アリアンロッド・サガ・リプレイ2

アリアンロッド・サガ・リプレイ2 最強のフィアンセ

著者・菊池たけし先生。挿絵・佐々木あかね先生。いろは楓先生。安達洋介先生。四季童子先生。植田亮先生。菊池先生は『世界の危機』なシナリオが大好きな名物GMで、『セブン=フォートレス』『ナイトウィザード』シリーズのTRPGシステム開発者ですね。挿絵はメインは佐々木あかね先生で、他の先生方はちょっとしたキャラクター紹介の際にその絵が用いられる、というのが多いです。
・登場人物
PC1、大竹みゆ女史扮するはアルディオン大陸西方の強国レイウォールの第2王女にして本作ヒロイン、前巻での行動でレイウォールの王位継承権を失い、新たに自分が興した国、フェリタニアの女王として即位した強力な魔力を持つ水の魔法の使い手、ルミナスドラゴンの幼生体でヤンヤンと名付けた子ドラゴンを連れた種族・ヒューリンでウィザード/サモナーのピアニィ・ルティナベール・フェリタニア。
PC2、クレバー矢野氏こと矢野王子が扮するは剣聖テオドールの弟子、斜に構えた性格の二刀流剣士。フェリタニア女王となったピアニィを守る為に『フェリタニア第1の騎士』と呼ばれるようになった、種族・ヒューリンでウォーロード/サムライのアル・イーズデイル。
PC3、前作―――無印やルージュ、ハートフル作品までの舞台だったエリンディル大陸とアルディオン大陸とが繋がりのある世界であるという実証の為に抜擢された、大畑顕ことOはた氏が扮する超・三下性格が光るクラン=ベル四英雄と呼ばれたこともある種族・ヴァーナ(狼娘)でリビルド・ルールで過去とはクラスが変わってスカウト/ダンサーとなっているが、防具装備は紙同然の薄さで回避に命を賭けている所は変わっていないベネット。
PC4、鈴吹太郎社長が扮するは天才軍師サザーランドの弟子として、ピアニィたちをサポートする若き軍師の役目を背負った新種族・ドラゴネット(竜人)。腹に一物あるプレイが光るプリースト/フォーキャスターのナヴァール。
NPCは、ナヴァールの妹弟子のレイウォール赤竜軍団の将軍でもあるステラ。ステラ、ピアニィの兄でレイウォール第1王子のヒューバート。ヒューバートの腹心の将軍、迅雷の2つ名を持つキンバリー。ピアニィの母、ティナと面識のあるバーランドのレジスタンス指導者ナイジェル。ナイジェルの孫で執政官の警備隊隊長を務めるネルソン。
今回から登場するのはピアニィたちが助けに行く相手のメルトランド女王のスリス女王。アルの母親、メルトランド国ノルウィッチ都市の城主、イザベラ。イザベラが治めるノルウィッチで武器を扱う大商人のエルゼリエ・ブルックス。国として起こしたフェリタニアを支える軍に迎える武将としてフェリタニア国土のあちこちに点在するものたち、など色々です。
・シナリオ
前回の冒険の結果、ピアニィたちは新たな国—フェリタニア王国の建国を果たす。だが、その国家経営は困難を極めた。貧乏の嵐が吹き荒れ、人材は不足し、なぜかベネットは死にかける!(笑)苦境を打開すべく、一同はメルトランド王国へ向かう。だが、大陸全土を覆う不吉な陰謀は、かの地にまで及んでいた—。巻き起こる戦乱のなか、ピアニィたちの選択はいかに!?そして本書のタイトル「最強のフィアンセ」とは誰を指す言葉なのか!?(笑)リプレイの名手菊池たけしと、おなじみの愉快なプレイヤーたちが織りなす一大戦記ロマンの第二巻、ここに登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
アルディオン大陸という巨大な大陸で巻き起こる戦乱を、無印シリーズ、ブレイク・シリーズ、アクロス・シリーズなどで呼ばれるリプレイで、所属する軍などを変えて様々な視点で描かれ、それら各シリーズがリンクしながら進められていく壮大な戦乱絵巻の一番最初にリリースされた作品『無印シリーズ』の、第2巻です。
収録されているのは第3話「メルトランド戦役(前編)」第4話「メルトランド戦役(後編)」の2話。2話ですが、タイトルからもわかるように「メルトランド戦役」というひとつのストーリーの前後編、ということで実質は1話です。内容的には、第3話はPCが前巻で興した国にしてパーティが所属しているフェリタニア王国が、アルディオン大陸の大半を支配するレイウォール王国、グラスウェルズ王国の両国に挟まれているメルトランド国の女王を救うために行動する話。第4話はメルトランド最後の砦にしてアルの故郷でもある城塞都市・ノルウィッチで、メルトランド全土を蹂躙しスリス女王を確保しようとするグラスウェルズ国白竜騎士団を、PCパーティを中心としたフェリタニア・メルトランドの連合軍が迎え撃つ話です。
第3話「メルトランド戦役(前編)」。これはPCメンバーのアルの故郷がこのメルトランドにあるという設定を拾い、資金調達に悩むフェリタニアのために大商人であるアルの実家に借金をしにいく、と話が進み、その時ちょうどグラスウェルズ王国がメルトランド王国に進行を始め、そこでスリス女王と既知の仲であったピアニィがフェリタニア女王として彼女を救おうと行動をしてメルトランドの存亡にピアニィたちも関わっていく―――という話です。この話は他リプレイ作品である「ブレイク・シリーズ」と時間軸を同じとして、ピアニィたちが少し遅れて行動をしている形で時間が進められていきます。ピアニィたちが閉じられているはずの城門に到達した時、ブレイクの面々がリプレイでとった城門突破の戦闘の結果などで一足先に既に城門は開放されていて、警備隊長は打ち倒された姿が残っている―――というように、ある行動をしている時、ブレイクの面々はこの行動を取っていた―――という形で互いに影響を与え合うストーリーとなっています。第3話で面白いところは、そういったザッピング的に物語の舞台がいくらか既に整っているところを追うようにしてストーリーが紡がれていくところでしょうか。また、ブレイクの舞台で見えていなかったところで無印の面々が動いていた、という裏話的なところも面白いです。
第4話「メルトランド戦役(後編)」。こちらではスリス女王を救い出した後の話となり、スリス女王を確保しようとメルトランドの王都レスノールから城塞都市ノルウィッチ目指して南下してきたグラスウェルズ軍を相手に、ピアニィたちは急遽、周辺各国から有能な人材を集めて即席ながらフェリタニア・メルトランドの連合軍を結成して激突する、という流れになります。この第4話はTRPGの基本テクニックである「ミニゲーム」が大きく取り上げられている話でもあります。TRPGではしばしば、ゲーム中のカンフル剤だったり視点を変えた遊び方としてミニゲームが取り込まれます。基本は謎解きの『リドル』だったり、時間制限付きだったり場所指定型だったりの情報収集『シティ・アドベンチャー』などがありますが、この第4話では武将を集めて軍力を高め、敵軍の規定の数値とダイスを使って激突する「マス・ゲーム」が取り上げられています。この第4話ではそのマス・ゲームの武将集めで本気爆発で奔走するPCメンバーが面白おかしく書かれています。また、マス・ゲームで有利を確保するために敵軍の進軍の情報を収集したり武将の配置を考えたりと、PCはみんな、ゲーマー魂を爆発させていました。そしてその影ではナヴァールが単身でレイウォールの第1皇子と席巻して密約を交わしたりと、軍と軍の激突に関しては光の部分も闇の部分も描かれている、という感じになっていました。
第3話、第4話ともにそんな戦乱の中を駆けるピアニィたち、という姿で疾走感多く書かれていました。が、戦記ファンタジー中心の姿ながらきくたけ節を忘れていないのもきくたけリプレイの面白みです。ピアニィを連れて実家に帰ったアルが母親や姉妹に「嫁を連れて帰ってきた!」と騒がれてみたり、魔術の判定に+10という強力なマジック・アイテム「ケセドの杖」を手に入れて動きの遅いスリス女王を行動力を上げる魔法『ポストヘイスト』で高速移動させてみたり、鳳雛鳳雛と呼ばれてきたナヴァールが本当に三国志鳳雛と同じ状況に立たされてみたりと、見所いっぱいです。
総じて今巻は長いひとつの戦乱「メルトランド戦役」を描いているだけあってボリュームは多いです。しかし若干、ノリで突き進む部分―――『きくたけ節』で強引に話を進めているところもあるので、そこを許容できるかどうかで評価は分かれてしまうのではないでしょうか。そこをクリアーできれば大いに楽しめるかと。つまり過去のきくたけ作品を通じて楽しんでいる人なら相応に楽しめ、そうでない人ならその展開に精神を試される作品でしょうか。