトの妹、直葉の登場、そして新たな舞台『アルヴヘイム・オンライン(以下ALO)』…。ぐいぐいと引き込まれていく面白さです。
この作品で個人的に目を引き、面白かったのはALOの世界観です。
SAOという、魔法無しで剣技<ソードスキル>に特化されたシステムで、費やした時間がレベルと化して理不尽なまでの差を他とつけていく世界から一変して、今度のALOは魔法有りのレベルはほぼ無意味、反射神経や動体視力がものをいうSAOとは対極にあるようなシステムで、キリトがどんな活躍をするのか、どんなバトルが見られるのかと期待がありました。そしてそのバトルの内容は、というとこれがまた爽快極まりない!レベル重視で高HPがあり、ソードスキルによる多様なダメージの繰り返しで相手のHPを削っていくという「相手のHPを如何に早く減らすか」というRPGのようなバトルが戦いの主流となるのがSAOなら、ALOは針の穴に糸を通すような正確な攻撃を、これまた瞬間の判断力で受け、払い、流し、回避するという究極的には「ダメージを受けないで戦い自分の攻撃は当てて倒す」というシューティングかアクションか、というような設定で、戦場での一瞬の駆け引きの連続、という新しい驚愕と新鮮な興奮を見させてもらいました。
新ヒロインについてはキリト=桐ヶ谷和人のリアルの妹・桐ヶ谷直葉が登場と、SAOでキリトとアスナの『娘』として一時期一緒に暮らしていたユイが再登場です。
桐ヶ谷直葉、彼女はまた良い味を出すキャラです。スポーツ一直線の剣道少女と見せかけてALOをプレイしていて、さらにシルフ種族では5本の指に入る実力者というプレイヤーでもあり。ある意味でリアルもネットも充実している生活をしている彼女。この設定だけでも新ヒロインとしてアスナと並び立つでしょうに、和人との関係は「実妹」ではなく本当は従兄妹という「義理の妹」設定という後押しまで。新ヒロインとして完全武装で躍り出てきた、というところですか。さらにそんな彼女がALOを始めた理由は、SAOに囚われて眠り続けていたキリトのことを理解したいという想いから。実の兄妹ではないことを知って、剣道の関係でぎくしゃくしていた人間関係を改善したいという気持ちがあったから。和人はどれだけリア充なのか。(笑
ユイに関して詳しくはSAO2巻をどうぞ、ということで。今回の彼女はアスナを救うためにキリトに協力するサポーター、という立場になります。システム的にも手のひらサイズのアバター<ナビゲーション・ピクシー>という設定を持ち、マップ参照のサポートなどでキリトを助けます。相変わらずキリトをパパ、アスナをママと呼び、立場的には2人の娘として、ストーリーを盛り上げています。
しかしアスナといい、ユイといい、シリカといい、リズベットといい、さらに今回はリーファ、サクヤ、アリシャと、和人は女性環境的に恵まれ過ぎです。いいぞ川原先生もっとやれ!(ぉ
今巻ではクライマックスで、キリトがALO最強と名高い剣士ユージーンと戦います。このシーンは見ものです。SAOで命賭けで培った経験がキリトの強さを支えますが、ユージーンもまたALOで培った経験と装備で立ちはだかります。何よりSAOのアイテムが使えないキリトはほぼ初期装備。対するユージーンは、レジェンダリー・ウェポンと呼ばれるユニークアイテム<魔剣グラム>を持つ。そんな2人の戦いは手に汗を握る技術の応酬で、読み進める手が止められませんでした。そしてラストのキリトが繰り出す、まさにSAOクリアの『英雄』だから使えた技術は…圧巻です。ユージーンに対してその技術を使って挑むシーンは、挿絵効果もあって今巻最大の見所でしょうね。
総じてこの巻は、新章突入というもので。新しい舞台、新しい目的、新しい仲間たち、新しい敵、新しいシステム…と、『新』がつく設定が目白押しです。ですがそんな中、キリトやアスナといったSAOで活躍していた一部のキャラクターはそのままで、それらのギャップが面白いです。
それに現在ではまだALOのキリトがSAOクリアプレイヤー・キリトだと知られていない状態ですが、これが明らかになった時にリーファとかサクヤたちはどんな反応をするだろう、とか、そういったお楽しみ的な意味でも期待です。囚われているアスナがどうやって須郷の元を脱出するのか、須郷が言っていた記憶操作が物語にどんな形で関わってくるのか、キリトはいつアスナと再会できるか、リーファがキリト=和人と知るのはいつのタイミングか、などなどワクテカが止まらないですー。
ちなみに残念ながら次巻は来年初夏ということで、2月〜3月ごろに出るであろうアクセル・ワールドの4巻の後の6月か7月か、らしいです。