キノの旅13

キノの旅 the Beautiful World 13

著者・時雨沢恵一先生。挿絵・黒星紅白先生。時雨沢先生は同レーベルで『アリソン』『リリアとトレイズ』といったアニメ化された作品を出されていますね。まぁ、この『キノの旅』が時雨沢先生の作品の中では一番最初にアニメ化されゲーム化もされた作品なのですが。出している作品がほぼ全部アニメ化されている人気作家、ということになりますか。
・シナリオ
「何だ?」キノが『フルート』を構えてスコープを覗いて、今いる丘の上から地平線を見下ろします。しばらくして、ようやくそれが何か分かりました。大量の土煙を生み出していたのは、大地を埋め尽くすような大型動物の大群でした。大きく太い体と頑丈そうな四肢を持つ、鈍い灰色をした草食動物です。「この辺に住むサイの一種、だね。水が欲しくて集団で移動中なんだよ」エルメスが言いました。灰色のサイの群は、何千頭、または何万頭いるのか分かりませんが、濁流のような密集度と勢いで大地を進んできます。その進む先には—「あ…」『フルート』を向けたキノが、声を漏らしました(「この世界の話・b」)他全11話収録。(7&YHPより抜粋。)
・感想
旅人キノや他の面子など、『旅人』たちが立ち寄る国で起きる様々な事を短編連作として綴っていく人気シリーズの、1年ぶりの新刊となる第13巻です。
今巻もカラーページで1話語っていたり、あとがきが20ページくらいあったりと、色々と荒唐無稽な形態で色々な話が読めます。
ただ、PS2ゲーム版の「キノの旅」に得点として収録されていたスペシャルブックレットの話が収録されていて、さらにあとがきと合わせるとそれだけで60ページくらいになっています。つまり何が言いたいかというと、この13巻自体は200ページほどでだいぶ短め、ということです。本編200ページほど+おまけで60ページでカラーページなどを合わせても300ページありませんのでかなり薄い感じですね。
しかし内容はいつも通りのクオリティで、旅先で立ち寄った何かしら特徴のある国、というその「特徴」の部分がうまく演出されていて読んでいて飽きません。色々なことがらにちょっとした伏線が張られていたり、風刺が効いた話題だったりと、読み進めているとなんだか妙に納得できるところや発想に唸らせられるところなんかがあって、今回も、読み進めるほど先が読みたくなる作品でした。