ベン・トー4

ベン・トー 4 花火ちらし寿司305円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー 4 花火ちらし寿司305円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー4 花火ちらし寿司305円

著者・アサウラ先生。挿絵・紫乃櫂人先生。アサウラ先生はスーパーダッシュ文庫レーベルで「黄色い花の紅」「バニラ」などの作品を出されています。庶民派シリアス弁当争奪ギャグ・アクション小説第4弾です。
・登場人物
主人公、半額弁当を求めたが為にそれまで知らなかった”狼”たちの最中に飛び込む事になり、巨大な敵『帝王』を相手に戦ったがそれらの功績により、現在、仮とは言え不名誉な二つ名を名付けられてしまうセガ信者の佐藤洋。二つ名『氷結の魔女』の異名を持つHP同好会の会長で歴戦の勇士、槍水仙。偶然洋と同じ時に半額弁当を求め、彼と同じくして”狼”たちの存在を知り自身の趣味もあり”狼”たちの世界に関わっていく事を選択した隠れ筋肉大好き腐女子的少女、白粉花。花の親友で彼女の事を色々とやばいくらいに溺愛している委員長で生徒会長候補、白梅梅。二つ名『湖の麗人』と呼ばれる元となるイタリア人の母を持つ金髪ハーフで、洋の幼馴染で従姉の丸富大学付属高校1年、洋に対してだけ圧倒的わがまま振りを見せるが色々ナーバスな部分もある著莪あやめ。
今巻登場の新しい“狼”は、佐藤たちがHP同好会の合宿で行った先のロッジの経営者の娘で、祭がある時期のひと時だけ“狼”となる淡雪えりかと、その親友で二つ名『ギリー・ドゥ』と呼ばれ「攻撃の気配を感じるのに防御できない、気がつけば攻撃されている」という特殊な戦法を取る禊萩真希乃。夏でも皮のコートを着込み、彼と相対した狼は「戦いの中で脱力してしまう」という特殊能力を有するナックラヴィーと、その相棒の美女、アン。そして冒頭でだけ登場の、電車での移動中という状況限定での駅弁を目的とする“狼”『企業戦士サラリーマン』。
・シナリオ
夏の強化合宿。狙うは、至高の花火弁当 
佐藤洋たちHP同好会は、夏休みの強化合宿に田舎町へ向かう。
そこで出会った同年代の女の子の悩みを知り…。
合宿最終日、全国から集った「狼」たちが求める至高の弁当とは? 大人気シリーズ!(7&YHPより抜粋。)
・感想
燃えコメディ弁当争奪バトル小説の第4巻。
今巻は遠征と言うか、強化合宿先で現地の中学生少女2人の悩みをHP同好会が関わる事で解決する手助けをする形になる一幕、と言う感じです。
構成は『合宿移動中』『合宿先で、1日目』『合宿先で、2日目』という流れでそれぞれサブタイトルは『1章 企業戦士サラリーマン』『2章 ナクラヴィー』『3章 ギリー・ドゥー』となっています。
このうちで一番短いのは『1章 企業戦士サラリーマン』。これでは、佐藤、槍水、白粉たちが合宿先へ行くために電車で移動しているときに、駅弁を対象に弁当争奪戦を企業戦士サラリーマンたちとしたりして、佐藤が企業戦士サラリーマンと妙な友情を育む話。
『2章 ナックラヴィー』は合宿先へ到着した佐藤たちHP同好会の面々がそれなりに合宿っぽい事(一部で白粉の暴走や佐藤らしいとしか言えない変態的な出来事があったりもしますが)をしながら、今回のお祭り中のスーパーという舞台でのハーフプライスラベリングタイムに挑むもの。
しかし『3章 ギリー・ドゥー』だけは通常の佐藤による半額弁当争奪模様だけでなく、ひと味あり、となっています。お祭最終日のスーパーでハーフプライスラベリングタイムに挑むのは同じですが、そこで喧嘩をしてしまっている中学生女子2人―――禊萩真希乃と淡雪えりかの2人の、衝突と和解する様子という青春模様が描かれ、その果てにこれまでは挑戦する側―――立ちはだかる敵を乗り越える側だった佐藤が、淡雪えりかとギリー・ドゥーこと禊萩真希乃が乗り越えるべき壁として書かれるという、これまでとは立場が逆転した存在として書かれていて意表を突かれました。
またこの巻では、槍水仙こと『氷結の魔女』も今回は活躍無しです。もっぱら佐藤と白粉、それからギリー・ドゥーこと禊萩真希乃が『ナックラヴィー』やその相棒の『アン』、同様に遠征に来ていた強敵である『大顎』『サラマンダー』などなどを相手に奮戦する姿がメインとなっています。
狼としてのバトル模様も見所ですが、この作品のもうひとつの見所としてやはり「美味しんぼ」ばりの食品に対する微に入り細に入る表現があるでしょう。ひとつの弁当、ひとつの食材に対してそれが如何に美味そうか、また美味そうと思える要素があるか、が語られているのがこの作品の特徴です。読んでいる内に何か弁当を―――何か食べ物を食べたくなる、そんな魔性が含まれているとさえ思えますね。
総じて今回は、いつも通りに佐藤が苦労しながらも狼としてひとつ成長している姿が見られると共に、成長した佐藤がひとつの壁となるという、ある意味で成長の成果を見せるという巻でもありました。佐藤が新米から相応の経験を経て一人前の狼になった事を実感できる―――そんな巻でもありました。