火の国、風の国物語7

火の国、風の国物語7 緑姫憂愁

著者・師走トオル先生。挿絵・光崎瑠衣先生。師走トオル先生は富士見ミステリー文庫で口先弁護士による痛快裁判小説「タクティカル・ジャッジメント」シリーズを書かれています。
・登場人物
主人公は両手に騎士剣を持って戦う豪腕の双剣騎士、近衛騎士であることを示す赤い鎧と貴族である事を示す赤いマントを同時に身につける建国の英雄初代ファノヴァールから数えて4代目のファノヴァール家当主、アレス・ファノヴァール。何者かに仕える使い魔の如き謎の存在で、アレスに取り憑いて事有るごとに怪しげだが的確な助言を与える、アレス以外にはその目に映らない少女の姿をした魔性、パンドラ。
サブキャラクターは、過去にアレスにより暗殺されるところを救われ以後はアレスの主君として存在している、物語の舞台となるベールセール王国の13歳の王女クラウディア。クラウディアの侍従シオーネ。アレスの義妹で従軍神官としてアレスと行動を共にしているエレナ。アレスの愛馬オルトス。アレスの従者となった騎士レオン。アレスの存在が国のためには良くないのではと考える内務卿のカルレーン侯。アレスとの間に過去にちょっとした軋轢を抱えるベールセール王国軍の現司令官、フィリップ。そのお目付け役のキルマード。
風の国」側の面々はベールセール解放軍を名乗る一団の指導者で<オーセルの賢者>と呼ばれる男、ジェレイド。<風の戦乙女>の通称を持つ強大な風の黒魔術の使い手の少女ミーア。ミーアの幼馴染兼護衛役のルーク。
さらに前巻以前での登場キャラとしては、ベールセール北の地理に大変詳しい農民で行商人でもあるヴェリック。近衛騎士でアレスと面識もあるベールセール北の領地出身のノーラッド。
今巻でスポットを浴びるキャラとしては、ベールセール王国に侵攻してきた北の国、ミレスデンの姫巫女のシスティナ。クラウディアの兄で王太子であり時期ベールセール国王と呼ばれているハインツ王子。他にもミレスデン軍総大将のライオネルなど色々と。
・シナリオ
「あなたは北の民の犠牲を知らないのでしょう。どこの国でも、自分の国にこそ正義があると主張するものなのですから」ミレスデン軍の姫巫女・システィナの言葉にアレスは何も答えられなかった。以前の彼であれば迷うことなくベールセール王国こそが正義—と答えられたはずなのに…。かつてジェレイドと語り合った経験がアレスを迷わせていた。互いが正義を主張し合う限り、避けられない争い。ミレスデン軍との決戦の地、エブラム平原に集まる英雄たち。一進一退の攻防を続ける戦線でついに姫巫女の力が発動する。戦況を一変させる奇跡の力に瓦解し始める王国軍。赤神は自らの正義を貫くことができるのか。(7&YHPより抜粋。)
・感想
さて今巻でのアレス無双は。
話の流れは、ミレスデン王国軍の侵略をアレスやミーアなどの少数精鋭が遊撃隊として食い止める様子などが最初に書かれ、そこからミレスデン軍とベールセール王国軍との大決戦に流れ込んでいく、というものです。冒頭〜中盤までは、短編的にアレスがミレスデン王国軍雇われの傭兵や正規軍の一部を相手に相変わらずのアレス無双振りを見せつけ、その後の物語終盤はミレスデン王国軍二万三千人VSベールセール王国軍二万五千人という大決戦の場において、アレスがミレスデン王国軍が繰り出してきた精霊の力による切り札を相手にして神話級の丁々発止の大活躍を見せて新しい伝説をまた1つ生み出す、というものです。
冒頭〜中盤のアレス無双はこれまでの巻でも何度か見た、圧倒的大多数の敵を相手にアレスがほぼ単独で攻勢を仕掛け、敵を翻弄しまくった挙句生還して見せて相手に脅威と畏怖を見せ、読者には痛快爽快を見せる、というもの。これを今回は風の国側―――ミーアやルーク、リーエンノールなどといったこれまでは敵側だった相手と共闘して成すというもの。これまで敵として立ちはだかっていたアレスが味方になったとき、どれだけその姿が頼もしく見え、またアレスという存在がどれだけ規格外に感じるかを敵の視点から味方の視点に変わったミーアなどが語ったりしていました。
終盤はアレスがまた1つ新しい伝説を作る話。ミレスデン王国軍が出してきた虎の子、王国の窮地に出現し王国を守り続けてきた、という「伝説の巨人」をベールセール王国侵攻に持ち出し、それをアレスが撃退する、という話です。バトル部分―――アクション部分では、身の丈数十メートルという巨人を前にアレスが始めて恐怖を覚え、それを克服しながら戦うというこれまでにない心情でのアレスの戦いが見られます。人間相手からついに人外相手になっているわけですね。止まらないアレス無双は次はどんな相手なのか。どこまで行くのかということにもワクテカが止まりません。
次回はミレスデン王国と同時に侵攻をしてきていたが、進行速度に重点を置いていたミレスデン王国とは違いゆっくりと地盤を固めながら侵攻していたディレニア王国軍が相手になるようで。腰を据えて進軍してくる相手には奇襲も効きづらいでしょう。その辺りを踏まえてアレスがどう立ち向かうのかに期待が寄せられますね。

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