ふらぐ//ON!

ふらぐ//ON! シナリオが破綻しています。 (ファミ通文庫)

ふらぐ//ON! シナリオが破綻しています。 (ファミ通文庫)

ふらぐ//ON! シナリオが破綻しています。

著者・坂東真紅郎先生。原作・高崎とおる先生。挿絵・奈月ここ先生。著者の坂東先生は同レーベルから「リセットな彼女」という作品をこの作品と同様に原作の高崎とおる先生と組まれて出されていますね。原作の高崎先生は前述の「リセットな彼女」の原作のほか、「オオカミはなつかない!?」という作品の原案も担当されています。挿絵の奈月先生は『電撃G’sマガジン』紙上で「マリッジロワイヤル」という漫画を連載されていますね。
・登場人物
主人公は大のゲーム好きで将来はゲーム開発の仕事に就きたいと考え、作中ではその情熱からシナリオライター募集のアルバイトに応募したことをきっかけに今巻での物語に関わっていく森永昴。ヒロインは、昴のクラスメートでクラスの人気者、そしてこの作品で重要な設定『人生のシナリオ』を書かれる本人であるため昴やカナエルたちと知り合っていくことになる高城みなも。
サブキャラクターは、『人生のシナリオ』作成の関係者で天国の住人―――天使であり、昴をサポートする天然性格のカナエル。カナエルの上司的立ち位置であり、高城みなもの人生のシナリオ執筆に関しての責任者でもあるファナエル。天国とツテを持ち、自社ブランド「あの世ソフト」で『人生のシナリオ』を書くライターの手配もしていた社長の原島美智代。
他にはあの世ソフトのゲーム製作スタッフや昴たちの同級生などが出てきます。
・シナリオ
ゲームシナリオライターのバイトを始めた俺、昴は設定をみて驚いた。“ヒロイン:高城みなも”?クラスの憧れの子と同姓同名だ!この仕事、依頼主は何と「天国」で、書くのはリアルみなもの「人生のシナリオ」。つまり俺の書く通り彼女が行動するって!しかも“恋人”は—俺!?無理ムリ、ライターも恋愛も初心者なのにっ。更に監視役の天使が「シナリオ通り行動しないと世界が滅びます」って、んなバカな!?恋愛or破滅フラグ乱立ラブコメ登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品はゲームシナリオの製作が現実に影響を及ぼす、という形で物語が進みます。天国が一部の人間の人生をシナリオという形で第3者に記述させ、その通りに人生を進ませるという形で人の運命を決めているという設定。主人公の森永昴は偶然この「第3者」に選ばれ、人生のシナリオを描かれる存在―――高城みなもと関わることになります。交際相手として自分が選ばれるなどして自分で自分のシナリオまで書くことになったりして、紆余曲折を経て彼女のことを色々知っていきますが、彼女の人生のシナリオの結末に不満を感じた昴はその結末を変えるために奮闘を始める―――そんな流れの物語です。
ゲームシナリオという形で人生が決められていく、という設定が面白かったですね。『人生のシナリオ』の書き方として、ゲームシナリオの書き方の説明的な一面もありちょっとしたトリビアというかゲームシナリオ製作のハウツー本的な面もあって二重に楽しめます。
物語の展開は主人公が若干へたれた結果、ヒロインが酷い目に合う運命になったためにその運命を回避するために主人公が奮闘する、というものです。恋愛フラグや破滅フラグが昴の行動ひとつであっちこっちで立ち、そのつど昴は人生のシナリオを書き直そうとしたり書き足したり、時には執筆を放棄したりして対応しているのがゲーム的でしたね。ただ、最後の最後でどうにも解決策を思いつかなかった昴が取った手段があまりに刹那的だったのでちょっと引く展開もありましたが、基本的にはギャルゲー展開で、最終的に落ち着くところに落ち着くというお約束な展開で物語は収束しますのでハッピーエンドは見られます。
が、そんな欝展開というか刹那的過ぎる発想での行動などが目に付くので、途中で手を止めると再度読み進めるには難があるかもです。最後まで一気に読むことをオススメする作品、という感じでしょうか。
主人公がアクションを起こす→ヒロインを中心として物語が進む、という感じで物語は基本進みますのですが、これが逆に考えるとヒロインの行動の大半が主人公が決めている(設定的に「人生のシナリオ」で書かれたことが起きるため)感じがするので、何だか背徳的な気がしましたね。主人公がその気になればヒロインの人生を破滅させるも成功させるも自在、ということですし。
総じてこの作品は、あまり無茶な展開は天国側からストップが掛かるとはいえ、逆に言えば天国さえ納得させられれば、天国さえ誤魔化せば、『人の人生を自在にできる』という漫画のデスノート的な内容を扱っていて、ラノベでこのテーマって良いんだろうかと思わざるを得ませんでした。そんなテーマと設定を扱った、という点ではこの作品がかなり意欲的、挑戦的な印象でしたね。