蒼海ガールズ!

蒼海ガールズ! (GA文庫)

蒼海ガールズ! (GA文庫)

蒼海ガールズ!

著者・白鳥士郎先生。挿絵・やすゆき先生。白鳥先生はGA文庫レーベル「らじかるエレメンツ」でデビューされて、この作品がシリーズ2作目になる、との事です。
・登場人物
主人公で、紅帝国第二皇子だが国を追われて海洋を漂流していたところをファムに助けられ、その後はセネカ船長の提案に従い女装をして正体を隠して『アラミス聖女王国』の軍艦<ビシャスホース>に乗り込む事になるシューフェン。
蒼尉修練生という立場で<ビシャスホース>に乗るが彼女も立場に秘密がある一人称が「わらわ」という蒼髪蒼瞳のファム・カストリーズ
操舵手として<ビシャスホース>に乗る、テムネ族というアラミス聖女王国でも少数部族出身の、濃い緑の瞳で髪は灰色、水タバコ好きのラヤ・ウルルフ。
主計係として<ビシャスホース>に乗る、普段は大人しく美少女や美少年とか可愛いものが好きな普通の女の子だが、戦場などでは性格を豹変させ罵倒と拳で支持を出す鬼軍曹に変わる色の薄い赤髪にリボンのエーレン・セントール。
甲板係として<ビシャスホース>に乗る、女の子好きな所謂『レズビアン』で美少女な姿になったシューフェンを気に入ってしまい色々と目をかける金髪少女ロビン・アークティカ。
フリゲート艦<ビシャスホース>の船長でシューフェンの正体を隠して女の子として扱うことを決定した張本人、腰まである銀色の髪を持つ美貌の女性のセネカ・ヴァイトリング。
剣や鞭を使い<ビシャスホース>を纏めていて、メンバーには怖がられている黒髪で鋭い目つきに神経質なキツイ性格をしている副長のアリル・ゴス。
「妹にしたい女の子ランキング」で連続王者だったがシューフェンが来た事でその座から脱落し、シューフェンの弱みを何とか握ろうと暗躍したりするシャーキー・ギャムジュー。他、女子水夫が多数、という感じです。
敵役はアラミス人の母を持つハーフで、その出自がコンプレックスにもなっている紅帝国水軍提督のウォン・ダァツ。
・シナリオ
「きみはこれから女になる」「え?え…えええぇ?」国を追われて海を漂流していた皇子シューフェンは、アラミス王国の軍艦ビシャスホースに拾われる。だが、少女ばかりの乗組員で構成されたこの船には、厳正なルールがあった。すなわち「男子禁制」。男とバレたら死刑になってしまう状況で、艦長から提案されたのは、持ち前の可愛さを生かして女のフリをすることだった!少女たちから可愛がられたりセクハラされたりしつつ、果たしてシューフェンは自らの秘密を守りきれるのか!?男女比一対二〇〇の船上で繰り広げられる、ボーイ・ミーツ・ガールズストーリー開幕。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は海上で暮らす船乗りたちを全部女性にした船に主人公の皇族の男が放り込まれ、正体がばれると大変なことになるから女装して暮らしていると追っ手がかかって船乗りたちも巻き込んで大騒動に!という感じの話です。ただ、内容を抽出すると主人公の境遇にヒロインたちが巻き込まれた感が強いですが、ヒロインたちもそれぞれの主張を持って行動しているので一概に巻き込まれた存在、とは言い切れませんかね。詰まる所、ヒロインたちがか弱い女の子ばかりではなく、精神的に自立している『強い女性』が多い、と言えます。その強さが間違った感じで発揮されているのが、作品紹介にもある「セクハラ」の部分だったりするのですが。
しかし男性がいない船の上で生活していただけあって、恋愛関係では奥手や純粋な人が多く、その辺りも見所ですか。主人公の船内唯一の男となるシューフェンがとる行動で色々と精神的に振り回されるファムやアリルなどの心の推移が見所のひとつです。
他の見所としては『船を動かす』という点において色々と細かなところまで書かれているところでしょうか。映画の「パイレーツ・オブ・カリビアン」などに出てくるような帆船をイメージに、その上で少女水夫たちが船乗り独特の掛け声を使って操船する。その一挙手一投足や掛け声がルビ振りによる英単語の連続などで描写されていて芸が細かいです。
総じてこの作品は学園モノであるシチュエーション「大勢の女性の中に主人公男が1人」という状況を船の上、という閉鎖空間でやる、という作品ですね。その中に剣での殺陣あり、絡み合う人間関係あり、リアルな描写があり、という感じです。