ラ・のべつまくなし

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし ブンガクくんと腐思議の国

著者・壱月龍一先生。挿絵・裕龍ながれ先生。壱月先生は同レーベルから「Re:Alive」シリーズや「七夕ペンタゴンは恋にむかない」という作品を出されています。
・シナリオ
恋愛経験ゼロ。生真面目に純文学を志すも、希望とは裏腹にラノベ作家としてデビューしてしまった青年・矢文学。しかも著作は、ネットの口コミもあり大ヒット!メディアミックスも決まり順風満帆!…のはずが、原稿が書けない!気晴らしに、通い慣れた図書館に向かったブンガクは、そこで出会った少女・明日葉に一目惚れしてしまう。彼女はブンガクのラノベ作品の大ファンで、聖地巡礼の途中だった。仲良くなろうとするものの、ブンガクは二次元アレルギー、明日葉は腐女子で…。カタブツとフジョシの純愛系ラブコメディ。(7&YHP商品紹介ページより抜粋。)
・感想
この作品はかなり正統派なラブ・ストーリーですね。小説家のブンガクくん―――矢文学と、腐女子―――椎名明日葉ちゃんとの、2人が出会い、すれ違いを経て、また元の鞘に戻る…という純愛物語です。背表紙の紹介などではラブ・コメディとも銘打たれていますがコメディといっても大笑いを誘うものではなく、ブンガクくんが知らず腐思議ちゃんが知っているヤヲイに関する知識でのやり取りのすれ違いが笑いを誘う、という程度のもので。
主人公のブンガクくんは今時見ない純朴青年として書かれていて、1人の女性に恋をしてその恋に臆病ながら必死に向き合おうとする姿が好感でした。設定的に「二次元イラストを見続けられない」というのがありましたが、それがあまり意味の無い設定になっていたのは残念でしたが。
ヒロインに関しては、明日葉ちゃんは腐女子という設定が大いに活きていました。腐女子であったから学と出会い、腐女子であったから出会いの後も学との繋がりが続きと、彼女が彼女らしくあったからこの物語が続いたわけですから。オチにも彼女が腐女子であることが関わっていて、彼女らしいオチで思わず笑いました。これは良いオチだ…!と。
サブキャラクターもまた味のあるキャラ、濃いキャラが多かったです。学の親友の圭介、圭介の彼女でちょっと不思議ちゃんのゆず、学の担当編集者で隠れ腐女子の西野霞美、そういった周りに恵まれてこの物語が成り立っていたのは間違いないです。
総じて、この作品はライトノベル作品としてはちょっと珍しい純愛派の物語です。バトルも無い、超能力も無い、不思議な現象も無い、現代を舞台にした現代の恋物語―――そんな印象でした。