耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々

著者・石川博品先生。挿絵・うき先生。第10回えんため大賞<優秀賞>受賞作品。挿絵のうき先生はGA文庫レーベル「EX!」シリーズの挿絵などを描かれていますね。
・登場人物
主人公で語り部、農民出身で父がお偉いさんだが本人は農芸を趣味とする戯言家、レイチ・レイーチイチ。シャーリック王国第四王女で王位継承者、ネルリ・ドゥベツォネガ。
ネルリのお付きで入学してきて、最初にレイチと会い友人となったワジ・ワジーチ。ワジと同じでネルリのお付きの武官、苦労人の武力派軍人ナナイ・ドゥベツォネガ。レイチたちの所属する一年十一組で一番カッチリしている渾名は「委員長」のカミレ・カミーチダ。マルマイチ王国からやってきた王族で十一組所属、小まめな性格で嫁探しに来ていると公言して憚らないサンガ・サンガニチ。サンガの妻、十一組の仲間ショナ・ショナヌカ。サンガの実妹で十一組の仲間、ちょっと本地の言葉に不慣れなミッカ・ミッカイチ。十一組の仲間、ベイン連合教国出身○冠のソック。十一組の仲間、ベイン連合教国出身▽冠のハツー。十一組の仲間、ベイン連合教国出身◇冠でレイチに惚れるというベイン連合教国出身者で一番特徴がある存在、イ=ウ。十一組の仲間、普通の優等生という特徴らしい特徴が無いのが特徴と言うヘイジン・シセー。
教師で十一組の面々が勉強に関して必死になる原因となる鬼教師、ヨーゲンス・タイグ。
・シナリオ
僕レイチ。今年から“八高”に入学する本地民(コネだけど)。植物でも愛でつつ妄想の中で暮らしていきたかったのに、クラスメイトは王国民流モラルハザードなヤツばっか!とくに何、この幼女?耳刈?ネルリ?せっかくの高校生活、痛いのはイヤー!(耳だけに)しかも何で僕が自治委員に任命されなきゃなんないワケ?王国民との対立とかもうお腹いっぱい、僕は今日も勉強会で忙しいんだってば—!第10回えんため大賞優秀賞受賞作、ついに登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は主人公、レイチによる地の文の『戯言』が凄く特徴的です。物語上で何の関係も無い、レイチの妄想とも言えるものが情景描写の合間合間に隙を見ては挿入される、というくらいドンドコ出てきます。西尾維新先生の作品「戯言シリーズ」を読んだことがあるなら、いつ地の文の最後に「まぁ戯言だけどね」と入るかと思うのは無理ないことと思います、個人的に。
話の内容はある学校へ入学したレイチの視点で描かれる、異文化コミュニケーションを中心とした学園生活風景でしょうか。そこに異文化の対立/衝突が関わってきて最終的には学園内での生徒同士の抗争や教師を交えた陰謀劇的なものまで見えてくる、という感じです。
総じてこの作品は、立場の違いによる物事の判断基準の違い、感じ方の違い、好悪の違いなど相反する立場の者たちによる『対立』が作品を面白くしているギミックになっていましたね。片方が当たり前と思っていることが片方にとっては初めて接する考え方であり、その逆もまた然り。そういったすれ違いは簡単な生活風景から陰謀に関わった時の重要な部分での判断まで徹底しており、笑いと同時に読み手に異文化コミュニケーションについて考えさせられる作風となっていました。